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JAの活動:農業復興元年

【農業復興元年】「農村の宝」生かし少量多品目で活路 夢は3世代居住の理想郷づくり 大分大山町農協2023年1月13日

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「日本一貧しい村」を自称していた地域は、1960年代に「梅栗植えてハワイに行こう」をキャッチフレーズに農家の所得を増やし、以後も次々と新規の事業を打ち出して豊かな農村に生まれ変わった。大分県日田市の大分大山町農協。合併しない独自路線で、少量生産、多品目栽培、高付加価値産品を通して築き上げた地域の力強い体質は、資材高騰の波も乗り越えてきた。矢羽田正豪組合長は、将来の夢として3世代住居の居住区による理想郷をつくりたいと将来の夢を語る。

年間18万人が来客 農家レストラン

「木の花ガルテン」の農家レストラン「木の花ガルテン」の農家レストラン

「インスタを見て福岡から来ました。懐かしい味ですね」「佐賀からです。山の中の食事は気持ちいいです」。日田市大山町を流れる大山川沿いにある農協直売所「木の花ガルテン」に併設された農家レストラン。農家の"おばちゃん"たちがシェフを務め、野菜を中心に80品以上が並ぶバイキング形式で、年間約18万人が訪れる。コロナ禍でも黒字をキープし、同店を訪れた12月初旬は平日にもかかわらず店内155席は満席だった。「開店前に50人以上並ぶことも珍しくありません」と矢羽田組合長は語る。

「梅栗でハワイ」から10年に1度の新規事業

矢羽田正豪組合長矢羽田正豪組合長

「日本一貧しい村だった」と矢羽田組合長が語る旧大山町は、農協の組合員戸数が約600戸、1戸当たりの耕地面積は40aの耕作条件の厳しい地域だったが、60年代、「梅栗植えてハワイへ行こう」をキャッチフレーズに、地域を挙げて収益性の高い梅や栗の生産に大きく舵を切り、農家所得の向上につなげた。組合員らは、農協から旅費の無利子融資を受けて梅や栗の収益から返済する仕組みで積極的に海外に出かけて見聞を広めた。「ただの物見遊山でなく、海外で触れる食事や文化から衝撃を受けて組合員の意識を高め、次の世代の教育につなげる『体験学習』でした」(矢羽田組合長)。

同農協は「梅栗運動」後もほぼ10年に1度、新規事業を打ち出し続けている。少量生産、多品目栽培、高付加価値産品の周年栽培へ向けて、72年にシメジなどの菌茸類の栽培に着手。75年に食品加工工場、78年には日田市の酪農家と協力して年間1500tの堆肥を生産する工場を建設した。90年に直売所「木の花ガルテン」を開店すると、2001年に農家レストランを併設、さらに15年には30haに梅や桜など四季折々に咲く450種3万6000本の木を植えた農業者のテーマパーク「五馬媛の里」をオープンさせた。

「少量でも引き取る」体制で得る農家の安心

独自路線を歩む大分大山町農協にとって、合併の選択はあり得なかったという。「合併したら少量多品目の作物など扱ってくれなくなります。ここではすべて農協で引き受けています」と矢羽田組合長は語る。少量でも引き取ってくれる体制は農家にとっては安心でき、心強い。

直売所の開設を機に本格的な野菜作りに取り組み、四季を通してほぼ毎日出荷している矢野悟さん(64)は「小さいロットでも引き取ってくれるのが大きな魅力です」と語る。

海外の"体験学習"でひらめいたハーブ

ハーブ栽培に取り組む河津祐一さんハーブ栽培に取り組む河津祐一さん

梅栗運動に端を発した「体験学習」は、着実に次の世代で実を結んでいる。
父から農業を受け継いだ河津祐一さん(65)がハーブの栽培を始めたのは約40年前。きっかけは1984年、農協と町が毎年行うイスラエルのキブツ研修への参加だった。研修後に西欧を回る中で当時日本にはほとんどなかったフレッシュハーブに触れてその魅力に惹かれ、帰国後、独学でハーブ栽培を学んだ。少しずつ規模を広げ、現在、東京から大阪、九州と年間15万パックを出荷している。

河津さんは「少ない量でも全部農協が販売してくれるから安心して挑戦できました」と語り、今は同農協の営農契約指導員として後進のハーブ農家の指導にもあたる。「ほかの農家に技術を教えない地域も多いと思いますが、みんなに教えながら取り組むのが大山のやり方。そうしないとやっていけなかった地域だからです」。

梅づくり名人一家 後継者も着々と

後継者も育っている。西大山地区の「森梅園・農園」の森あゆみさんは、梅づくり名人といわれる父と、全国梅干コンクールで最高賞を受賞した母とともに親子3人で梅園を運営している。オリジナル品種も含めて育てている梅は8品種で約1000本。父が梅を育て、母が梅干しを加工し、あゆみさんがパッケージづくりなど商品化や販売を担当している。営業で外に出る機会も多いあゆみさんは、折に触れて「大山」のネームバリューを感じるという。

両親とともに梅園を運営する森あゆみさん両親とともに梅園を運営する森あゆみさん

「直売所などで販売しても『大山の梅』というとお客さんが目を輝かしてくれます。先人の方が築いてくれた財産ですね」。その魅力に惹かれて大山に移住し農業を始める若者も出始めている。森さんは「仲間をさらに増やしてかつての活気をまた生み出して地域を盛り上げていきたいと思います」と語った。

もっともすべてが順風満帆というわけではない。70年代に始まったエノキダケ生産で、現在、部会長を務める窪真範さん(46)によると、手間のかかるエノキダケづくりは高齢化に加えて休日を取りづらいことなども背景に、生産者は減少傾向にあるという。親から受け継いだ窪さん自身、年間300日ほど出荷作業をする忙しい日々を送るが、「梅があり野菜がありエノキがある。そうしたアイテムがいくつもあるのがほかにはない大山の強みだと思っています」と語り、誇りをもってエノキダケづくりに取り組んでいる。

年金プラス給料で高齢者が安心の「文産農場」

地域集落文産農場の様子地域集落文産農場の様子

2020年、また一つ新たな事業が動き出した。二つの集落に、収益性の高いクレソンなどを栽培するハウスや加工場を備えた「地域集落文産農場」が設置された。地域のお年寄りを雇用して年金プラス給料で安心した老後を過ごせるようにとの思いを込めて整備された。原則として高齢者の作業は午前中のみで、作業場の奥に談話室もあり、休憩時間や作業後には憩いの場となる。

実際には収入より人との交流を求めて通う高齢者が多いようだ。開設当初から働く河津久美子さん(83)は「年金生活でしたが、人と触れあえるのが楽しみで来ました。楽しく過ごしています」と話す。藤原富美香さん(67)は「作業が昼までというのも魅力です。楽しいですし、収入が増えて孫へのお祝いなどに使えてありがたいです」と話していた。

農協では、将来的に管内の36集落すべてで設置を目指したいと話している。

「宝の山」に気付き、生かせば農村は豊かに

矢羽田組合長は、同農協の事業展開の特徴について、「農産品直販や食品加工場、レストラン、里山公園事業などの"外需事業"で組合員の所得向上につなげ、金融や共済など"内需事業"から収入を得てはいけないと一貫して取り組んできました」と語る。職員には「農協職員の給料は農家が朝から晩まで働いて稼いだお金の一部。農家が一番だ」と機会あるごとに話すという。

また、「農村は宝の山」と強調する。例えば梅の剪定で捨てられていた部分が最近は結婚式などのテーブルを彩る「ブラッサム」として商品化され、高収益をもたらすクレソンも実は地元の川沿いに自生していた。「農村の宝に気付くかどうかが分かれ目。みんなが意識して宝を生かしていけば農村は豊かになります」と語る。また、70年代に堆肥工場を整備していち早く有機農業を実践してきたことで、全国の産地を直撃している資材高騰の影響もほとんど受けていないという。「電気料金値上げの影響を受ける程度です。これも先人が取り組んできたことで感謝しています」と話す。

今後、さらにどんな農村づくりを目指すのか。矢羽田組合長は日本の農村の家庭を取り戻したいと将来への夢を語った。
「親子3世代が一緒に暮らせる農家の居住区を作りたいと考えています。昔の日本の良さはおじいちゃんやおばあちゃんが孫の教育の面倒をみてきたことです。どこにもないような農村の楽園、ユートピアを作るのが夢ですね」

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