地域イノベーションプログラムを 企業と連携して新たな変革へ挑戦 JA全中教育部教育企画課長 田村政司(上)2020年7月27日
経営基盤強化にむけて全国のJAで支店統廃合が急速に進んでいる。一方で、デジタル化など大きな環境変化をふまえ、組合員の営農と暮らしを向上させる新たな取り組みへの挑戦が不可欠だ。JA全中教育部教育企画課課長 田村政司氏に人材育成面からJAイノベーションへの提言をいただいた。

田村政司氏
JAの経営基盤強化
JAが当面する喫緊の課題は、マイナス金利の長期化に伴う信用事業の収益減少への「JA経営基盤の強化」である。JAにおいては支店の統廃合、人員体制の合理化によるコスト削減について、組合員との話し合いによる理解と納得をえつつ、スピード感をもって進められている。
一方で、こうした取り組みを「守り」とすれば、同時に第28回JA全国大会のテーマである「農業者の所得向上」「農業生産の拡大」「地域活性化」という「攻め」の取り組みも、同時に進めていかないと、組合員からみて、そもそもJAとは何のためにあるのかという存在意義を問われることとなりかねない。
とりわけ組合員の営農と暮らしをめぐる環境は大きく変化しており、これまでの延長線では組合員の期待に十分に応えることは困難である。農村現場においては、農家組合員の減少・高齢化により、「農業生産の拡大」はおろか、維持すら困難な状況であり、農地の遊休化が進んでいる。加えて、コロナ禍に伴い外国人労働者の確保が困難となっており、大規模農家や法人経営を中心に深刻な人手不足に直面している。暮らしという面からみても、人手不足とコロナ禍での接触制限は医療・福祉においてお年寄りの生活に大きな負担を強いている。
一方、民間企業では、デジタル技術を進化・活用することでスマホを活用し、より「早く」「安く」「高い品質」で物品・サービスを提供するさまざまな仕組みが導入・提案されている。デジタル活用の分野でJAグループは大きく遅れ、競争力低下も危惧されるところであり、大きな課題である。
価値ある事業・活動創造
「JA経営基盤強化」においては、コスト削減という「守り」を先行させることは、経営継続という面からやむを得ない選択である。一方で、「攻め」の取り組みについてもすでに方針が掲げられ、さらなる実践を強化していくことに尽きるが、これまでにない新たな取り組みを立ち上げ、地域に根付かせていくことは、現実には容易ではない。
組合員の役に立ち喜ばれる事業・活動とは、組合員の営農と暮らしを豊かにする物品・サービスを継続的に提供する仕組みの構築と運用、さらには教育文化活動などの協同活動の「場」の創出である。いずれであっても、その評価は組合員の「いいね」の総量=価値の総量である。これまでJAにおいては、ファーマーズマーケットの立ち上げや集落営農の育成、支店協同活動など、全国各地で小さく行われてきた優れた取り組みが全国に伝播し、各地で磨き上げられ、定着・発展してきた価値創造の経過がある。
しかしながらJA・中央会・連合会が密接に連携し、JAグループとして組織・事業・運営に一体的に取り組む仕組みは、組織・事業・運営の安定化に大きく寄与する一方で、時と場合によっては中央会・連合会の方針に従っていれば何とかなるというJA役職員の意識を生み、組合員の営農と暮らしの現場を起点とした改革、創造を興しにくい構造的要因になっているとの指摘もある。全国各地の切磋琢磨の中から組合員にとって、より価値ある事業・活動の創造が大きく広がっていく環境整備(=優良事例の横展開)に取り組んでいくこと、さらには事業・活動の創造を担う新たな人材育成の仕組み、組織をつくり上げていくことが今後の大きな課題ではないだろうか。
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