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JAの活動:食料安全保障と農業協同組合

【2026新年号】石破茂前首相インタビュー JAと政府、思い一つに2026年1月5日

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2026本紙新年号は「食料安全保障と農業協同組合」をテーマにした。気候危機や不安定な世界情勢のなか、食料安全保障の確立がいっそう重要となるなか、地域に根ざした農協の役割は農業振興と食料の安定供給にとってますます重要になる。本紙新年号ではこのテーマを軸に政治、行政、学識者にJAトップ層が生産現場を踏まえて聞くインタビューを特集した。石破茂前首相には栗原隆政JA鳥取県中央会会長がインタビューした。

【2026新年号】石破茂前首相インタビュー JAと政府、思い一つに

国産米輸出に大きな可能性

栗原 総理の激務、大変お疲れ様でした。まず、食料安全保障分野での実績とやり残された課題からお話しいただけますか。

石破 有事の際、国民が生き残っていくために、水と食料は何よりも必要なものです。その有事の体制を基礎として、国民がいつでも食料を安心して買える体制、消費者が納得できる価格、納得できる質と量の食料を国内で供給できることそのものが、国家の生き残りにとって最大の要件だと思っています。

農林大臣を拝命していた頃、ローマで開かれた世界農業大臣会議に出た際に、当時のアメリカ大統領が「食料自給できない国は独立国ではない」と言ったのをよく覚えています。日本政府として自給率、自給力を上げる努力を真剣にしてこなかったのではないかと、自身も含め、非常に反省をしています。

そういった思いがあったので、首相在任中に、「米増産に向けて舵を切る」と表明しました。生産調整ではなく、米は増産をするという、政府方針の転換でした。

そもそも、日本米の需要は世界にたくさんあるのです。和食の店はものすごく増えています。マクドナルドは世界に4万軒あるそうですが、おにぎり屋はまだ世界に1000軒くらいしかありません。おにぎり屋を世界中に広げるだけでも、米の需要は大きく増えるでしょう。小麦アレルギーの方も多く、米粉パン、米粉ラーメンなど小麦の代替にも需要があります。

奥山が荒れて熊の餌がなくなり中山間地に人がいなくなったことで、本来は臆病なはずの熊が中山間地に出てきて人と遭遇しています。令和7年は、夏は(令和の)米騒動、冬は熊騒動で、ともに農業をきちんと振興してこなかったのが一因だと思っております。

栗原 米の需要拡大は大事ですが、輸出によって国内の分が不足しないような調整が必要ですね。

石破 おっしゃるとおりで、不作の時は輸出しません。世界で食料自給率が100%を超えている国がたくさんあるのは、輸出しているからです。不作とわかれば輸出の量を抑え、さらに備蓄で対応します。

ひまわり市場に学ぶ「適正な価格」

PDCAサイクルに、「D」(Dispatch、発信)を加えるべきではと投げかける栗原隆政JA鳥取県中央会会長

PDCAサイクルに、「D」(Dispatch、発信)を加えるべきではと投げかける栗原隆政JA鳥取県中央会会長

栗原 食料・農業・農村基本計画がとりまとめられましたが、農政ではこれまで、こうした計画が必ずしも達成されていません。PDCAサイクルといいますが、「D」(Dispatch、発信)を加えPDDCAサイクルで、「Do」実行したら「Dispatch」発信することが重要ではないでしょうか。

石破 会長のおっしゃる「もう一つのD」、PRは重要です。政策はわかりやすくなきゃダメです。

栗原 適正な価格形成では、食料システム法が2026年4月から施行されます。期待の反面、農家は、運用面での課題や不安も持っています。

石破 山梨県北杜市にひまわり市場というスーパーがあります。どういうスーパーかというと「いくらで売って欲しいか」を農業者が決めるんです。だけど売れなかったらもうその値段にはしません。そのスーパーには張り紙があって、「店員にも暮らしがあります。スーパーにもスーパーの経営があります。安ければいいということではありません」と書かれています。このような、消費者、生産者、流通事業者、3者の信頼関係が、ほんとうの適正価格をつくっていくのだとに思います。

栗原 直売所では生産者が値段を付けて販売します。その農産物の良さとか特徴をPOPに書いて、たとえば「私の大根」のPRをすることが......。

石破 大事ですね。

栗原 ですから、はやっている直売所にはPOPが多いんです。それと今、異常気象で農家も困っています。

石破 ヨーロッパではアルプスにトンネルを掘って飛行機から列車に変え、街中も車を規制して路面電車に変えている。日本もCO2を減らす努力に本腰を入れなければと思います。

私は鳥取市の育ちなんですけど、盆までは浦富(海岸)におって、盆が過ぎると鹿野にいました。浦富にいれば朝、獲れたてのイカが食べられました。鹿野に行くと産みたての卵が食べられました。海や山での体験は貴重で、今でも鮮烈に覚えています。これから先、共有経済、シェアリングエコノミーを育んでいくことで、地方創生にも農業にもいい変化が出るのではないでしょうか。

「地方創生2.0」とアンコンシャスバイアス

栗原 農にふれたいというニーズはもっと増えてくると思います。「地方創生2.0」ということで、若者や女性に選ばれる地方を創ることも掲げられました。

石破 はい。例えば、鳥取県は、出生率は高いんです。よその県から移住して来る人の数も1位か2位です。だけども生まれる数より亡くなる数の方が多く、移住してくる人も多いけど県外に出ていく人がもっと多いので、人口は減っています。大学が少なく、高校を出た若者が自分の県に残る割合は低い。そうであれば、他県から戻って来られるようにすることが大事です。

栗原 アンコンシャスバイアスもあるようですが......。

石破 アンコンシャスバイアス、無意識の思い込み、これも払しょくしていかないとダメです。私の本籍は八頭(やず、鳥取県八頭郡八頭町)なんですけど、若いお嫁さんが八頭だの若桜だの智頭だのに来るかというと、やっぱり来たいと思われない環境があると思うんです。

例えば公民館での祭りに行くと、広間で酒飲んでいるのは男の人らで、女の人は台所で料理をしています。「女性だから料理と掃除を」というのはアンコンシャスバイアスです。男の人も料理をする、子どもを抱く、掃除もする、女性だけが家事をするのではない、ということを常識にしていくことが大事ではないでしょうか。人のことを言えた義理ではないですが。

それと、すぐ「あんねの嫁はどっから来とんだ」「昨日あんな服着て歩きよったで」とか噂話になる、みたいなところを少しずつ減らしていく努力もいりますね。本当は、楽しいところには人は集まるんです。倉吉の農協祭りにも、鳥取県内外からたくさん来られていましたよ。

少年時代を思い出しながら「楽しいところには人は集まる」と地域創生2.0への思いを語る石破茂前首相少年時代を思い出しながら「楽しいところには人は集まる」と地域創生2.0への思いを語る石破茂前首相

協同の精神、ますます大切に

栗原 最後に、JAグループへの期待はいかがでしょうか。

石破 JAはなぜ、「総合農協」という世界でたった一つの仕組みでやっているか。農協という存在が地域の核だからです。いつも佐久総合病院の話をしますが、「一人は万人のために、万人は一人のために」という協同の精神は、これから先ますます大切になっていきます。JAと政府とが、この国を何とか良くしようという思いを一つにやっていく。JAの発展が日本のためだと思っております。

栗原 今日はありがとうございました。今後ともご教授賜りますようよろしくお願いいたします。

【インタビューを終えて】
今回私にとって貴重な体験をする事ができ、恐悦至極に存じます。何せインタビューをされる事は多い私ですが、する方は初めての事で、難しさを痛感したと同時に、相手が前総理だけに終了して安堵している。従って他にも地球沸騰化と関係深い環境政策、オーガニックの事や、地方創生についても深掘りしたかったが、時間が終了したのは心残り。やはり同郷人としておくがましいが、正論派・真面目で忍耐力があり、嘘はない等身近に感じた。鳥取県の豊かな自然環境やDNAによるものだろうか?! 今後とも我々JAグループと農水省とのさらなる密な連携が重要だ。前総理の今後益々の御活躍を鳥取県民と共に御期待申し上げます。(栗原)

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