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【年頭あいさつ 2026】食料安全保障の確立に全力 鈴木憲和農林水産大臣2026年1月1日

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JAcomでは、新年にあたり農林水産大臣をはじめ、JAグループ全国組織や農業関連団体のトップによる年頭あいさつを順次掲載する。食料安全保障の確保や農業を取り巻く環境の変化など、重要な課題が山積する中で、2026年に向けた各団体の考えと決意を伝える。

鈴木憲和_農林水産大臣鈴木憲和 農林水産大臣

 明けましておめでとうございます。

 令和8年の新春を迎え、皆様の御健勝をお祈りいたしますとともに、我が国農林水産業及び農山漁村の一層の発展に向けて所感の一端を申し述べ、年頭の御挨拶とさせていただきます。

 いくら理想的な政策も、現場の皆様の心が動かずには効果を発揮できません。このことを心に留め、「農は国の基なり」という言葉のとおり、農林水産省の最も重要な使命である、国民への食料の安定供給を実現します。
 
 我が国の主食である米は一年一作であるからこそ、需要に応じた生産を推進することを基本として、現場の生産者と消費者の双方からみて、先の見通せる農政を展開することが重要です。昨年8月の価格高騰の要因や対応の検証を踏まえ、水稲収穫量調査の精度向上、流通構造の透明性の確保のための実態把握の強化、需給見通しの作成方法の見直し、備蓄政策の早急な検討といった短期対策を同年11月に取りまとめました。今後、令和九年度以降の中長期の対応策の検討を進めてまいります。

 我が国の農林水産業を取り巻く環境は、国際情勢の不安定化や自然災害、気候変動等の影響、人口減少や高齢者の引退による担い手の急減など、大きく変化しています。このような変化に現場感覚をもって対応し、食料の安定的な供給が可能な基盤を整える必要があります。
 改正食料・農業・農村基本法の下で策定した新たな食料・農業・農村基本計画に基づき、農地の大区画化や中山間地域におけるきめ細かな対応、共同利用施設の再編集約・合理化、スマート農業技術の開発、生産性向上に資する農業機械の導入、輸出産地の育成といった施策について、別枠予算を確保し、農業の構造転換を5カ年で集中的に推し進めます。
 こうした取組による生産性や付加価値の向上により、農林漁業者の収益力を高め、食料自給率・食料自給力の向上と、食料安全保障の確立に全力を尽くします。
 
 以下、本年における農林水産行政の主な課題と取組の方針について申し述べます。

【水田政策の見直し】
 水田政策について、令和九年度に向けて、根本的な見直しを行います。水田を対象として支援してきた現行の水田活用の直接支払交付金を、水田・畑に関わらず、作物ごとの生産性向上等への支援へと転換するといった基本的な方向性の下で、詳細を本年6月までに取りまとめます。
 米の生産性を抜本的に向上させつつ、米粉や海外マーケットの創出など国内外の需要拡大策を実施することで、必要な水田を維持するとともに、米以外の作物を作る農地について、食料自給力向上の費用対効果を踏まえて、これまで作付けしてきた作物の本作化を図るべく、政策を転換します。
 あわせて、農業者の経営安定のためのセーフティネット対策の充実についても検討します。

【食品産業】
 資材価格等が高騰し、農林水産業・食品産業の事業環境が変化する中においても、農林水産物・食品の持続的な供給が可能となる、生産、加工、流通、販売、消費に至る食料システムの確立を図る必要があります。
 昨年の通常国会で成立した「食料システム法」に基づき、持続的な供給に要する合理的な費用を考慮した価格形成を推進します。
 また、食品産業について、農林水産業との連携の下での国産原材料の利用拡大による付加価値向上の取組や、中継共同物流拠点の整備による食品のサプライチェーン全体の物流効率化を促進することにより、持続的な発展を図ります。これに加え、フードテックを育成することで、食の分野を世界のスタンダードに育て上げ、食を日本経済の稼ぎの柱としていきます。
 
【農林水産物・食品の輸出促進】
 世界の食市場の規模が拡大するチャンスを活かして、農林水産業・食品産業の「海外から稼ぐ力」を強化するため、農林水産物・食品の輸出について、2030年5兆円の輸出額目標に向けて、取組を進めます。具体的には、輸出産地の育成、日系の商流のみならず、現地系スーパーやレストランなどの未開拓の食のマーケットの開拓、海外の輸入規制の緩和・撤廃に向けた働きかけを行うとともに、食品産業の海外展開、インバウンドによる食関連消費の拡大などを推進します。
 また、昨年の日米協議での合意内容の履行に加え、米国の関税措置の壁を乗り越えて輸出を維持・拡大できるよう、生産者・事業者を後押しします。
 
【環境と調和のとれた食料システム】
 食料システムを環境と調和のとれたものとするため、新たな環境直接支払交付金の創設や、有機農業の推進等のみどりの食料システム戦略の加速化、気候変動への適応策の強化等に向けた「みどり加速化GXプラン」の検討を進めます。また、昨年10月に改定した「日ASEANみどり協力プラン」に基づき、持続的な農業・食料システムに向けた協力を推進します。

【人・農地】
 人・農地の観点から、持続可能な農業構造にしていくことも喫緊の課題です。
 規模の大小や個人・法人など経営形態を問わず、農業で生計を立てる担い手を育成・確保するため、新規就農や新規参入を促進し、経営発展を後押しします。
 また、各市町村が策定した地域計画の継続的なブラッシュアップと早期実現については、全国各地で農林水産省の職員ができる限り現場に入り、受け手不在農地の解消や担い手への農地の集約化を進めます。

【基盤整備とスマート農業の推進】
 少ない農業者でも生産水準を向上できるよう、農業生産基盤の整備とスマート農業の推進が欠かせません。
 農地の大区画化や水利施設等の更新・省力化整備を推進するとともに、スマート農業技術等の開発・普及を進めます。
 あわせて、スマート農業技術に適合した新たな生産方式への転換や、スマート農業に関わる人材の育成、情報通信環境の整備を促進します。
 さらに、専門作業の受注等により、農業者をサポートする農業支援サービス事業者を育成・確保します。

【品種育成・普及と保護】
 食料の安定供給に向けて、多収性や加工適性、スマート農業技術適性、高温耐性、病害虫抵抗性等を持つ革新的新品種を開発し、導入促進を図る必要があります。このため、農業者や実需者、海外も含めたマーケットのニーズに応じた優良な新品種の育成・普及の加速化や、優良品種の海外への流出防止の強化に向けた仕組みを検討してまいります。

【フードテック】
 激甚化する自然災害・気候変動の影響に左右されず、安定的な生産力を確保できるよう、農業・農村の国土強靱化対策を進めるとともに、日本の先端技術の粋の詰まった完全閉鎖型植物工場や陸上養殖施設等への投資を進めます。
 これらの技術が我が国農林水産業の稼ぐ力を高め、世界のスタンダードとなっていく「食」の未来を作ります。

【農村の振興】
 全国の総農家数、耕地面積、農業産出額のそれぞれ約四割を占め、多面的機能の発揮においても中山間地域が重要である一方で、これまでの政策では、その衰退を止めることができませんでした。この反省をよく踏まえ、中山間地域でも、将来にわたって営農して稼ぎ、暮らしていける農政を展開し、地域に対する貢献も含め、若い世代が地元に残って農林水産業に携わろうと思ってもらえる環境を作りたいと考えています。このため、地域の実情に応じて、中山間地域等直接支払交付金など農業を支えるための施策の充実と地域特性を生かした高収益作物の導入や複合経営の取組の支援、きめ細かな基盤整備など、農業で稼ぐための施策を一体的に講じます。
 食料生産の基盤である農山漁村を維持していくため、官民共創や農泊、農福連携などによる多様な人材が農山漁村に関わる機会の創出や、多様な地域資源を活用した付加価値を創出します。
 
【鳥獣害対策】
 鳥獣被害の防止やジビエの利用を進めます。農業者の皆様が安心して営農できるよう、昨年11月の「クマ被害対策等に関する関係閣僚会議」において取りまとめたクマ被害対策パッケージを踏まえたクマ被害対策をはじめ、効果的・効率的な鳥獣被害対策を迅速かつ着実に実行します。

【畜産・酪農】
 畜産・酪農は、国民の食生活における大切なたんぱく源を供給するとともに、地域経済を支える重要な産業です。畜種ごとの経営安定対策や持続可能性に配慮した取組、畜舎や食肉処理施設の整備などによる生産基盤の強化とともに、生乳や牛肉の需要拡大に向けた取組を推進します。
 また、耕畜連携などによる国産飼料の安定的な生産・利用の拡大を進め、輸入飼料依存度の低減を図ります。

【家畜防疫】
 鳥インフルエンザや豚熱の発生に加え、アフリカ豚熱の侵入リスクがかつてないほど高まっており、最大限の警戒が必要です。このため、飼養衛生管理の徹底を基本とした発生予防・まん延防止対策と水際での侵入防止対策に都道府県と連携して全力で取り組みます。あわせて、産業動物獣医師の確保に努めます。

【森林・林業】
 森林・林業政策については、1000万ヘクタールの人工林の六割超が利用期を迎えています。「伐って、使って、植えて、育てる」森林資源の循環利用を進めることが、林業の振興による適切な森林整備、山村の活性化や二酸化炭素の吸収・貯蔵を通じた地球温暖化の防止に貢献します。このため、JAS構造材・CLT等を活用した中高層木造ビルの建設など、新たな国産材需要の拡大を図るとともに、小規模で分散した森林の集積・集約化や、スマート林業の推進などにより、林業の生産基盤を強化します。
 あわせて、森林整備や治山対策への取組により、森林吸収源の機能強化と国土強靱化を進めます。
 さらに、花粉症対策を着実に実行します。
 こうした施策の具体的な方向性を定める新たな森林・林業基本計画を本年六月頃を目途に策定すべく、検討を進めます。

【水産業】
 水産資源は再生可能な資源であり、永続的な利用が可能となるよう、資源管理を適切に推進してまいります。これに加え、日本近海の海水温の上昇が世界平均の二倍超となる等の海洋環境の激変に適応する必要があります。このため、海水温の自動観測を通じた水産資源の調査・評価の強化、漁獲対象魚種の変化に対応した、新たな操業形態への転換、労働環境の改善と収益性の向上を両立させる新たな漁船の導入など、未来の水産業を担う経営体・人を確保し、水産業強靭化の実装に向けた大胆な変革を進めます。
 あわせて、浜の再生・活性化に向け、地域資源等を活用する海業の振興、漁村環境の保全に向けた漁業者活動を推進します。
 今般の広島県をはじめとしたカキの大量へい死については、関係府省庁の政策を総動員して取りまとめた「高水温等によるカキへい死被害への政策パッケージ」を速やかに実行に移し、被害を受けたカキ養殖業者の皆様が経営継続意欲を失わずに、カキ出荷を再開できるよう、国・県・市で連携をとって、万全を期していきます。
 また、昨年12月のワシントン条約(CITES)締約国会議の全体会合で、ウナギ属全種の国際取引を規制する提案が否決され、科学的根拠に基づかない提案による影響を回避できたことを、大変喜ばしく思います。持続可能な水産業を目指し、引き続き、資源管理にしっかりと取り組んでまいります。

【国民理解の醸成】
 農林水産業・食品産業の発展の礎は、消費者・国民の皆様の理解を得ることにあります。食育活動、食文化の保護・継承や生産現場体験の取組等を通じて、理解を深めていただくとともに、食料の持続的供給に寄与する行動変容につなげます。
 また、円滑な食品アクセスの確保を図るため、ラストワンマイル配送に向けた取組、フードバンク等を通じた、食料供給を円滑にする地域の体制づくり等を進めます。
 さらに、 横浜市で開催される2027年国際園芸博覧会の成功に向け、会場整備や機運醸成等を進めるほか、政府出展においては、いけばな、盆栽などの日本の文化の極みや農業・環境に関する最先端の技術などの展示について準備を進めます。

【東日本大震災からの復興】
 東日本大震災の被災地域においては、昨年10月に私自身も福島県を訪問し、意見交換をさせていただきましたが、依然として営農再開の加速化や広域的な産地形成、帰還困難区域を含めた森林・林業の再生、安定的な水産物生産体制の構築、福島県産品の販路拡大などの課題があります。市町村ごとに復興のステージが異なることを踏まえ、現場のニーズに沿って万全の支援を行います。
 特に、森林・林業については、令和七年度中に、復旧する林道や整備が必要な森林の把握、森林作業ガイドラインの作成を行うこととしており、今後も復興基本方針に基づき、計画的に再生を進めます。

【自然災害への対応】
 近年頻発する豪雨や台風などの自然災害からの早期復興に取り組みます。
 令和6年能登半島地震及び同年9月の豪雨による被害からの復旧・復興を一体的に推進するため、昨年11月に私自身も被災地を訪問し、現場の様々な声に一つ一つ応えながら、農地・農業用施設、林地・林道、漁港の復旧など、農林水産業の再建を切れ目なく支援します。
 特に、山からの土砂流入により海の藻場が影響を受けるといった被害があったことから、藻場調査の実施を引き続き支援するとともに、藻場に影響を及ぼすと考えられる全ての治山工事箇所の早期復旧を図ります。

 昨年12月に農林水産省に「日本の農林水産行政の戦略本部」を設置しました。この下で、攻めの分野と守りの分野を明確にし、テーマごとに戦略を作り実行することで、食の分野を我が国の経済における稼ぎの柱にするとともに、食料の安定供給の確保と、地域の維持発展を図ってまいります。

 本年も、農林水産行政に対する皆様の御支援と御協力を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

令和8年1月

農林水産大臣 鈴木 憲和

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