「令和の百姓一揆」の先駆け 島根でトラクター行進、再び 吉賀町農政会議・斎藤一栄会長2025年11月13日
昨年12月、「農業者に寄り添った農政」を求め、島根県吉賀町でトラクター行進が行われた。「令和の百姓一揆」に連なるトラクターデモの先駆けを仕掛けた吉賀町農政会議の斎藤一栄会長は、「農を大切にしないと国は守れない」と変わらぬ闘志を燃やしている。
岩本一巳吉賀町長(後ろ姿)に渡す要請書を読み上げる吉賀町農政会議の斎藤一栄会長(=中央)。
2024年12月18日、島根県吉賀町
「令和の百姓一揆」に先駆け
吉賀町農政会議は2024年12月18日、トラクター22台と軽トラ4台で吉賀町内をパレードした。「国消国産」「農業者に寄り添った農政を!」ののぼりを掲げたトラクターの列は、住民、とくに子どもたちの声援を受け、ゴールの町役場前で岩本一巳町長に「持続可能な農業、農政に向けて声明」を手渡した。
斎藤さんは「山田正彦先生ら令和の百姓一揆実行委員会の『一揆』よりぼくらの方がちょっと早かった」と振り返る。今年3月の「令和の百姓一揆」トラクターデモの後、斎藤さんも会議にオンラインで参加し、意見交換してきた。
吉賀町のパレードや「令和の百姓一揆」の行動で、「農を大切にしないと国は守れない」と消費者もわかってくれるようになった。「それでも農政は、まだまだ消費者寄りに偏って農家の方を向いていません」と斎藤さんは話す。
中山間地、危機感肌身に
去年は耕作していた耕作放棄地に茅が立ち、2年するとセイタカアワダチソウが覆い、鳥獣害も増えていく。中山間地に暮す斎藤さんは「農の危機」を肌身で感じる。
「主食である米を守るのは国の責任です。有事の備えである備蓄米を価格を下げるために放出したのは論外だし、輸入米に日本で未認可の農薬が使われていたというニュースもあって、輸入依存は心配です」(斎藤さん)
所得の支えを
放出備蓄米に急増した輸入米、主食用米の作付が増えた影響も重なって、米の需給は大きく緩み、産地や取引関係者には米価暴落の懸念が膨らむ。金さえ払えば食料がいくらでも買える時代ではない。だから「国消国産が基本」だ。そのためには、消費者と生産者とが「高い」「安い」と言い合うのではなく、再生産コストが賄えるようにすべきだ。
「令和の百姓一揆」でも「欧米並みの所得の補償」が掲げられた。斎藤さんは「私たちは『欧米並み』とまでは言っていませんが、『所得の支え』は必要です」と斎藤さんは話す。米価暴落の危機が膨らみ、鈴木農相が「国は価格にコミット(関与)しない」と宣言する中、所得補償の必要性は高まっている。
大きな農家もあれば小さな農家もある。平地もあれば中山間地もある。農政は地域の実情に目を向けてほしい。
11月21日に再びパレード
「昨年も言いましたが、農業者の声を国に伝えるため国会議事堂をむしろ旗で包囲し、消費者理解を広げるため銀座4丁目でもパレードをしたい。怒りと共に、その抱負を仲間と語り合っています」(斎藤さん)
吉賀町のトラクター行進も「令和の百姓一揆」も「同じことを思っているという連帯感」でつながっている
11月20日前後、島根県内では持続可能な農業、農政を訴える宣伝や行動が予定されている。21日には吉賀町で、再びパレードも実施する。11月24日には広島で「一揆」の行動がある。「組織は違っても、同じことを思っているという連帯感」を感じながら、斎藤さんは農政運動の明日を見据えている。
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