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シリーズ:今村奈良臣のいまJAに望むこと

【今村奈良臣・東京大学名誉教授】

2018.12.15 
【今村奈良臣のいまJAに望むこと】第72回 JA―IT研究会 第50回記念公開研究会の紹介と講話ならびに討議(Ⅱ)一覧へ

 代表あいさつ

今村 奈良臣

 本日は秋の収穫や行事などで御多忙のなか、多数の皆様の御出席を頂き、心からお礼を申し上げます。只今からJA―IT研究会の第50回記念の公開研究会を開催致します。私は代表を創立以来つとめている今村です。開会にあたり、この50回の歩みを踏まえ、一言、ごあいさつを申し上げます。

 

 JA―IT研究会の発足

 JA―IT研究会は、2001年9月、今からちょうど17年前、世界文化遺産であり国宝にも指定された富岡製糸場のある、群馬県のJA甘楽富岡の本館で産声をあげました。
 このIT研究会の発足の前に、生糸とコンニャクの貿易自由化が実施され、JA甘楽富岡の売り上げは、自由化前には約83億円あったものが、一挙に約10億円に激落したという惨状を呈しておりました。つまりJA甘楽富岡は破産状態に陥っていたと言っても過言ではありません。
 こういう苦境の中で、JA―IT研究会の副代表をされることになった黒澤賢治さんがJA甘楽富岡を立て直し、地域農業に新しい生命力をふき込むためにJA甘楽富岡の営農事業本部長として奮斗されている姿に胸を打たれ、JA―IT研究会を設立し、多面的な研究を推進し、全国の経験や実践に学びJAの活性化に寄与しようと決心し、JA―IT研究会の代表を引き受け、発足することになりました。

 

 〈P-Six理論の実践を〉

 研究会発足の前、私はJA甘楽富岡に足を運び、黒澤賢治営農事業本部長が苦境から脱出すべく推進していた「鏑(かぶら)の里営農振興計画」の計画書とその計画に沿った実践の姿をつぶさに調査させていただきました。「鏑の里」というのは、この地域を貫流している鏑川のことで、この計画のすばらしく充実した中味とその推進、実践に当っている組合員の姿に感銘を受けるとともに、農協組合員の老若男女の皆さんが、目を輝かせて多彩な現場で生糸とコンニャクからの脱却を目指し、新しい野菜産地へ変わろうと推進している姿に胸を打たれました。
 こうした実態調査の中から、私が理論的に集約し、整理して、JA―IT研究会を通じて全国のJAの皆さんに考え、かつ実践、推進して頂こうと考えたのが、1図に示したP-Six理論です。この図を中心にJA―IT研究会の創立大会で記念講演しました。
 この図で、(1)JAの使命(ミッション)、(2)農協の進むべき目標(ビジョン)を明快に示そうとしたわけです。
 このP-Six理論をJAとしてどのように、そしてどこから取り組むべきか。
 具体的・実践的には
 (1)各JAの営農指導あるいは営農企画部門を核に
 (2)販売戦略、販売戦術を明確に打ち出し、
 (3)組合員・生産者のエネルギーを燃えあがらせ
 (4)そのうえで消費者・国民に愛され親しまれ、身近に思われる農協をいかに実現するか。さらに、それらの実現のためには
 (1)人材をいかに発掘し、活かすか、つまりやる気を起こさせるか
 (2)マネジャー、リーダーをいかに見出し、活かすか
 (3)自らのJAの拠って立つ立地特性をいかに生かすか
 以上のようなことを第1図で明快に示したつもりであり、この6角形の各辺をいかに満点に近づけるか、全力をつくしてもらいたいと説いた。

P-six理論

今夏はサッカーのロシア大会で、日本は残念ながら初期の成績をあげられなかったが、サッカーでの勝利の道をJAも学び、実践してもらいたい。
 サッカーでは、周知のように、点を取る使命をもつフォワード、試合を有利に組み立てるミッド・フィールダー、そして万全な守備のためのバックス、さらに失点を許さないゴールキーパーの11人で構成されている。これをJAに例えれば、陣形でもっとも重要なミッドフィールダーは営農企画あるいは営農指導部門に当たる。いかなる農畜産物を生産し、確実に供給するか。フォワードは販売部門に当たり、いかに多彩な市場を通じて有利に販売し、組合員・生産者の希望に応えるか。さらにバックスは、信用、購買、共済などの部門に当たるが、とくに購買や信用部門は単に守るだけでなく、組合員の必要とする資材、肥料、資金などを適切に供給する任務をもつ。ゴールキーパーは決して失点を許さない管理部門に当る。
 こういうサッカーの陣型を思い浮かべつついかに失点を防ぎ、大量の得点を稼ぎ出すか、これがいまJAに求められているのである。しかし、これだけではない。勝利のためには、熱烈なサポーターが多数いることが必要だ。強いチームには必ず多彩なサポーター、それも女性の多いことが特徴だ。JAで言えば、准組合員、女性組合員、さらにJAを応援してくれる消費者がいかに多いか、ということがJAチームの勝利の道でもある。このことを胸に秘めて明日から頑張って頂きたい。

P-six理論 

〈サッカーで勝つための戦略・戦術をJAも実践しよう〉

 なお、第50回記念大会に出席して頂いた、日本農業新聞論説委員の緒方大造氏によって、日本農業新聞10月26日付1面のコラム「四季」に書かれたので、許可を得てここに転載させていただく。(緒方さんは、出身地が私の生地の大分市の近くで、昔からの友人です)

 

◇          ◇

 

 辛口のご意見番が少なくなっちゃった。空気を読み、当たり障りのないことを、さも深刻そうにしゃべる。中身がない分、権威をかさに着る。そんなおエライさんが目につく▼だから久しぶりに「今村節」を聞いて胸のつかえが下りた。今村奈良臣さん。東大名誉教授にして農政のご意見番。現場主義で「6次産業化」の生みの親でもある。JA営農経済事業を強く育てる「JA―IT研究会」の代表を長年務める。その研究会が先週50回の節目を迎えた。「天皇陛下と同じ年なんだから、もう引退したいよ」。ぼやきと裏腹に意気軒高である▼自己改革に取り組むJAに話が及ぶと、舌鋒(ぜっぽう)はいや増す。「今の農協は野郎ばかりが威張っているからダメなんだ」。いい組織は女性を大事にすると。この話を女性部の集まりで披露すると、皆さんから拍手が起きる▼先生はたとえ話もうまい。JAをサッカーチームに見立てる。守りが金融・共済など。中盤は営農企画。前線は農畜産物販売部門。中盤がゲームを組み立て前線にパスを供給し、農業所得というゴールを狙う。その連動性こそ総合事業だと教える▼そして選手を支えるのが准組合員というサポーター。単なる応援団ではない。ともに試合を戦う12番目の選手たち。今村流チーム作りにJA自己改革の神髄を見る。

 

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