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基本法農政と農協のかたち2013年12月5日

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【太田原高昭 / 北海道大学名誉教授】

・食管依存で安全運転の総合農協
・成長農産物で勢いづく専門農協
・小倉武一の系統農協批判
・専門農協の弱点は信用事業

 基本法農政の「選択的拡大」のもと、日本農業は稲作中心から畜産や青果へ転換することになった。それに伴って、農協も大きく変貌した。畜産や青果の専門農協が各地に生まれ、活発な活動を始めた。
 一方、稲作地帯の総合農協は、再建整備の傷跡が深く残っていて、米麦を主力にした、食管法依存の安全運転を続けるところが少なくなかった。そして、守旧的という批判を浴びた。
 こうした中で、総合農協か、専門農協か、という議論が再燃した。
 その後、総合農協も米麦以外の分野に進出し始めたし、組合員はなじみの総合農協に出荷するようになった。
 他方、専門農協は活発な事業を展開したが、信用事業を行えない、という弱点があって、しばらくの間、この論争は続いた。

◆食管依存で安全運転の総合農協

 1961年の農業基本法とともにいわゆる基本法農政が始まる。それは日本農業を近代化し、他産業との所得格差を解消するために、かつてない巨額の国家資金を投入する画期的な政策だった。そこで問題になるのが農政と農協の関係である。
 農業基本法の第12条には次のような規定があった。「国は?農業協同組合が行う販売、購買等の事業の発達改善、農産物取引の近代化、農業関連事業の振興?に必要な施策を講ずるものとする。」このほかにも随所に農協についての記載があり、政策実施のパートナーとしての農協の役割への強い期待を表明したのが農基法の大きな特徴であった。
 しかしこの時点での系統農協はこうした期待に応えられる状況にはなかった。北海道十勝など共販運動で盛り上がったところもあったが、大勢は再建整備の傷跡をつくろうことに追われていた。基本法農政は「選択的拡大」の看板を掲げ、稲作中心から畜産や青果などの成長農産物への転換を目指していたが、稲作地帯の多くは食管法依存の安全運転に徹し、フリーマーケット作物にはなかなか手が出せないというのが実情だった。

◆成長農産物で勢いづく専門農協

 これに対して専門農協は、もともと畜産、青果を中心とする商業的農業の分野を主要な基盤としてきたから、日本経済の高度経済成長がもたらす需要拡大に支えられて発展期を迎えていた。数の上から見ても1960年の組合数1万6000と総合農協を圧倒する勢いを見せている。
 基本法農政の選択的拡大方針は、こうした専門農協にとって渡りに舟であった。とくに生産の伸びが大きかったみかん地帯や酪農地帯で専門農協の成長が著しく、地域内の総合農協を上回る存在感を示すようになっていた。
 このような状況を背景として、1964年に『総合農協と専門農協』という本が発刊されている。監修者は小倉武一、農基法策定当時の農林次官であり、基本法農政の生みの親とされる。その小倉が、次官退任後の自由な立場で、農政展開上の最大の懸念として農協問題を取り上げたのがこの本であり、その内容はこのシリーズのテーマから見ても見逃せない。
 『総合農協と専門農協』は、冒頭にある小倉の問題提起を受けて、6人の専門家が酪農。果実、野菜という成長農産物について主産地の生産と流通の実情を調査し、その中で総合農協と専門農協がそれぞれどのような役割を果たしているかを報告し、討論した記録である。それだけに農協をめぐるきわめて広範な問題、今日的にも論点になっているような諸問題が論議されていて興味深いが、ここでは総合、専門問題にしぼってみてみよう。

◆小倉武一の系統農協批判

 小倉の問題提起は、一口に言って当時の系統農協(総合農協)に対する不満をぶちまけたものと言ってよいだろう。経済発展が続く中で農業は様々な解決すべき問題をかかえているのに「最近まで系統農協は農業問題に無縁のように思われてきた。」「総合農協の系統組織はいつまでも食糧管理制度の上に安住しているわけにはいかないのである。」
 日本農業は米麦中心から転換しなければならないのに、農協にその力はあるのか、「系統農協の構造問題を解決することなくしては、現下の農業問題に対処するわけにはいかない」のだから、行政はこれまで通り「総合農協主義」のままでよいのか。これは、農協法制定時における「農協のかたち」をめぐる議論いらいの農協のありかたを問う発言であった。
 調査に当たった専門家のなかで、愛媛大学の若林秀泰は、みかんの主産地で専門農協が発達した愛媛県を担当し、総合農協に対する専門農協の優位性を確認している。そのうえで若林は、総合農協を合併によって大規模化し、それを「販売商品別の縦割り制に改め、いわば専門農協的な組織体制に切り替える」と総合農協から専門農協への転換を主張した。

◆両陣営の事業競合と調整

 しかし専門農協主義を鮮明にしている若林の報告に対して、他の報告は必ずしも同調していない、多くの調査結果は総合農協がコメ以外の分野に進出し始めたことを示している。需要が拡大している成長農産物はどこでも生産が増えてくるから、専門農協がないところでは総合農協が取り扱わざるをえないし、すでに専門農協が活動しているところでも新たに取り組む生産者はなじみの総合農協を頼りにする。
 そこで総合農協の米麦農協からの脱皮が始まり、それが進むと専門農協との事業競合が発生する。したがって専門と総合のいずれかに軍配を上げるということにはならないし、総合=食糧生産、専門=成長農産物という分業も現実的ではない。むしろ必要なのは両者の競合を調整し、外部資本に対する対抗力を増大させることではないか。
 この本は明快な結論を出しているわけではない。しかし総合農協が変わらなければならないというメッセージは十分に伝わってくるし、行政機構や系統農協に対する小倉の影響力からみて、その後の展開に大きなインパクトを与えたとみられる。

◆専門農協の弱点は信用事業

 ここで指摘された両陣営の競合と調整という問題がその後どのように展開したかは次号に見ることにして、重要な論点となった専門農協の弱点について触れておく。
 佐賀県を調査した伊東勇夫は次のように報告している。専門農協は「一般に信用事業を営まないから?経営体としての脆弱性をもっているし、重点的な営農指導や共同施設を行えないという欠陥をもっている。このことによって市場からの前借金、借入金などに依存するものが多くなり、ひいては協同組合としての独立性・自主性を損なう場合が多い。」
 この問題は、需要が伸び続け事業が右肩上がりに推移する間はあまり目立たなかったが、やがて貿易の自由化が成長農産物を襲うようになると致命的な欠陥となってくる。

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