第34回全農酪農経営体験発表会 優秀賞・中村成則(沖縄県)2016年9月27日
第34回全農酪農経営体験発表会が9月16日に東京都内で開かれた。北海道から沖縄まで6人の酪農家がこれまでの経験と将来への夢を語った。今回は優秀賞に選ばれた中村成則さんの体験を紹介する。
「進化し続ける酪農」
沖縄県南城市
アーミファーム(株)代表取締役社長
中村成則さん
沖縄県の酪農家は76戸。飼養頭数は4600頭で生乳生産量は2万6000t。生乳のほとんどは県内で牛乳として消費されている。
酪農は昭和40年に父が乳牛3頭から始めた。中村さんは地元の高校を卒業後は23年間、建設業で働き平成16年に酪農を継いだ。就農から2年後、父の引退を機に30頭規模の牛舎経営を譲り受けた。
経営を引き継いだ平成18年は乳価が安く、飼料価格の高騰、後継者不足、生乳の出荷制限といった厳しい状況が重なって離農も多い状況だった。中村さんは危機感を持ち、沖縄の酪農が持続していくためには産業として発展し続けるよう時代に合わせた進化が求められいると考え、思い切って牛舎の建て替えを決断した。リスクをともなうが今、実行しなければ廃業のリスクが高まると判断した。
粘り強く取り組み、周囲の理解も得て平成21年に90頭規模の牛舎に建て替える。
「理想をあきらめずに追い続け行動し続けることが実現につながる。それは周囲の協力を得ることで人脈こそ財産であることを学んだ」。
この牛舎には県内で唯一となるトンネル換気システムによる暑熱対策を導入している。南からの海風を牛舎に取り込み常に秒速5~7メートルの風が安定的に流れており、ヒートストレスの軽減につなげている。
そのほか飼槽なども含めた牛舎の建設には原材料の発注や施行まで建設業の経験を生かして自らが手がけてコストを抑えた。
沖縄の酪農は草地を持たない農家が多く、毎日出てくる牛糞を自分の畑にまくことが難しい。さらに住宅が酪農地帯にも侵入し環境対策が課題になってきている。
そこで中村さんはたい肥を袋詰めして販売することを思いつく。処理コストと効率の面から糞尿分離型システムを採用することで100%牛糞たい肥を製造している。EM菌による発酵も行い高品質のたい肥となったという。たい肥の製造販売事業は牛舎の立て替えで従業員を採用したことで順調となり、地域内のホームセンターやJAの資材センターでの販売を実現した。
牧場を法人化し社会的信用を強化できたことも販路拡大に効果があった。現在は月2000袋程度の出荷だが、今後さらに安定的に出荷数を増やすことができれば「酪農経営を圧迫するどころか新たな収入源となり新たな雇用を生み出すことになる」。
◇ ◇
県産牛乳を使用したソフトクリーム、ジェラートの販売も行っている。「自ら乳製品を加工し消費者に販売することで酪農への関心を持ってもらうことは県産牛乳普及に貢献すると考えた」。
昨年4月、JAのファーマーズマーケットの開設と同時にパーラーをオープンし自社のオリジナル製品を販売している。
今後は近隣の果実農家と連携して独自のジェラート開発もしていきたいという。子どもたちへの搾乳体験にも力を入れている。
現在、経産牛70頭、育成牛20頭を中村さんも含めて6人の従業員で飼養し、週に1日は休日をとっている。パーラー部門のの4人と合わせて10人体制となっている。
後継者づくりにも力を入れている。そのために午前、午後の二交代シフト制も検討している。
経営理念のひとつが「酪農による文化的生活」だ。仕事の効率化と経営の合理化を図り、現代に合わせた労働環境を社員に提供することにより文化的な生活を送ってもらってこそ、やり甲斐のある仕事となると考えている。
「これが酪農の発展につながると確信している」と話した。
審査講評では新規就農のサポート事業への取り組みが評価された。
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