「特別栽培米」の安定生産を下支え 注目の微生物農薬「タフブロックSP」現地レポート 岩手県JAのIPМの実践①2024年1月15日
岩手県は全国に先駆けて20年前からひとめぼれの「特別栽培」に取り組み日本生協連を中心に販売している。長年の協同組合提携により生協は現場の実践を理解し、産地も「岩手の米を大事にしてくれる取り組み」として力を入れ、将来に向け今、2024年産への栽培準備を進めている。今回は特別栽培米の生産を支える微生物農薬「タフブロックSP」を中心としたJAの総合的病害虫・雑草管理(IPМ)の取り組みをレポートする。

JA江刺の種子センター
消費者の期待に応える
岩手県では2004年からJA全農いわてと日本生協連が提携し「特別栽培米 ひとめぼれ」の生産に取り組んできた。
それまでも生協からの求めに応じて減農薬、減化学肥料栽培に取り組んできたが、県が慣行栽培基準を決めて、特別栽培米は農薬成分数及び化学肥料の窒素成分をその半分以下とする基準が示された。
岩手県は慣行栽培基準で農薬成分を16成分とした。すなわち特別栽培米は最大で8成分としなければならない。
生協などが求める環境に優しい米づくりをする産地として減農薬栽培には取り組んだが、慣行栽培の半分に農薬を減らして良質な米を求められる量を生産できるのかとの声が当初は現場から上がったという。
JA全農いわて営農支援部営農技術課の千葉丈総合アドバイザーによると、最初は努力をしても病気や雑草が出て量を確保するため、やむなく特別栽培をあきらめる生産者が出るなど苦労もあったという。
「そんなとき印象に残っているのは生協側から産地が困ったら相談してほしい、私たちはまず岩手の米を確保し組合員に供給することを大事にしたい、と言われたことです。そこまで言ってくれるのなら、と、岩手の米の先頭立つという思いで、ひとめぼれの特別栽培にJAの営農指導員と協力して栽培技術を検討し、現場の理解を広げていきました」と振り返る。
基本的な考えは単に農薬成分を減らすのではなく、「さまざまな技術を組み合わせたうえで農薬を減らす」である。たとえば、その一つに草刈り時期の徹底がある。越冬したカメムシは5月~6月に孵化するが、その前に草を刈れば餌がないのでカメムシの幼虫は育たない。
その後、出穂の直前の草刈りは厳禁。その時期に草を刈ればカメムシは餌を求めて田の中に飛ぶからである。
また、病害を減らすため専用の育苗培土が必要なことなども生産者の理解を求めた。
「農薬を減らすためには、農薬を削減しても生育に支障がない栽培環境を作る努力が必要だということです。それがIPМだと思います」。
種子消毒に微生物農薬
一方で農薬成分を8成分にする具体策も求められた。
そこで活用を決めたのが微生物農薬「タフブロック」による種子消毒である。タフブロックは有用糸状菌を有効成分とした微生物農薬で対象病害に高い効果を持つことが確認でき、なおかつ農薬成分カウントはゼロ、使用回数に制限がない。そのため使用することにしたのだが、新たな問題が起きた。
それは化学合成農薬と比較して、苗が徒長する稲ばか苗病の発生の増加である。米生産における実用上の問題は無いが、水稲種子採種ほ場の周辺100メートルまでに一本でもその発生が確認されれば、採種ほ場として認定されなくなるのである。
つまり、水稲種子生産者は、稲ばか苗病をより確実に防除できる化学農薬による種子消毒を望んでいるが、主食用である特別栽培米生産者は種子消毒でタフブロックを使用して農薬カウントをゼロにして、以降の農薬をより有効に活用することを望んでいるという相反する課題が存在している。
こうした課題を解決するために取り組まれたのが、2年間は化学農薬(テクリードC)で種子消毒し、その次の2年間は微生物農薬(タフブロック)で種子消毒するというローテーション防除だった。
ただし、タフブロックは個人で使用すると消毒効果にばらつきが生じ、個々のやり方の違いによって稲ばか苗病が発生している可能性が考えられた。
そこで種子センターで大量に種子消毒を行い生産者に供給する方式を検討、タフブロック開発メーカーの出光興産(現エス・ディー・エスバイオテック)と協友アグリ(株)の共同研究により2012年に種籾に薬剤を吹き付けて大量の消毒済種子をつくる「タフブロックSP」の登録を取得、岩手県では個人処理から種子センターでの一斉処理へ切り替えた。
種子センターで一斉処理に使われる「タフブロックSP」
消毒済の種子
(公社)岩手県農産物改良種苗センターの田中真也主要作物部部長は県内7つの種子センターすべてが大量に種子消毒する機械を備えていることが岩手県の特徴だとし「タフブロックSPの導入によって化学合成農薬とのローテーションも軌道に乗り種子の安定供給につながっている」と話すとともに、生産者の種子費用も約半分となり、自ら種子消毒する手間も省けていると評価する。
主要作物部の田中部長と立野生麻調査役
千葉さんは「生産現場の要望に応えて実現した技術体系」と話す。
微生物農薬の活用が水田雑草対策に
種子消毒に化学農薬を使用した場合、一発処理除草剤の有効成分2つの成分を含む一発処理除草剤を使用するが、年数を重ねていくと一部の雑草が残ることがある。
タフブロックSPでの種子消毒により3成分の一発処理除草剤が使用されることで水田の難防除雑草対策にも繋がっている。
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