名付けて「そんなことより解散」【小松泰信・地方の眼力】2026年1月14日
高市早苗首相は1月23日に召集される通常国会冒頭で、衆院を解散する意向を自民党幹部に伝えた。

困惑する自治体首長
時事通信(1月13日20時31分配信)は、総務省が10日付で、最速の日程も念頭に準備を呼び掛ける事務連絡を全国の自治体に出したことを報じた。新年度の予算編成作業と重なる繁忙期でもあることから、困惑する首長の声を紹介している。
「準備期間も短く、職員の気持ちを思うと、やむを得ないとはいえ、いたたまれない気持ちになる」と、自身のXに投稿したのは熊谷俊人千葉県知事。
「国の力を得ながら行っていく事業もたくさんある」と述べ、成立の遅れによる市民生活への影響に懸念を示したのは郡和子仙台市長。
解散風に飛ばして欲しいか高市案件
中国新聞(1月13日付)の社説は、「物価高対策や中国との関係悪化、ベネズエラの大統領拘束など国際法無視の米国との向き合い方といった懸案を抱えている。これらを後回しにして良いほどの大義名分があるのだろうか」と、正論で斬り込む。
2月上中旬投開票だとすれば、2026年度予算案の年度内成立は難しくなり、「『年収の壁』引き上げなどの関連法案も成立が遅れ、国民生活に多大な影響が出てしまう」とする。危惧するのは、「昨年夏の参院選後に続き、再び長い政治空白をつくれば、物価高に苦しむ国民の救済はまたも先送りされる」こと。
にもかかわらず解散に向かうことから透けて見えるのは、「国民生活より、支持率が高いうちに解散して自民党の議席を増やそう」との思惑。それを、政権基盤の安定を狙った「自己保身優先の解散」と呼んでいる。
国会召集日のいわゆる「冒頭解散」を、高市氏が政治の師と仰ぐ安倍晋三首相が2017年に踏み切ったことに言及し、「北朝鮮の核実験やミサイル発射を念頭に『国難突破解散』と銘打ったものの、真の狙いは森友・加計問題や自衛隊の日報問題での追及逃れだったようだ」と、痛いところを衝く。
そして安倍氏同様に、高市氏が抱える厄介な問題を紹介している。
ひとつが、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関わり。徳野英治元会長が21年の衆院選後、韓鶴子(ハンハクチャ)総裁に「私たちが応援した国会議員は自民党だけで290人に上る」などと報告していたと韓国メディアが報道した。引用した教団の内部文書が事実であれば、統一教会と接点のある国会議員は計180人という党の調査と大きく食い違うこと。
もうひとつが、高市氏本人の献金問題。05年以降の7回の衆院選で、自身が代表の党支部から6千万円余りの寄付を受けていたこと。政治資金収支報告書などから判明した。「支部への献金は私への献金ではない」との国会答弁と明らかに矛盾する。
「不誠実極まりない」解散
「暮らしを後回しにして何を問うのか。言行不一致で『大義』が見えない。党利党略のために解散権を乱用してはならない」と怒りを隠さない北海道新聞(1月14日付)の社説も、高市政権に浮上してきた新たな問題に言及している。
まずは、前述の世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題。中国新聞の指摘事項に加え、教団の内部文書に高市氏が32回も登場していること。
つぎに、与党・日本維新の会の地方議員が、一般社団法人理事に就くことで国民健康保険の支払いを軽減したとされる「国保逃れ」が拡大の様相を示していること。
そして、派閥裏金事件をはじめとする「政治とカネ」の問題。企業・団体献金禁止に消極的な首相の姿勢が際立ち、政治不信解消に手つかずであることに加えて、首相が代表の党支部が上限超えの企業献金を受けていたこと。
これらが国会で追及されることを封じるための解散だとすれば、「不誠実極まりない」と断じている。
雪国のこと!?そんなことより
ことほどさように大義のない、あるのは党利党略、いやいや露骨な私利私略の冒頭解散に振り回される雪国の人々の声を新潟日報(1月13日22時30分発信)が伝えている。まずは、雪捨て場を往来するトラックの写真。「衆院が解散すれば、雪深い地域では厳しい寒さの中での選挙となりそうだ」はそのキャプション。
「このタイミングの解散総選挙は、首相自身の人気にあやかって議席を増やしたいだけのようだ。金をかけて選挙するよりも物価高対策に回してほしい」「どこの選挙区でも経済対策が争点になる」(村上市の会社員男性・59)
「日中関係を悪化させた発言など、首相は慎重さが足りない。まずは(物価高対策などを盛り込んだ)新年度予算案を審議しなければいけない」(長岡市の60代男性)
「衆院選では、未整備の避難道路に関する公約が出るか注目したい」(柏崎刈羽原発の半径5キロ圏内に住み、再稼働には反対の柏崎市の無職女性・73)
「なんでこの時期に解散を決断するのか。雪国のことを全く考えていない」「地域の2月の積雪は2メートルにもなる。高齢者が出歩かないため、投票率が下がってしまう」(道路除雪と選挙ポスター掲示板の設置も請け負う上越市の建設業社長・79)
読売新聞(1月11日付)には、「選挙ポスターの掲示板の設置がうまくいくか心配」との、札幌市選管の担当者の声が紹介されている。同市内は8日、1月の観測記録を更新する大雪に見舞われ、今も路肩に雪の山が残っている。こうした状況で、「2200か所超ある設置場所の地面に掲示板の支柱を据える作業は容易ではない」とのこと。聞こえてますか高市さ~ん!
大義なき解散がもたらすジゴク
物価高に苦しむ国民の救済、中国との関係改善、米国との向き合い方等々の数多の懸案は後回し。「そんなことより」、ドラム叩いて満面の作り笑顔でご満悦の高市氏に、雪国での選挙など、「そんなことより×5」の些末なことだろう。
こんな、大義なき解散風に当たってダルさを覚え、「たいぎい」(主に中国・四国地方で使われる方言。「面倒くさい」「だるい」といった気分や、やる気が起きないこと)と斜に構えていると、保守系無党派層の多くがあの排外主義政党に流れることに。
気づいた時には、ジゴク!ジゴク!ジゴク! だよね、ヘブン(Heaven)先生。
「地方の眼力」なめんなよ
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