「特別栽培米」の安定生産を下支え 注目の微生物農薬「タフブロックSP」現地レポート 岩手県JAのIPМの実践②2024年1月15日
岩手県は全国に先駆けて20年前からひとめぼれの「特別栽培」に取り組み日本生協連を中心に販売している。長年の協同組合提携により生協は現場の実践を理解し、産地も「岩手の米を大事にしてくれる取り組み」として力を入れ、将来に向け今、2024年産への栽培準備を進めている。今回は特別栽培米の生産を支える微生物農薬「タフブロックSP」を中心としたJAの総合的病害虫・雑草管理(IPМ)の取り組みをレポートする。
「特別栽培米」の安定生産を下支え 注目の微生物農薬「タフブロックSP」現地レポート 岩手県JAのIPМの実践① から
タフブロックSP 9割-JA岩手ふるさと
現在県内7JAのうち日本生協連向け特別栽培米に取り組んでいるのは4JA。
その1つ、JA岩手ふるさとでは水稲作付面積約7000haのうち、需要に応じて特別栽培米は2~3割を作付けている。
とくに化学農薬(テクリードC)を種子消毒に使用する年は、農薬成分を8成分に抑えるため、草刈りを徹底するよう指導している。
前述したように草刈りはカメムシの防除のために時期が重要で5月下旬、6月、7月中旬までに3回実施し、その後、9月上旬にもう1回草刈りをする。そのほか生産者の労力はかかるが、ヒエなどの雑草除去も必要になる。
特別栽培米の取り組みを理解してもらうためにも田植えや稲刈りの時期の消費者や、米卸関係者などへの農業体験の参加呼びかけと交流にも力を入れている。
同JA営農販売グループ営農企画課の伊藤直飛人課長補佐は「タフブロックSPによる消毒済種子の供給は生産者の労力軽減になっているほか、生産履歴をJAに提出するなどこだわりの米づくりを消費者にアピールすることで付加価値の向上につながっている」と話す。同JAでは特別栽培米ひとめぼれには60kg当たり400円の加算金が支払われており、農業所得の向上にもつながっている。
伊藤直飛人 営農企画課課長補佐
JAが取りまとめた23年産のタフブロックSPによる消毒種子の供給量は8割を占める。特別栽培米の生産量よりはるかに多い供給量だが、業務用需要米の種子として使用されているという。栽培法は特別栽培ではないがそれに近い栽培に取り組まれていると消費者からも評価されている。
1年ローテーションに全生産者が取り組む JA江刺
JA江刺は2750haの水稲作付面積のほぼすべてで特別栽培米ひとめぼれ生産に取り組む。出荷者は営農組合も含めて1250人。
同JAは、微生物農薬(タフブロックSP)と化学農薬(テクリードC)による種子消毒を1年ローテーションで指導している。
JA江刺の場合、農薬成分数は育苗箱施用剤で調整している。
種子消毒をタフブロックSPで行った年の箱施用剤は殺虫・殺菌の2成分、種子消毒をテクリードCで行った年の箱施用剤は殺菌1成分のみとしている。
そのために力を入れているのがイネミズゾウムシなど土着害虫の調査だ。10地区各3ほ場で害虫密度が要防除水準まで増えているかどうかを徹底して調べる。その結果、これまで殺虫剤を使用しない年でも要防除水準を超えることはないことを確認し、翌年の殺虫剤散布で十分に防除、すなわち隔年防除で対応できることが分かった。
こうした取り組みを実現したのは生産者への指導の徹底だ。同JAでは講習会に力を入れ、4月の育苗と田植え後の管理をテーマにした講習会に始まり、6月には中干しの喚起と今後使用する農薬の注意点、7月には追肥といもち病対策、水管理と高温対策、8月にはカメムシ防除、そして9月には刈取り時期の提案などほぼ毎月開催、それも10地区それぞれ6会場で年間300回もの講習会を開き、指導・啓発を行っている。
同JAは精米センターを持ち、JA全農いわて経由とは別に産地精米で特別栽培米ひとめぼれを販売している。「金札米」のブランドで評価を高めてきたが、そこには産地全体で意識を高め全員で特別栽培米に取り組んできた実績がある。
その栽培をJAが的確に指導してきた。
JAは生産者への講習会などに力を入れる。(右)谷謙治営農推進部米穀課長、石母田俊基監理役
みどり戦略視野に次へ
今回、訪ねた2JAともタフブロックSPを使った特別栽培米の取り組みを基盤に土壌診断に基づく施肥設計の見直しや、新たな肥料の試験を進めるなど国のみどり戦略への対応も進めていた。岩手県のJAでは、微生物農薬の種子消毒への使用をベースに、地域ぐるみのダイナミックなIPMを展開しており、次の時代の課題に向け着実に取り組みが進んでいた。
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