JAの活動:今さら聞けない営農情報
土壌診断の基礎知識(11)【今さら聞けない営農情報】第241回2024年3月16日
みどりの食料システム法の施行によって国内資源を活用した持続型農業への転換が求められ、国内資源の有効活用に期待が高まっています。作物が元気に育つためには、光、温度、水、空気に加え、生育に必要な栄養素を土壌から吸収しますが、作物が健全に生育するには土壌の健康状態を正確に把握することが必要で、そのために土壌診断があります。現在、本稿では土壌診断を実施して土壌の状態を知り、正しい処方箋を提示するために必要なため、土壌診断の基礎知識の1つとして土壌診断項目の内容と意義について紹介しています。今回は、リン酸の続きです。
リン酸(P)は、酸性土壌では「リン酸の固定」が発生しやすくなり、せっかく施用しても作物に吸収されないものが多くなります。これは、土壌の種類によって起こりやすさが異なり、鉄やアルミニウムを多く含んでいる黒ボク土などの火山灰土は特にリン酸の固定力が高い土壌です。
このような土壌では、ゆっくり効くタイプのリン酸肥料である「ようりん」が使用されます。なぜなら、「ようりん」は「く溶性リン酸」といって、作物の根が出す有機酸によって溶けて作物に吸収されるタイプのリン酸質肥料であり、く溶性リン酸自体は土壌の水分に溶けにくいことから、鉄やアルミニウムが多い黒ボク土に施用されてもリン酸固定が起こりにくい性質を持っているからです。
前回、この「く溶性リン酸」のことを作物に利用されにくいリン酸の1つとして紹介しましたが、正確には通常の状態では利用しにくく、作物の根が出す有機酸の存在があって初めて作物に利用できる「リン酸」になるという意味です。言葉足らずをご容赦下さい。
このリン酸が上手に利用されるかどうかを示す数値としてリン酸吸収係数があります。これは、土壌がリン酸を固定する程度を示す数値であり、この数値が高いほどリン酸の固定力が高く、せっかく施用したリン酸肥料が作物に利用されにくいことを示します。このため、黒ボク土では、リン酸が固定される以上にリン酸肥料を追加しなければならなくなります。
これに対し、作物に吸収されやすいリン酸のことを有効態(可給態)リン酸といい、地力増進基本指針で水田であれば10mg以上/乾土100g といったように有効態リン酸の目標数値が定められているので、これに達するようリン酸肥料の施用量が調整する必要があります。この時、リン酸肥料の適正な施用量を決めるための指標として、土壌診断ではこの有効態リン酸の値を計測しています。
◇ ◇
本コラムに関連して、ご質問や取り上げてほしいテーマなどがございましたら、コラム・シリーズ名を添えてお問い合わせフォーム(https://www.jacom.or.jp/contact/)よりご連絡ください。
重要な記事
最新の記事
-
【特殊報】シキミ、カンキツにチュウゴクアミガサハゴロモ 県内で初めて確認 宮崎県2025年11月6日 -
【注意報】野菜類・花き類にチョウ目害虫 県内全域で多発のおそれ 埼玉県2025年11月6日 -
米の生産費高止まり 60kg1万5814円 24年産米2025年11月6日 -
栗ご飯・栗タマバチ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第363回2025年11月6日 -
輸出の人気切り花スイートピー生産の危機【花づくりの現場から 宇田明】第72回2025年11月6日 -
運用収益が改善 期初計画上回り給付還元財源を確保 JA全国共済会2025年11月6日 -
熊本県の大雨被害に災害見舞金を贈呈 JA全国共済会2025年11月6日 -
千葉県から掘りたてを直送「レトルトゆで落花生 おおまさり」販売開始 JAタウン2025年11月6日 -
「たすけあい story エピソード投稿キャンペーン」 公式X・Instagramで募集開始 抽選で特選ギフト JA共済連2025年11月6日 -
東京育ち 幻の黒毛和牛「東京ビーフ」販売開始 JAタウン2025年11月6日 -
GREEN×EXPO2027まで500日 横浜市18区で一斉の取り組みで機運醸成2025年11月6日 -
オンライン農業機械展示会「オンラインEXPO 2025 WINTER」を公開中 ヤンマー2025年11月6日 -
第6回全社技能コンクールを開催 若手社員の技術向上を目的に 井関農機2025年11月6日 -
兵庫県 尼崎市農業祭・尼崎市そ菜品評会「あまやさいグランプリ」9日に開催2025年11月6日 -
静岡・三島でクラフトビール×箱根西麓三島野菜の祭「三島麦空」開催2025年11月6日 -
森林・林業業界の持続的価値創出へ「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」実施 森未来2025年11月6日 -
ホクトのエリンギ プリプリ食感になって26年振りにリニューアル2025年11月6日 -
豆乳生産量 2025年度7-9月期 前年同期109% 日本豆乳協会2025年11月6日 -
鳥インフル 米イリノイ州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年11月6日 -
鳥インフル 英国からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年11月6日


































