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JAの活動:今村奈良臣のいまJAに望むこと

第32回 「JAにおける業務用野菜ビジネスへの挑戦」―仲野隆三 JA‐IT研究会副代表委員による講義のつづき―2017年10月15日

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今村奈良臣・東京大学名誉教授

 業務用野菜取引にはJAは全般的に遅れをとっているが、いまなにをなすべきか、という課題に取り組むためには、まず、業務用野菜取引の基本をしっかり学んでおかねばならない。そのうえで、全力をあげて実践に取り組もう。

(I)実需者からみた加工業務用と家庭消費用の違い-(品質・内容からみて)

〔家庭消費用〕家庭消費用は(1)外観等を重視し、鮮度を重視する。
〔加工用〕用途別に多様であり、(1)カット、冷凍原材料用では加工のため歩留りを重視=大型規格、(2)加熱調理用では水分含量の低い品種を重視、(3)ジュース原料は製品としての色、食味等を重視、合せて鮮度を重視する。
〔業務用〕用途別に多様であり、(1)調理・加工歩留りを重視=大型規格、(2)加熱・調理用では水分含量の低い品種、(3)外食・中食等の煮物用では煮崩れしにくい品種等を重視、あわせて鮮度も重視。
(2)出荷形態
〔加工用〕バラ詰め、無包装、通い容器、ダンボールなど
〔業務用〕バラ詰め、無包装、通い容器、ダンボールなど
〔家庭消費用〕袋詰め、小分け包装、ダンボール、
などの違いがある

(II)事前に販売先を確保した生産出荷による収益の安定をはかることが基本である。収益の安定を図る有効な手段は次のようなことがあげられる。
 
 (1)事前に販売先を確保してから作ること、すなわち「契約取引の導入をはかることである。」そのポイントは実需者の用途別ニーズをしっかりと把握し、播種前に『品質、内容、規格、数量、価格、出荷時期等』を決定し、売り先を確保したうえで計画的な生産と出荷を行うことである。
 (2)出荷時に契約当事者が目揃い会などを通じて相互の意思疎通を図ることである。
 (3)「契約取引」は産地の営業力(販売力)の強化と裏腹の関係にあり、加工・業務用に向けたマーケティング担当者の育成や専門部署の設置による対応はもとより、産地側がコスト意識を明確に持つことがなによりも重要である。
 (4)さらに、実需者ごとに、多様な品質・規格・契約内容などへの対応が求められることから、それに対応できる生産者の育成や、そのグループ化(小グループ単位)や実需者別のグループ化も考慮しなければならない。
 (5)ただし、「契約取引」にはメリットがある一方、契約内容の遵守(つまり供給責任)が求められることに留意する必要がある。

 以上のことを考えるうえでのポイントは、生産者やJA担当部署に契約取引の約束事項を明確に浸透させることが決定的に重要である。
 さらに、経営安定化の観点から「契約取引」を継続させるため、様々なリスク軽減措置を考えておくことも重要である。過不足の調整への対応として産地内部ならびに中間業者との連携のあり方として次のような取り組みが考えられる。

 (1)余裕作付、つまり契約数量の2割増程度の実施と過剰分の販路ならびに出荷調整
 (2)販路の多元化による受注数量への対応、とりわけ、直売所、あるいは家庭消費用等を含む多様な販路の確保
 (3)中間事業者との連携による多元的な販路の確保、などである。

〔III〕大型規格栽培による単収増による収益の向上をはかる

 (1)加工業務用野菜は、家庭消費用に比べて一般的に取引価格は安価である。このため家庭消費用と同じ作り方をしていたのでは産地側のメリットは少ない。カット野菜や冷凍原料野菜などの生産において家庭消費用よりも大型規格の栽培により単収向上をはかり、単価の安さを単収増加でカバーできるようにしなければならない。
 (2)第2に用途やニーズをしっかり把握して、それに適した品種や規格(例えば大玉化、大株化など)により、多収生産技術の開発-例えば、在圃性の高い品種等の選定、株間の取り方や施肥設計などの栽培方法-や省力機械化栽培技術体系等の確立と普及など、多面的に考え、着手する必要がある。

 そのためには、(1)種苗会社との連携、(2)各種栽培実証試験(省力化機械化技術体系など含む)の実施と普及、(3)産地と実需者とのマッチングセミナー等の活用(毎年実施の必要あり)などがあげられる。

(IV)産地リレー出荷による周年供給体制(サプライチェーン)の確立

 加工・業務用野菜の実需者は、量販店などの小売企業に比べて周年安定供給に対する要求が強いといえる。しかし、この要求について一つの産地だけで対応するのは困難であり、他産地と連携したリレー出荷体制の構築が求められているといえる。
 産地間の連携により、輸入品が入り込む余地がないような、年間を通じた国内野菜の安定供給を図らなければならない。そのためにはリレー出荷体制の実施にあたっては特に中間事業者などのコーディネート(調整役)機能との連携が有効である。そのシステムを図解しておけば、次図のようになる。ここで、特に重要なのは、産地と中間事業者の関係であり、カット加工業者への安定供給が実現される。

出荷体制の図(サプライチェーン=供給連鎖)

〔契約締結時の留意点〕
 (1)価格、(2)数量、(3)品質・規格、(4)契約終了、(5)リスク負担の5点について正確に留意しておかなくてはならない。

 (1)価格:価格設定は、固定型、一定範囲内変動型、相場関連型などがある。業務用はメニュー価格が決まっているので固定型が一般的である。
 (2)数量:契約数量は通期の数量だけでなく、週別、日別数量についても出荷計画を決めておく。業務用は一定範囲内での変動はやむをえない。豊凶時でも実需者・生産者はしっかり契約を履行することになる。長期貯蔵のジャガイモ、タマネギ等は保管責任も決めておく。
 (3)品質・価格:出荷団体、生産者と実需者の間で綿密な事前調整が必要である。出荷団体・生産者と実需者、それぞれにとってベストの品質、規格ではなく、許容限界を提示して調整することが重要である。
 (4)契約終了:契約期間の終了時点で、契約数量が全量履行されておらず、倉庫や圃場に在庫が残った場合の取扱いを決めておくこと。
 (5)リスク負担:産地が凶作等により契約数量が出荷できなかったとき、誰がどこまで責任を負うのか、契約前に決めておくことが肝要。出荷団体・流通業者側が、卸売市場で調達して供給責任を果たす場合に、実需者側がどの程度負担するのか、あらかじめ調整しておくことが重要である。

〔むすびと提言〕
 以上のような、業務用野菜ビジネスをめぐる基本問題と課題について、仲野隆三氏はていねいに話されたうえで、最後に「営農指導の力を発揮して『食産業との契約取引』の推進に全力を」と仲野さんのJA富里市での過去の貴重な実践と経験を踏まえて話された。その要点を紹介してむすびとしたい。
 「加工・業務用野菜への私の取り組みは組合員の『経営安定の視点』を強く意識して始めたものであった。一般にJAの営農経済事業は『共販意識』が強い。そのため個々の経営体の先進的モデルが育ちにくい。そこで、新しい波として興ってきた実需ニーズを全力をもって組合員に伝え、経営実証圃を設置するなどリスクをJA(富里市農協)が補い、新たな取引の典型方式をJA管内に広めることで組合員の意識と行動を大きく変えることができた。それがJA富里市で確立していった『加工業務野菜取引』である。全国各地のJAもこうした努力と活動をして組合員へ新しい道を示しつつ活力を発揮するように努めてもらいたい。なお、カット野菜需要に対応して、遅まきながらもJA全農もキユーピーと資本提携し、さらに全農県本部もカット野菜等への投資を進め会員JAへの支援をやっと拡大してきている。
 課題はJA自身が加工・業務用需要(消費)に対応しているかであるが、平成17年から野菜ビジネス協議会でセミナー等開催しているものの、参加者は農業法人や、仲卸、全農・県連などでJA関係者はいまだに少数だ。12年が経過しているが当初からの参加者のノウハウや知識は目を見張るものがある。是非ともJAの地域を興したいという志しを持った若い皆さんの参加を願いたい。」以上のような貴重な提言を提示していただいた。

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