JAの活動:農協時論
【農協時論】農業を未来に 市民皆農体験で感謝の念醸成を JAはが野総代・猪野正子氏2025年11月20日
「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならいのか」を、生産現場で働く方々や農協のトップの皆様などに胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回はJAはが野総代の猪野正子氏に寄稿してもらった。
JAはが野総代・猪野正子氏
秋の収穫が終わると、大地はひとつの役割を終える。
菜の花が咲き始めると、あちらこちらからトラクターが出動し、耕起した田んぼが広がる。水路から田んぼに水が入ると代かきが進み、大地に命が吹き込まれる。5月になれば田植えだ。稲の苗がすくすく育ち、田んぼを吹きぬける緑の風が人びとの心を癒やす。季節が巡り、黄金の稲穂を刈り込むコンバインは頼もしい。
四季折々のこんな田園風景が農業者や消費者の心をなごませる。かつてはどんな作業も手仕事だった。そんな時代の苦労が今は想像もできない。汗と涙の毎日の積み重ねから、お互いが助け合う「結」も生まれた。農にまつわる食文化といえば「さなぶり」のぼたもちや「十五夜お月見」のけんちん汁など先人たちは辛さを忘れ楽しみをつくり出し、仕事に励んだ。それが少しずつ機械化されたり現在の農業の姿に変わってきた。先人たちが諦めずに伝え続けてくれたからこそ、今があると私はつくづく思う。
大地を守り、次世代に託すことは、自分の住む地域を守り、さらには地域を超えてこの国の「食料安全保障」や「景観保全」「多面的機能」につながることを消費者の皆さんにもぜひ理解していただきたい。
農村社会でも、「男女共同参画」がかなり浸透してきたが、それでも未だに「主人に言われた作業をしていれば楽だからいいの」という女性もいる。指示通りに、自分の意見も言わず、ただ動かされている人がいる。
一方では様々な集まり(JA女性会や生活研究グループなど)やセミナーに参加し、学ぶ機会にチャレンジしている女性たちも多い。彼女たちはスポンジが水を吸い込む勢いで情報を吸収し、自分なりの「気づき」(発見)を手にし、家業の農業経営に夫と対等で話し合う発言力を身につけてきた。ただ言われたままに動くのではなく、自ら考えて行動することが出来れば、経営向上にも大きく貢献できる。
またJA理事会や農業委員会でも女性登用が全国的に進んでいる。改選のたびに女性たちが数多く選出されてきた。選ばれた役割を受けたら、女性たちは「覚悟」をもって役に挑戦してほしいと思う。女性がその役割を手にするために、どれだけ多くの仲間たちの応援があったかを忘れてはならない。
頑張ってきた女性たちの「至誠」が認められ、昨今ではまれにJA組合長や常勤役員、農業委員長などの役職を務める女性たちが登場しており、大変心強い。男女が共に活躍出来る環境条件を整えている地域は活性化、また、後継者も多い。農村社会では、認め合い支え合うことがとても重要だ。
昨年来の米価高騰で日本中が大騒ぎになった。「令和の米騒動」として語り継がれるだろうが、どれほどテレビや新聞の報道に振り回されてきたか。なにが本当かを理解することにも混乱が生じた。
現場での現実には、机上の論議では計り知れないことがある。この秋、農水大臣が交代し、米政策もたちまち増産から減産へと転換が語られている。これでは安心して米の生産に取り組めない。生産現場に説得力のある政策の展開なしに地域の農業は守れない。「猫の目農政」という言葉があるが、農政がくるくる変わるようでは全くたまらない。「令和の米騒動」をきっかけにぜひともこの言葉を「死語」にしてもらいたい。
田んぼで、泥にまみれて苗を植える「田植え体験」は、子どもたちだけでなく大人はもちろん政治家の皆さんにも経験してほしい。そうすれば、米一粒に対する感謝の念がご飯を食べるたびに思い浮かぶはずだ。農に対する心の持ち方を学ぶためにも私は「市民皆農」を呼びかけたい。
農業者も消費者もお互いに理解し合い、日本中に活気と元気が広がり安心して暮らせる農業・農村を未来に継承することが私の願いである。
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