(468) テロワールの先へ - 食文化とテクノワール【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2026年1月9日
明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。
昨年末からローカル、ローカリティ、そしてテロワールについて話してきました。日本の多くの食品がローカリティ止まりであること、その先の段階として、科学的根拠にもとづいたテロワールという概念が存在することです。では、豊かな日本の食を追求するにはテロワールという一方向だけなのでしょうか。この点を検討してみたいと思います。
ローカルからローカリティ、そしてテロワールへとつながる道以外の可能性を追求するにはその構成要素を考慮した上で、意識的に視点を変える必要がある。テロワールが「土地X科学」をセットとするのであれば、対応する内容として、例えば、「技術X科学」という形で考えるのが一案である。これをテロワールに対してテクノワールと呼んでみよう。
グローバル化が進展すると、食と農の分野では、均質化、標準化、そして規模の経済の追求が追及される。より具体的に言えば、安定供給、品質の再現性、コストと効率性、食と農のトレーサビリティなど、近年の各国が必死に求めてきた個別要素が不可欠になる。
多くの農家や小規模な食品企業はこの段階で様々な実務上のハードルに直面する。個々人の創意工夫により何世代にもわたり蓄積されてきた貴重なノウハウが、全て統一的な方法に置き換えられるからである。誰がいつ製造しても同じ製品が作れる、すなわち再現性が高度になればなるほど、味と体験の多様性が喪失し、個性や地域性が希薄化するというジレンマに直面する。テクノワールとテロワールは、次元は同じでも価値を創出する別の進化系統と理解した方が良い。
ここまでくると、「将来の食」についてある疑問が浮かぶ。それは「技術先行型の食文化は成立するか?」という問いである。
一般に、あるものや行動が文化として認められるには、反復性、共有性、そして物語性などの要素を不可欠とする。3Dプリンターで作成したスイーツや代替肉・培養肉なども、新規性や奇異性を備えてはいても、稀少性があり特定の一部の消費者にしか受け入れられるだけでは一過性の流行商品として時間とともに忘れ去られる。
だが、日本にはテクノワールを極めた結果、既に国内外から日本の食文化のひとつとして認められている商品がある。カップ麺である。紛れもなく現代日本文化の一側面を象徴している。どの世代もカップ麺と聞けば自分がどのような時に食べたか、それぞれの物語を語ることが可能であろう。その種類や内容も箱庭のように無数に存在する。
あの小さな容器の内容物、形状、パッケージの文字、色使い、包装方法、これら全ては無数の技術により生み出された知的財産の集積であり、いわばテクノワールの代表に近い。それにもかかわらず、現代日本の食文化の一面を表しているとすれば、それは、今後の日本の食文化がどのような可能性を持つかを示していると考えることができる。
最後に簡単に整理してみたい。
食や農に関係する個々人にとって一番わかりやすい進化の方向性は、ローカル・フードからローカリティ・フード、そしてテロワールへの道である。単にその土地で採れた産物や食品としてのローカル・フードから、ある土地の雰囲気を別の土地や素材で示すローカリティ・フードがある。それに確固たる科学的裏付けを付ければテロワールへと昇華する。
一方、グローバル市場を対象として、均質化や標準化、そして規模の経済を追求するのがテクノワールに至る道である。代替肉などの例を見るまでもなく様々な商品が今後も「技術X科学」のもとで登場するであろう。
ただし、技術先行型の食品が「文化」になり得るかどうかは、技術そのものだけでなく、反復性や共有性、そして物語性という文化的要素に依存するという点は重要である。
どちらの道を辿るにしても、ある国や土地、あるいは人々が当然と認識するような食「文化」にまでなれるかどうか、それが最後の決め手、つまり持続可能性になる。
こうしたことを考えた上で、一人ひとり、あるいは個々の企業がどのレベルを狙うか、それこそが食の選択であり、広い意味での戦略になる。
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