飼料穀物 安定供給体制を強化-JA全農2017年1月20日
JA全農はブラジルで穀物集荷・輸出事業を展開しているALDC社への出資を決定した。世界有数の穀物輸出国であるブラジル産飼料穀物のサプライチェーンを確保し安定供給体制をさらに強化する。
ブラジルのトウモロコシ生産量は2006年には5100万tだったが、2016年には8700万tと10年で70%増加した。米国農務省(USDA)の予測では2025年にはさらに20%増えて1億tを超えると予測している。収穫面積は1700万haから1800万haへと拡大すると予測していることから、単収の増加で生産量が増えると見込まれている。
大豆の生産量も06年の5900万tが16年には1億400万tと70%以上増加した。25年には1億3000万tを超える予測だ。収穫面積も3400万haからさらに500万ha増える見込みだ。
牧草地を中心に農地が増える見込みで、中国をはじめとした需要増に対応し輸出量も増える見込みだ。トウモロコシの輸出シェアは米国38%、ブラジル20%となっている。大豆は米国40%、ブラジル43%とトップを占める。日本の輸入先もトウモロコシは米国72%、ブラジル26%、大豆も米国72%に次ぎブラジルが16%となっている。
全農はトウモロコシの調達先として米国のほか、アルゼンチンの農協連合会(ACA農協連合会)と50年以上にわたって農協間提携をしているが、今回の出資で世界有数の産地とサプライチェーンを結ぶことになる。
ALDC社の株主であるアマッジ社は1977年の設立。ブラジル全域とアルゼンチン、中国、オランダ、ノルウェーなどで事業を展開しており、物流、エネルギー、農産物取引、用船などで4800人ほどを雇用しているという。
もう一方のルイ・ドレファス社は4大穀物メジャーのひとつである。世界規模で資産を所有し、年間8100万tの集荷、加工、搬送などの事業を展開。ブラジルには1942年に進出し60を超える物流拠点や工場を操業している。
両社によって設立されたALDC社はブラジル北東部の穀物産地であるマピトバ地域(マラニョン州、ピアウイ州、トカンティス州、バイーア州)に6か所の内陸穀物集荷倉庫を保有している。また、アマゾン川河口が面するブラジル北部のイタキ港に穀物輸出エレベーターを持ち、穀物集荷・輸出事業を展開している。
ブラジル国内ではトラック輸送が主流で、穀倉地帯から南部の港であるサントスやビトリアまで2000km以上も搬送する。これに対してALDC社が内陸倉庫を所有する地域には鉄道が敷設されておりイタキ港まで貨車輸送が可能となっている。全農によると同国では穀物の増産と輸出拡大にともなってインフラ整備が急ピッチで進められており、アマゾン川の内航海運による穀物輸送と河口への輸出エレベーター建設も進んでいるという。
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ブラジルには単位農協はあるが全国的な連合会が組織されていないことから一般企業との提携を選択した。株式を3分の1保有し対等な権利を持つ。実際に出資する現地法人である全農グレインブラジルホールディングス有限会社の社長らが役員を兼務する。
全農は「単なる取引関係ではなく出資することによって、ブラジルの産地や物流などの情報を得ることもできるほか、中国など大輸入国の動向を把握することもできる」と話す。
米国産とブラジル産では品質に違いがあるが、飼料畜産中央研究所や系統飼料会社などの研究によって3、4年前から米国産原料を使った飼料とそん色のない供給ができるようになっており、これも今回の出資につながったという。
米国産は10月から3月までが供給期間だが、ブラジルは4月から9月までと供給期間が違う。国内への飼料穀物の安定供給を図ると同時に、取り扱い量を増やして中国をはじめとするアジアの需要増に応えていくことも視野に入れて事業を展開していく方針だ。
(図)全農の飼料穀物確保の体制。カナダや豪州からは麦類を調達している。PDFはこちらから。
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