花は心の栄養、花の消費は無限大【花づくりの現場から 宇田明】第76回2026年1月8日
新年あけましておめでとうございます。
花産業にとって、昭和100年、戦後80年という節目の年となった2025年は、残念ながら厳しい一年でした。
終戦の年、文字どおりゼロから再出発した花産業は、戦後復興と高度経済成長の波に乗って拡大を続けてきました。しかし、1990年代半ばをピークに、以後30年、下り坂が続いています。
昨年も、その流れを止めることはできませんでした。
生産が減り続けている理由は明白です。
花のマーケット、すなわち需要が縮小し続けているからです。
政府がどれほど生産振興策を講じても、需要が回復しないかぎり、生産は戻りません。
生産者の高齢化や後継者不足は主因ではなく結果です。
市場経済は、需要があって、はじめて生産があるのが原則です。
需要が回復すれば、生産は自然と増えます。
人には「儲かりそうなこと」を嗅ぎ分ける臭覚があり、可能性のある分野には、必ず人が集まってきます。
だからこそ、減り続ける生産を回復させるには、需要の拡大が不可欠です。
しかし、政府が需要を拡大してくれるわけではありません。
生産、流通、小売がそれぞれの立場で考え、協働し、汗をかいて成し遂げるしかありません。
しかも、花は不要不急と見なされている農産物です。努力すればすぐに需要が戻る、というものでもありません。
実際、この30年間、業界はそれなりに汗をかいてきましたが、需要の縮小を止めることはできませんでした。
需要減退という強烈なアゲンストの風の中で、非力な花産業は前に進めなかった、というのが現実でしょう。
もっとも、この逆風は花だけに吹いているわけではありません。
コメ、肉、牛乳、野菜、果実といった食料農産物も、同じように消費減少に直面しています。
ただし、食料には花と決定的に異なる点があります。
政府が国民に目標摂取量を示していることです。
「ご飯をもう一膳」「野菜は350g以上」「果物200g以上」「牛乳200ml以上」・・・(図1)。
しかし、高齢化が進んだ日本では、もうそんなに食べられません。

一方、花は身体の栄養にはなりませんが、心の栄養になります。
身体に栄養が必要なように、心にも栄養が必要です。
しかも、胃袋は有限ですが、心は無限、花の消費は無限大です。
「食べられない」という花の弱点は、見方を変えれば、「無限の需要がある」という大きな強みに変わります。
そのことを端的に示しているのが、欧米先進国における花と関連商品の一人当たり消費額です。
米国は202ユーロ、スイス143ユーロ、デンマーク116ユーロ、英国110ユーロ、ドイツ103ユーロ。
いずれも100ユーロを超えています(図2)。

日本は34ユーロにすぎません。
裏を返せば、それだけ大きな伸びしろが残されているということです。
日本は、明治維新以降、欧米先進国を目標に「追いつけ、追い越せ」で発展してきました。
ところが、バブル期に象徴されるように、追いついてしまった瞬間、目標を見失い、活力を失ってしまいました。
花産業も同じ道をたどってきました。
30年の下り坂で、生産規模は1960年代にまで戻ってしまいました。
しかし、幸いなことに、いま再び明確な目標が見えています。
それは、欧米先進国の花の消費水準に追いつくことです。
2026年は、その「坂の上の雲」を目指して、再び歩み出す年になります。
日本人は、「追いつき、追い越す」ことを得意としてきた民族です。
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