JAの活動:食料安全保障と農業協同組合
【2026新年号】鈴木定幸常陸大宮市長インタビュー 常陸大宮市にコウノトリが飛来する日2026年1月7日
2026本紙新年号は「食料安全保障と農業協同組合」をテーマにした。気候危機や不安定な世界情勢のなか、食料安全保障の確立がいっそう重要となるなか、地域に根ざした農協の役割は農業振興と食料の安定供給にとってますます重要になる。本紙新年号ではこのテーマを軸に政治、行政、学識者にJAトップ層が生産現場を踏まえて聞くインタビューを特集した。鈴木定幸常陸大宮市長には秋山豊JA常陸代表理事組合長がインタビューした。
学校給食に地元産の有機農産物を採り入れ、自らも米作りを手がける常陸大宮市の鈴木定幸市長
米の需要どう創出?
鈴木 米は日本人の主食です。食料安全保障の観点から、国がしっかり後押しすべきです。市場価格が下がるなら、若い農家が就農をめざせるくらい利益が出るような米価に保つべきです。ところが石破政権で「米の増産に舵を切る」という方針が出たのに、高市政権では「需要に応じた生産」に戻ってしまった。これでは年々生産が減り、作り手が減っていくだけだと危惧しています。
秋山 「需要に見合った生産」というのは、転作、つまり田んぼの3割ほどを主食用米以外に回す「生産調整」をすることですよね。
鈴木 余ったら輸出すればいいんです。戦後、アメリカが小麦を日本に売り込むため、学校給食にパン食を導入させた経緯を見ても、国内で十分な量を作って余ったら輸出するのが主食の自給を守る食料安全保障の基本だと思います。
秋山 米輸出を大きく伸ばすのは、価格面で簡単ではありません。ただ、食料不足の国への国際援助なら可能だし、意義が高いと思います。単に増産すれば米が余って暴落し、玄米60kg1万円くらいになるでしょう。収入保険で補償すると言っても、米価が毎年下がれば補償額も下がるため、後継者は辞めてしまいます。
30年先を見た農政
鈴木 保険ではなく、国が直接担保して米価を保証すべきです。
秋山 旧民主党政権が導入した戸別所得補償に近いですね。
鈴木 額は少なかったですが、方法論としては良かったと思っています。
秋山 戸別所得補償は、転作に協力すれば米の方も10a当たり2万円を出すという仕組みで、需給調整がうまくできました。当時米価は安かったものの、農家は収入を確保できた。現在は、10a当たり売上で20万円、玄米60kgで2万円を保証すると言わないと、米農家の離農は止まりません。所得補償を厚くすると大規模化のスピードは落ちますが、中山間地も含め中小農家が残せます。
鈴木 保険会社は損する商品を作らない。だから保険ではなく、国が直接責任を持って米価を保証し、余ったら海外に贈ればいい。きっと日本の銀シャリの虜になると思います。
秋山 逆に国内で足りなくなれば輸入すればいいと言う人もいますが、後進国では飢餓輸出になりかねません。ここ5年で安過ぎた米価のために、米農家は、25%も減少しました。私の集落は140戸で、すでに7割が離農し、受託できる農家は60歳以上の4戸だけです。
鈴木 20年、30年先を見た農政にしないと。若い人が農業で食える状況になれば移住者も増える。私も自分の会社で取り組んでいるのですが、機械さえあれば米作りは少人数でできます。ただ米価が安過ぎて赤字では、若い人も作らない。魅力ある産業にしていかないと。
秋山 賛成です。基盤整備も進めて、1区画3haくらいの田んぼにしたい。区画が小さすぎるとトラクターの旋回が多く非効率です。
鈴木 大規模化したところは慣行農業で収益を上げればいい。有機米は草との闘いもあるため、山あいの田んぼなど、ほ場をあまり大きくしないところで残せばいいのでは。
秋山 同感です。有機農業では除草剤を使えないため、水管理が非常に重要になります。生協などで需要が高まっており、一般米が2万円の時、有機米はプラス1万円の価格がつくこともある。そこで、全農に出す量の半分程度を生協に回すことにしました。
鈴木 中山間地の米づくりではイノシシとの戦いもありますが、イーロン・マスクの工場で作られているような人型ロボットが普及する時代が来るかもしれない。
秋山 AIやロボットの活用は重要です。あとは基盤整備。鹿島コンビナートや横浜港に国家予算を投入したように、久慈川水系のこの地域にも投資して農業団地を造ってほしい。
鈴木 そうは言っても農家はどんどん減っています。このままでは、ほ場が整備されても農家がいなくなり、外資が来て遺伝子組み換えの米を作る、ということになりかねません。それを一番恐れています。
秋山 それは避けたいですね。基盤整備でも有機農業でも日本農民を一戸でも守らなければなりません。
郵政民営化の二の舞、避けたい
「農協は農家の防波堤」と説くJA常陸の秋山豊組合長
鈴木 田んぼの話が広がりましたが、今日のテーマは農協の役割でしたね。
秋山 私は、農協は「農家の防波堤」だと言ってきました。共済と信用で組織を守り、その黒字で農家、地域を守るんだと。
鈴木 郵政民営化の際に取りざたされたように美味しいところは民間大手に取られ、もうからない販売や営農だけ残されたら農協は維持できません。だからそれをさせないことが一番の課題ではないですか。
秋山 その通りです。「信用共済が黒字ならそれでいい」というのでは不十分で、信用共済の稼ぎでどれだけ農業振興できるかが勝負です。JAはかつて国の食料調達に組み込まれていたこともあり、末端を軽視してきた傾向があります。生協のように消費者運動から民主的に組織が作られたのとは違います。もっと現場に力を集中する必要があります。
日本の食は農協が守る
鈴木 まず農協組織を守らないと、守る方から守られる方になってしまう。ところで市内の田んぼでは、カメムシ対策はネオニコチノイド系農薬を使っていないですよね。
秋山 やめました。常陸大宮市だけは非ネオニコの空散でしたが、他の10市町村も非ネオニコにしました。隣の水戸市にコウノトリが来たのは、生態系が戻り、ザリガニ、カエル、クモといったエサが増えたからです。
鈴木 有機の田んぼにしたらカエルは生き延びますからね。常陸大宮市にもコウノトリが来てほしい。
秋山 そろそろ来るのではと期待しています。あとは牛乳もオーガニックに、北海道の先進事例を参考に挑戦し始めました。
鈴木 期待しています。農協がなくなったら、日本の食事情は終わりです。JAグループが連携して頑張るとともに、政治を変えていかないと。食料安全保障の問題で成果を出すには、政治を巻き込まなければ絶対に無理ですからね。
秋山 同感です。私は、国は食文化から立て直すべきと思ってやってるんです。戦後、アメリカの圧力で食べさせられた、あのまずいコッペパンの時代から日本はおかしくなったと思ってますから。
鈴木定幸常陸大宮市長(左)と秋山豊JA常陸組合長(常陸大宮市役所の市長室で)
【インタビューを終えて】
地域を守るには、本気の実践と政治への発言が大事だと思いました。特に農業は他産業や外国との競争に打ち勝つために横・縦の連携が大事です。行政や組合員、住民からの要請に誠実に対応することが必要です。農家の一言も現場を訪ねるとすでに動き出しており、その中でJAに期待する事は、なるほどと思うことがしばしばです。時代の資本主義的な流れが早い中、農民そして住民を守るJAは、大きな使命を感じます。各現場で、運動をおこし連携しましょう。そして縦の運動も。(秋山)
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