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JAの活動:食料安全保障と農業協同組合

【2026新年号】藤井聡京都大学教授にインタビュー 政府がすべきは「個別所得補償」2026年1月9日

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2026本紙新年号は「食料安全保障と農業協同組合」をテーマにした。気候危機や不安定な世界情勢のなか、食料安全保障の確立がいっそう重要となるなか、地域に根ざした農協の役割は農業振興と食料の安定供給にとってますます重要になる。本紙新年号ではこのテーマを軸に政治、行政、学識者にJAトップ層が生産現場を踏まえて聞くインタビューを特集した。藤井聡京都大学教授に生川秀治JAみえきた組合長がオンラインでインタビューした。

藤井聡京都大学教授藤井聡京都大学教授

政府は責任を果たしていない

生川 本日はまず、農業や農協についてのご意見を伺いたいと思います。

藤井 日本は「貿易立国」の政策により、貿易交渉で農畜産物は譲歩を重ねた結果、農業が犠牲にされ、歪められました。「食料安全保障」や「食料自給率」も言葉先行で議論が十分ではない。先進国であれば農業を守ることは絶対に必要です。食料の安定供給は国家の責任であり、重要な政策分野です。

生川 農業を守るために必要なことはなんでしょう。

藤井 政府が直接サポートする財政支援と、関税で外国産農産物が国内市場で支配的にならないようにする方法が、世界的に標準的な農業保護政策です。しかし、日本はいずれも世界最低水準に近い。

日本の農作物の平均関税率は11.7%で、EU19.5%、スイス51%、ノルウェー・インドは120%を超えます。政府の直接支援もアメリカは日本の約2.5倍、EU1.7倍。結果として食料自給率が低下し、政府は責任を果たしていません。

緊縮財政が農業を歪めた

生川 なぜ財政支援を渋るのでしょうか。

藤井 緊縮財政が最大の問題で、同時に保護主義でもない。「自由主義かつ緊縮」では農業は「虐待」に近い扱いです。政府の態度が長年にわたって道徳的ではなく、倫理性が低い状態だった。国民の食と農を守るべき道徳感覚が衰弱している。

「責任ある積極財政」には期待

生川 高市政権には期待できますか。

藤井 「責任ある積極財政」の「責任」には食料確保も含まれます。食料自給率の確保についても積極的に発言されている。農政に根本的な転換を倫理感・責任感に基づいて果たして貰えるのではないかと期待しています。

生川 地方は疲弊し、耕作放棄地も増えています。中山間地ではクマも出ています。

藤井 経済界は農業を「単なる食料供給産業の一つ」としか見ていませんが、本来は安全保障や雇用、地域振興などの政策であり、輸出増や輸入抑制は外交カードになる。また、農村には国土保全や教育、文化継承など多様な役割があります。

「安い農産物を海外から買えばよい」という発想は至って貧しい議論。ここにおいてもやはり、戦後日本の道徳性の劣化問題が顔を出していると思います。

農協は農家そのもの

生川秀治JAみえきた組合長生川秀治JAみえきた組合長

生川 農協も様々な批判を浴びています。

藤井 「利権にしがみついている」「中間マージンで価格が高くなる」など誤った認識があります。「JA」というから分かりにくい。農業協同組合は搾取を防ぐため農家自身が作った組織で、農家そのものです。株式会社になれば利益最大化のため仕入れを安く買いたたきたいと考える。そうした仕組みを知らない知識の欠如が招いた誤解です。

そして、ここでもやはり「協同」すること、つまり「人と人が協力すること」の重要性を理解するという、道徳性の劣化が戦後日本において進行している問題がある。

生川 「郵政民営化の次は農協民営化だ」という的外れな議論もありました。

藤井 農協を解体すれば、農家は巨大資本と一対一で向き合い搾取されます。政治家は既得権益層ばかりを見ている。国民も実体ではなく、「マスメディアにどう映るか」とフィルター越しにしか見ていないのです。

諸外国並みの支援を

生川 鈴木農水大臣には期待しています。

藤井 関税と政府の直接支援の必要性を理解していると思います。しかし、緊縮財政下では減反や「おこめ券」程度しかできません。本来のゴールは政府支援の拡充で、「農家の個別所得補償」が必要です。

生川 「減反に舵を切った」という評価もありますが、展望が語られていません。米価が上がり、農家は喜ぶ一方で「もう少し安くてもいいが、安定してほしい」という感覚です。

藤井 鈴木農水大臣のメッセージの出し方が間違っています。「価格はマーケットで決まる」という発言は「農家は滅んでもよい」に等しい。価格は所得が守られる範囲内で市場が決めるべきです。必要経費を差し引いた平均的な年収が1万円という試算もあり、正当ではありません。

価格以上に重要なのは農家の所得です。財務省や他の政治家に対して、諸外国並みの政府支援や、農業が市場任せでは持たない現実を粘り強く訴えてほしい。

生川 JAグループの金融や共済といった機能も攻撃のターゲットになっています。

藤井 資本家から見れば、農協は「おいしそうに太った豚」です。以前よりはずいぶん細ってはいるでしょうが、未だに十分太っているので、魅力的で「食べたい」と思われています。

生川 小さな農家を整理せよという議論もあります。

藤井 集約化には一定は賛成ですが、集約できない地域も多い。「小さいところは潰せ」という発想は乱暴で、最終的には外国産米依存に必ず繋がる。作付面積だけを基準にするのは誤りで、農地の多面的な価値を総合的に評価すべきです。

生川 高市総理は農業をどう考えているのでしょうか。

藤井 「食料安全保障」はよくおっしゃっていますし、既存の田畑の保持、活用や農業支援には繰り返し言及しておられます。「責任ある積極財政」「食料安保」を掲げる以上、農業をしっかり支援していただきたい。

「手数料主義」の理解を促す

生川 最後に、農協が取り組むべきことは。

藤井 農協は利益拡大が第一ではなく、販売価格の一部を手数料として受け取る「手数料主義」で運営されています。安く買い叩く構造ではありません。価格安定化を志向しているが、社会はそれを全く理解していない。その理解を徹底的に促す必要があります。

生川 「米の買取り」や概算金の仕組みも理解されていません。

藤井 理解せず批判する人が多い。概算金や最終精算で農家に還元される構造を伝えることが大切です。

生川 今日は多くの示唆をいただきました。農業や農協について理解されにくい論点を、今後さらに情報発信を強めていきたいと考えています。本日はありがとうございました。

【インタビューを終えて】
楽しみにしていた藤井聡先生との対談は、テーマとして農業と農業協同組合に焦点を合わせましたが、想像通り明解でズバリ本質を衝くもので感銘を受けました。何より広い視野で農業問題を考えておられる点や農業協同組合に対する深い理解はとても頼もしく思いました。議論が白熱化してくると、お互い関西弁で、考え違いをしている農水省OBや政治家の固有名詞が飛び交い、とても楽しく刺激的な時間となりました。感謝。(生川)

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