第34回全農酪農経営体験発表会 最優秀賞2016年9月20日
第34回全農酪農経営体験発表会が9月16日に東京都内で開かれた。北海道から沖縄まで6人の酪農家がこれまでの経験と将来への夢を語った。今回は最優秀賞に選ばれた北海道の高橋守さん、真弓さんの体験を紹介する。
「牛と大地と私たちが一つになって、ニセコの恵みを届ける牧場へ」
北海道虻田郡ニセコ町
高橋守さん
JAようてい管内には90戸の酪農家がいて年間生乳2万tを生産している。このうちニセコ町では10戸で年間4000tを生産している。
高橋牧場は本場と第2牧場をあわせ120頭の搾乳牛と育成牛を含め254頭を飼育。第2牧場は就農をめざす4人が働いている。
牧場とは別に、アイスクリーム、飲むヨーグルト、シュークリームなどを扱うミルク工房と町内の野菜を提供するレストランも営んでいる。
ミルク工房は兄と長女夫婦、次男夫婦が中心となり、牧場とレストランスタッフと合わせて総勢50名が働いている。
◇ ◇
昭和45年に父から経営委譲、47年に畑作兼業から酪農に一本化し牛群改良に取り組む。仲間とともに研究会を立ち上げ共進会での上位入賞をめざした。
そのころ生乳の生産調整で規模拡大できず乳価も下がったことから借入金が返済できないという状況のなか、F1の取り組みを勧められて牧場を拡大。しかし、初任牛の価格暴落などの困難に直面する。その後、血統の良い牛を導入して受精卵移植による雌仔牛の販売に取り組む。
平成14年、長男が帰ってきて酪農を始めたことを契機に酪農家をめざす若者が新規就農できるように離農した牧場を買い取り第二牧場として若者を入れることにした。信用を積み重ねて彼らが認められていく場所でもある。すべての管理を彼らにまかせている。
離農の増加と高齢化にともない個々の力だけでは農地を集約することができなくなったことから平成24年にTMRセンターを設立した。
個々の農地集約し土地の有効活用ができるようになった。新規就農者の負担となる土地や機械を購入することもなくなった。酪農に取り組みやすいシステムができたのではないか。
ここでは良質な粗飼料づくりをめざしている。飼料用トウモロコシの面積は95ha。牧草地は230haある。仲間と協力して運営し播種は自分たちで行い、収穫、運搬は町内の建設業者に委託している。おいしい牛乳のためには飼料もおいしくなければならないと考えている。
◇ ◇
ミルク工房は平成5年の2回目の生産調整、出荷制限、親牛の淘汰がきっかけとなった。牛乳を加工し消費者に届けることができないかと考え、ブラウンスイスを導入しチーズの加工、販売も考えた。平成9年にミルク工房を開いたが、夏はともかく冬の需要開拓に苦労しスーパーで扱ってもらうなどの取り組みも。
平成16年に洋菓子製品の開発を長女に任せて商品を増やした。これで通年雇用が実現でき次男に工場長を任せることになった。店内は客に見えるようガラス張りにした。
野菜直売所もある。地域の農業が生き残っていくために畑作と連携し、たい肥の有効利用を考え「明日の農業を考える会」を設立した。たい肥を利用した野菜を使ったレストランもオープンした。
TMRセンターができたことから良質な粗飼料が確保できるので規模拡大を決意。ロボット牛舎設立中、チーズ工房も建設し今年冬からフレッシュチーズ製造も予定している。
ここに至るまで本当に多くの牛たちとたくさんの出会いがあり、その人たちのおかげで高橋牧場がある。これからはその恩返しをし、若い人たちが中心になっていけるよう地域に酪農を引き継いでいくことがいちばんの仕事だと思う。
これからも酪農家であるからこそ、安心・安全な製品を作ることにこだわりたい。私がお客さんに提供したいのは自分の作った牛乳の味。生産者と消費者がつながることができる商品をこれからもつくっていきたい。
(関連記事)
・最優秀賞に北海道の高橋守さん、真弓さん-全農酪農経営体験発表会 (16.09.16)
重要な記事
最新の記事
-
【特殊報】チュウゴクアミガサハゴロモ 果樹園地で初めて確認 富山県2025年5月15日
-
【注意報】ムギ類赤かび病 多発リスクに注意 三重県2025年5月15日
-
"安心のお守り"拡充へ JA共済連 青江伯夫会長に聞く【令和6年度JA共済優績組合表彰】2025年5月15日
-
【地域を診る】観光・イベントで地域経済は潤うのか 地元外企業が利益吸収も 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年5月15日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】前回のトランプ政権との日米貿易交渉の失敗に学べるか(1)2025年5月15日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】前回のトランプ政権との日米貿易交渉の失敗に学べるか(2)2025年5月15日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】前回のトランプ政権との日米貿易交渉の失敗に学べるか(3)2025年5月15日
-
麦に赤かび病、きゅうりのアザミウマ類など多発に注意 令和7年度病害虫発生予報第2号 農水省2025年5月15日
-
パッケージサラダ7商品 を価格改定 6月1日店着分から サラダクラブ2025年5月15日
-
なぜ「ジャガイモ―ムギ―ビート」?【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第340回2025年5月15日
-
「イミダクロプリド」は農水省再評価前から自主的に制限 環境に調和した持続可能な農業へ バイエルクロップサイエンス(1)2025年5月15日
-
「イミダクロプリド」は農水省再評価前から自主的に制限 環境に調和した持続可能な農業へ バイエルクロップサイエンス(2)2025年5月15日
-
「JAグループ宮城 営農支援フェア2025」がラジオCMで告知 JA全農みやぎ2025年5月15日
-
いちごの収穫・パック詰め体験イベント開催 新規就農者研修も募集へ JA全農みやぎ2025年5月15日
-
就農希望者が日本の農業を"見つける" 2025年度の「新・農業人フェア」 農協観光と「マイナビ農業」2025年5月15日
-
JA三井リースが新中計「Sustainable Evolution2028」策定 課題解決で持続的成長目指す2025年5月15日
-
「NARO生育・収量予測ツール」にトマト糖度制御機能を追加 農研機構2025年5月15日
-
冷凍・国産オーガニックほうれん草 PB「自然派Style」から登場 コープ自然派2025年5月15日
-
独自品種でプレミアムイチゴ「SAKURA DROPS」立ち上げ 東南アジアの高級スーパーで販売 CULTA2025年5月15日
-
茨城の深作農園「日本さつまいもサミット」殿堂入り農家第1号に認定2025年5月15日