第34回全農酪農経営体験発表会 優秀賞・久保淳氏(岩手県)2016年9月21日
第34回全農酪農経営体験発表会が9月16日に東京都内で開かれた。北海道から沖縄まで6人の酪農家がこれまでの経験と将来への夢を語った。今回は優秀賞に選ばれた久保淳さんの体験を紹介する。
「能率・効率・省力化を重視した自給飼料型酪農」
岩手県二戸郡一戸町
久保淳さん
一戸町の南部にある奥中山という地域に住んでいる。標高は400メートルを超え、比較的平坦な土地が広がり、高原野菜と酪農が主要な産業となっている。
奥中山の酪農家は現在39戸、平均飼養頭数は106頭で岩手県の中では規模拡大がすすんでいる地帯。地域の中心には第三セクターで運営する奥中山高原農協乳業があり、久保さんが絞った牛乳もここに出荷されている。ホルスタイン牛乳だけでなくジャージー牛乳もあり、地元の名産品として好評だ。
酪農経営は祖父が昭和35年に始め、55年に父が搾乳牛舎を新設し、経産牛を40頭まで増加した。平成16年に久保さんが就農し、翌年経営移譲した。24年に育成牛舎を増築し、経産牛は50頭まで規模拡大した。
祖父が酪農を始めた際の古い牛舎を有効活用し、作業効率を最優先に牛舎配置を行っている。
◇ ◇
経営の特徴は「能率・効率・省力化を重視していること」。将来労働力不足になることは目に見えているし、人の労働力もあてにならない。
そこで(1)作業性を追求した搾乳システム、(2)給餌作業の自動化、(3)保育育成管理の自動化を行った。
(1)では中央通路の上にパイプラインを設置し、牛の後ろから搾乳機を装着することができる。またレールでスライドしながら次の牛の後ろへと移動するため、作業効率向上と労力軽減につながっている。1人で50頭の搾乳作業を約1時間で終了させる。
また搾乳性を優先した牛を導入してきたため、牛はおとなしく、搾乳中に糞もしない。人にも牛にもストレスがなく、短時間で終了できることは重要なことだという。
給餌作業は酪農の中でも手間のかかる作業であることから、(2)ではTMR自動給餌機を導入した。将来育成牛舎にも導入できるように準備しているという。
生協パルシステム向けの単価高いNon-GMO牛乳をつくり、高い乳価になっている。
(3)について、「後回しにしがちだが、後継牛を育てるのに大切な作業」とし、ほ乳ロボットの導入・フリーストール育成牛舎をつくった。生後1週間は母牛から授乳するが、その後ロボットに移る。省力化と子牛の発育向上につながっている。
そのほか、たい肥処理では近隣の農家と共同で発酵施設をつくり、たい肥は自分の畑へ還元している。
人工授精は自分で行い、牛の調子を把握する。自分の気に入った牛乳にするため改良を重ねてきたので、F1の生産は行っていなかった。能力の劣る牛を長く飼うことで平均産児数を伸ばす必要はないという。
今後は和牛受精卵やF1も増やしていく予定。
来年、4戸で共同のTMRセンターを設立。労働力不足は否めなく、センター設立で個人の機械投資が減少し、経営効率向上、省力化に期待し、生産性向上を目指す。
◇ ◇
消費者交流として2年に1度、パルシステムが搾乳体験きたり、パラグアイに似せたヒマワリ畑をつくったりして、酪農イメージ向上につながることに期待しているという。
酪農を通してやりたいことは、子どもがダウン症であることもあり、牛乳の加工施設つくって障害者を雇用したいという。
妻は中学校の職員をしており、経理の手伝いをしてもらっているが、牛舎仕事をしてもらおうとは思っていない。
久保さんは「自分ひとりでも可能な酪農経営を目指し」ている。
子どもや家族に自分の道を歩んでほしいと願い、酪農家に嫁ぐ人が増えることを望んでいるという。
審査講評では「省力化に取り組み、家族との時間も持っている。今後のモデルになる」と評価された。
(関連記事)
・第34回全農酪農経営体験発表会 最優秀賞 (16.09.21)
・最優秀賞に北海道の高橋守さん、真弓さん-全農酪農経営体験発表会 (16.09.16)
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