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JAの活動:女性協70周年記念 花ひらく暮らしと地域

【花ひらく暮らしと地域―JA女性 四分の三世紀(最終回)】男女共同参画社会へ<下> 試されている本気度と勇気2022年5月20日

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「国破れて山河あり」と言われた飢餓の夏から、コロナ禍を乗り越えて新しい時代に挑むこの春まで76年。その足どりを、「農といのちと暮らしと協同」の視点から、文芸アナリストの大金義昭氏がたどる。その最終回にあたって男女共同参画社会の実現に向けた提言を認(したた)めてもらった。

■数値目標掲げ漸進するが

JAグループが男女共同参画の数値目標を掲げたのは、平成12(2000)年秋の第22回JA全国大会だった。JAが男女共同参画推進方策を策定し、3年後の平成15(2003)年度末までに女性の割合を全国平均で①正組合員25%以上②総代10%以上③合併JA理事2人以上に引き上げるべく取り組むことになった。

その背景には、前年の平成11(1999)年に相次いで公布・施行された男女共同参画社会基本法や食料・農業・農村基本法がある。いずれも「男女が社会の対等な構成員としてあらゆる分野における活動に参画する機会を確保する」よう求めている。これらの法律が成立するまでには、国の内外で女性の地位向上を目ざす息の長い活動が重ねられてきた。わけても国連を中心にした世界の潮流が、国内の動向に大きな影響を与えている。

昭和50(1975)年の「国際婦人年」に続く「国連婦人の10年」には女子差別撤廃条約(昭和54〈1979〉年)が国連で採択される。国内でも男女雇用機会均等法(昭和60〈1985〉年)が成立し、同条約を批准。平成3(1991)年には育児休業法が、その翌々年にはパートタイム労働法などが成立している。平成6(1994)年6月には総理府に男女共同参画室が設置される一方、前年には国連が「女性に対する暴力撤廃宣言」を採択している。

これら一連の取り組みを後押しするように、「国際婦人年」を機にスタートした世界女性会議がメキシコ・シティーからコペンハーゲン、ナイロビ、北京と続き、地位向上を願う女性の熱気や熱意を世界に広めている。

しかし法・制度が整備されても、国内の動きははかばかしくない。JAグループも例外ではなかった。第22回大会決議は「笛吹けども踊らぬ」様相を呈した。数値目標が引き上げられ、①正組合員30%以上②総代15%以上③JA理事等15%以上に更新されたのは、平成31(2019)年春の第28回大会になってからだ。この間に19年を要し、翌年の実績ではそれぞれ①22・7%②9・8%③9・1%(1419人)にとどまった。

この進捗(しんちょく)度が速いか遅いか。見方はさまざまだが、農業構造の変化や少子・高齢化の加速、JA組合員総数の減少などを鑑(かんが)みれば、隔靴掻痒(かっかそうよう)の感を免れがたい。何故なら、女性の運営参画なくしてJAの本質的な「自己改革」はあり得ないからだ。

世界の潮流も隔靴掻痒の感

■埋まらないジェンダー・ギャップ

知られる通り、JA女性組織はこの間におびただしい数の部員減少に見舞われている。近年の部員数およそ49万人は、264万人を擁した昭和55(1980)年当時の2割程度に落ち込んでいる。農業就業人口や基幹的農業従事者の減少、高齢化や世代交代などの怒涛にのみ込まれたせいもあるが、主体的な要因はそうした事態にJAが深刻な危機意識を抱いてこなかったことが挙げられる。

JAを蔭(かげ)ひなたなく支えてきた女性部員数の激減は何を意味するか。女性のJA離れが急激に進んできたということだ。それは何故か。女性の自己実現にとって、JAが必ずしも魅力ある団体とは言えないからだ。女性のJA運営参画数値を見れば明らかだ。男性がJAの組織・事業・経営を一人占めにしてきた実態がある。

「JAが変わらなければ女性組織も変わりようがない」

これは『JA女性組織の未来~躍動へのグランドデザイン』(令和3〈2021〉年6月・家の光協会)の中で編著者の石田正昭が指摘している言葉だが、JAが変わらなければJA女性組織の部員減少も止まらない。言い換えれば、女性のJA離れは止められない。 JA女性組織の衰退は、JAの近未来を占う予兆と見なすこともできる。

石田が唱える通り、「ジェンダー平等の立ち遅れ」は言うまでもなく、さらに深刻なのは、JAにもJA女性組織にも事態に身を挺(てい)した「当事者意識」が欠けていることだ。JA女性組織は何のためにあるのか。先人がいばらの道を切り開いて築き上げてきたミッションとも言える「綱領」や「五原則」に照らして、その存在理由を検証し、JAぐるみで外に開かれた事業・活動を果敢に展開しない限り、JAもJA女性組織も日を追って求心力を失いかねない。

社会的評価が低いために、諸外国の女性に比べてこの国の女性の自己評価が著しく低いことが、家の光協会の国際比較調査『農村女性に見るお国柄の違い』((平成11〈1999〉年~13〈2001〉年)から明らかになったことがあった。

地位向上や男女共同参画の掛け声が、女性には「遠くに聞こえる祭囃子(はやし)」のように「ひとごと・よそごと」に終始してきたきらいはないか。笛吹けど腰重くして踊らない男性と、遠くで鐘が鳴るように受け止めてきた女性との関係が、この間の進捗度を決めている。

JAグループが数値目標を掲げて20余年。確かに漸進はしている。しかし、男女共同参画社会基本法に基づく政府の第5次基本計画(令和2〈2020〉年12月)は、次のような「202030目標」を掲げている。

2030年代には、誰もが性別を意識することなく活躍でき、指導的地位にある人々の性別に偏りがないような社会となることを目指す。そのための通過点として、2020年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合が30%程度となるよう目指して取り組みを進める。

■逆転の発想で「農力」発揮を!

人口減少社会に突入し、国内農業を担う人的資源が減少していく中で、農業は農畜産物貿易自由化政策などに見舞われ、衰退の一途を余儀なくされてきた経緯がある。その結果、カロリーベースの食料自給率が37%にまで落ち込んでいる。こうした局面から不死鳥のように脱出するにはどうすればよいのか。農業の基本的価値を生かした「農力」発揮のためには、「制度疲労」に陥っている男性ひとりの力ではどうにもならない。男性が主導してきた70余年の戦後農業・JA史が、それを立証している。

JA率先が要男性の役割も

男性はその責任を痛感すべきである。どうするか。JAが他団体などに比して格段の男女共同参画に挑戦し、女性が存分に活躍できる環境・条件を整え、男性に伍して活躍する女性を急ぎ育てることだ。これは楽しい取り組みになるだろう。男性がサポーターに回り、女性がプレイヤーに回ってもよい。そのくらいの「逆転の発想」が必要だ。いのちを育む農業の多面的で豊かな底力をJAが引き出す方策はそれ以外にない。

責任ある立場で、女性もそうしたチャンスに立ち向かう能力や行動力を養うべきだ。JAとJA女性組織との関係はそのためにある。JAグループにあって女性の熱気や熱意を、女性の優れた潜在力を引き出せる男性がどのくらいいるか。「女心(おんなごころ)」や女性のパワフルな行動力を喚起できなければ、輸入農畜産物があふれ返る中で国内農畜産物のマーケティングもマーチャンダイジングもあり得ない。市場は女性が制しているからだ。

女性職員の管理職登用も欠かせない。令和2(2020)年12月のJA全中報告によれば、JAにおける「課長職以上の女性管理職比率は9・42%」で係長以上が18・6%、課長以上が10・5%、部長以上が4%。これを厚労省調査による「従業員300~999人規模の企業」と比較すると、JAが数%上回っており心強い。しかし、男女共同参画には程遠い。

世界経済フォーラムが毎年発表している「ジェンダー・ギャップ指数2021」によれば、この国は調査対象国156カ国中の120位と、先進国でも最下位を低迷したままだ。JAこそ、こうした現状を突破する先鋒の役割を果たしたい。それでこそJAの未来が花ひらき、無限の可能性が広がっていく。新自由主義が跋扈(ばっこ)する現代において、JAが協同組合として生き残る、これは組織・事業・経営のサバイバル戦略だ。

男性がいつまでも「固定的な性別役割分担への無意識な思い込み」に囚(とら)われた「旧世紀の遺物」であってはならない。女性のスモール・ビジネスから始まった農業の「6次産業化」も、いま叫ばれているSDGs(持続可能な開発目標)も、男女の新しい共同参画関係によって加速する。

「古きをたずねて新しきを知る」という言葉はすでに遣ってしまっているが、このシリーズの最後に、農林省が都道府県知事宛てに発信した「婦人の農業協同組合活動の推進について」に掲げる特記の一端を紹介する。昭和27(1952)年11月28日付の「27農経局第796号」通達だ。

①積極的に婦人の組合加入を奨励し、これを阻止するごとき動向は排除すること。

②婦人の故をもって役員就任を阻止するごとき動向に対しては極力これを排除し、役員として組合運営の能力ある者は婦人といえども男子組合員と同じくこれに就任しうる自由を確立すること。

女性に「組合運営の能力」がないという論は成り立たない。百歩譲ってそうだとしたら、そうさせてきた責任は男性にある。

季節が一巡し、早苗田が広がっている。(おわり)

花開く暮らしと地域_15回(最終回).jpg

(文芸アナリスト・大金義昭)

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