JAの活動:JA 人と事業2015
【JA 人と事業2015】藤木 眞也・JAかみましき代表理事組合長 若者が夢と誇り持つ政策を2015年11月24日
持続可能な農業めざす
・青年部で大豆放棄地解消に
・多面的機能に助成の拡大を
・理事の半分が認定農業者に
・合併時の目標200億円に自信
来夏の参議院選で全国農政連(全国農業者農政運動組織連盟)の推薦を受けて立候補する熊本県のJAかみましきの藤木眞也・代表理事組合長に農業・農政についての思い・考えを聞いた。同組合長は若者が夢と誇りの持てる農業の実現、農村・中山間地域を守る農業者が安定した持続可能な農業確立の必要性を強調する。
持続可能な農業めざす
◆青年部で大豆 放棄地解消に
――全青協の会長を経験され、若くして組合長になられました。1000頭規模の肉用牛と水稲の農家でもあり、農業に対する思いは特別なものがあると思いますが。
農家に生まれ、当然のように後継者になりました。就農し、行動範囲が広がるにつれ、改めて周辺を見ると、耕作放棄地が多いことに気付きました。この地域から耕作放棄地を出さないようにしようとの思いで農協青年部の活動を初めました。
全青協の役員の時は、ちょうどWTO(世界貿易機関)交渉が問題になっていたころです。水田の多面的機能の役割が取り上げられたときでもあります。私の住む地域は純粋な水田地帯で、条件は悪くありませんが、たびたび水害に見舞われていました。
その後、河川改修で洪水の心配がなくなり、団地化のブロックローテーションには取り組みましたが、転作の作物が作付けできず、半年は不耕作地になる。そこで青年部で大豆の栽培を始めたのです。そうした活動が農家のみなさんの作付へとつながっていったのだと思います。
現在、水稲を約8ha、肥育牛700頭、繁殖牛400頭を経営しています。転作は大豆、裏作は小麦です。管内の嘉島町は、全国的な土地利用型農業のモデル的な存在で、最近500ha近いメガ集落法人も立ち上がりました。
◆多面的機能に助成の拡大を
――日本の農業は、これからどのような方向に進むべきで、それに必要な政策はなんでしょうか。
日本というより、世界的にもそうだと思いますが、農業の持つ多面的機能への思い切った助成だと思います。米ではゲタとナラシの政策の一層の充実です。
国は日本の農業に対して規模拡大・コスト低減を唱えていますが、現場と大きなギャップを感じます。米は平地だけでなく、中山間地でも作っているのです。そこで規模拡大をという国の意図が理解できません。本当にコスト削減するには、思い切った基盤整備が必要でしょうが、現状を考えると、コスト削減できるところは限られます。
さらに問題は、仮に大きく削減された土地改良の予算を復活しても、自作農家が減り、小作農家が増える中で、だれがその費用を負担するのでしょうか。他人の田んぼにカネをかける人はいません。
従って多面的機能に政策をシフトする必要があり、これからそうせざるを得ないでしょう。後継者が育たない現状をしっかり検証してもらわなければなりません。農村・中山間地域を守る農業者が安定した持続可能な農業経営ができる政策確立が必要です。
――後継者を育てるポイントはどこにあるのでしょうか。
若者が夢と誇りを持てる農業の実現です。それには、自分の親が農業で収入が得られるようにすることが重要です。ヨーロッパ型の戸別所得補償制度を導入すべきだと思います。民主党の時のような中途半端な補償ではだめです。15年前、4兆円だった農林予算がいまは半分の2兆円強です。当面、4兆円は最低ラインだと考えています。
――TPP大筋合意の内容をみると、多くの品目で、関税の引き下げ、あるいはゼロになっています。JA管内で盛んな園芸・畜産の将来をどうみますか。
最終的にはすべてゼロ関税となっています。今になって、なぜゼロかという思いを持つ人もいますが、TPPはもともと関税撤廃をめざしたもので、国がきちんと情報を出していなかったことが原因だと思います。
野菜農家などに対して、早くから加工品の輸入に関税がかかっていることを説明し、理解を得るようにしました。こうした情報の伝達が、熊本県のTPP交渉の反対運動の盛り上げにつながったと考えています。TPPが締結されると、特に野菜のすそものの価格が下がるのではないでしょうか。
いま肉は国内で不足しており、その分が輸入で入ってくることになります。そして関税撤廃は、補助事業の重要な財源である関税収入をなくします。予算獲得を含め、まずその対策を考える必要があります。さもないと、関税が下がるにつれて農家はふるいにかけられ、減っていきます。
現状で肉が不足しているのに畜産農家が減り、そして生産量も落ちる。このことは事前に分かることです。国は責任を持って農家を守る義務があり、農家はそれを受ける権利があると考えています。
一つの方法として、抵抗のある産地があるかも知れませんが、牛は肉でなく、子牛で輸入したらどうでしょうか。粗飼料生産など、国内の農家の仕事が生まれます。そうでないと、土地利用政策が吹っ飛んでしまいます。一度検証する必要があります。
――政策面など、これからJAグループとしてどのような取り組みが必要でしょうか。
なによりもJAグループの結束力を高める必要があります。単協は単協なりに頑張っていますが、いまの政府のスタイルをみると、これまでのような政策要求は通りづらくなるでしょう。TPPの重要品目についての国会決議も守れないような状況では、選挙制度の改革も含め、官邸の力を少し弱めないとどうしようもないように感じます。
JAグループは、強い意志をもって臨まないと、だんだん隅っこに押しやられてしまいます。農協改革とTPPでここまでやられて、いま以上に結束を強めないとますますやられます。
◆ 理事の半分が認定農業者に
――農協の自己改革についてはどう考えますか。
九州は生産農協が多いので、政府が指摘するような問題はあまりないと考えています。理事枠についても、名誉職と考え、まわり順番に選ぶようなことではだめで、担い手などを中心にやってもらいたいと思っていたところです。すでに多くのJAで理事の半分くらいが認定農業者になっています。うちのJAも平均年齢が50歳代です。若い農業者の理事が増えています。
――大口利用者や法人対策はどのようにしていますか。
大口対応が必要だといいますが、それは好ましくありません。それをやるなら全員に対応すればいい。なぜ大口だけに対応しなければならないのでしょうか。
――規制改革会議などで、信用・共済の分離が取りざたされていますが。
信共分離は明らかに間違っています。利益は農協の事業トータルで考えるべきで、職員の半分以上を信用・共済部門に張り付けているというのならともかく、260人のうち営農、購買、金融共済でそれぞれ3分の1づつです。金融共済だけで利益をあげているのではないのです。今回の改革は、理屈が分かっていない人の考えです。
◆合併時の目標 200億円に自信
――地域農業のビジョンを聞かせてください。
最低でも今の水準の生産を今後も維持したい。現在、農協の販売高は約80億円ですが、合併当初の目標は100億円でした。実現のための線路は敷いたつもりです。次期3か年計画で、あと20億円積み上げるための振興策を練っているところです。自信はあります。
――職員や組合員農家には、どのようなことを望みますか。
職責を果たし、やりたい仕事をきっちりやるように言ってきました。職場の雰囲気も明らかに変わってきています。若手農家には、農業労働者ではだめ、農業経営者になってくださいと常に言っています。
――普段、心掛けていることは何ですか。
「何事にも一生懸命」。これを座右の銘にしています。これまでも目いっぱいやってきました。農協も少しづつ変わってきました。もう少しやって実績を残したいという思いもあります。
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