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【対談】二つの戦争に米国一強の驕り 元外務省欧亜局長・東郷和彦氏×東大名誉教授・谷口信和氏③中国は日本と対話熱心2024年1月11日
2023年は温暖化と密接に関係のある異常気象に悩まされ、環境破壊の最たる戦争が再び勃発した。ウクライナに続き中東・パレスチナ自治区ガザでのイスラム組織ハマスとイスラエル軍との戦闘だ。グローバル化した中で日本も対岸の火事ではいられない。この状況をどう見るか元外務省欧亜局長の東郷和彦氏と東京大学名誉教授の谷口信和氏が対談した。(対談は2023年12月14日に実施)
元外務省欧亜局長 東郷和彦氏
谷口 パレスチナ・ガザ問題では、国連決議をめぐって日本は米国と少し違う態度を取りました。「ハマスの攻撃を許さない」というイスラエルの姿勢も、当初はわかる面がありました。ところが「報復」がエスカレートし、深刻な人道危機が生じています。
東郷 少なくとも、大英帝国が覇権を持っていた第1次世界大戦までさかのぼって考えなければならないと思います。イギリス帝国は、フサインとマクマホンの往復書簡で、アラブ側に「戦争が終わったらアラブ人の手に渡す」と言い、一方ではバルフォア宣言によって「イスラエルに渡す」と言いました。英国のこの二重手形に中東紛争のすべての発端があります。
イスラエル建国後、4次にわたる中東戦争が起こります。1978年のキャンプ・デービット合意を経て、米国がはっきり動いたのが1993年のオスロ合意です。この時の米国は、立派なものがあったと思います。冷戦終了とソ連崩壊で強くなった米国と、ノルウェーが間に入って、この合意は成立しました。ここで初めて、ガザとヨルダン川西岸――北方領土でいうと、ガザは歯舞、色丹、ヨルダン川西岸は国後、択捉みたいなものですが――、この二つはパレスチナ、という形ができたわけです。
ただしこれは一種のイメージ案で、実際の線引きではありませんでした。その後、ラビン暗殺で保守派の力が強くなると、イスラエルはヨルダン川西岸に入植を始めます。少しずつパレスチナを追い出すということです。不信と怨念の蓄積が、ガザでのハマス蜂起につながったのだと思います。
今回の事件をどこで収められるか見当が付きませんが、戻る場所があるとすればオスロ合意だと思うんです。それはイスラエルの権利を否定することではありません。ハマスの行為はテロだという点には説得力があっても、ガザやヨルダン川西岸からパレスチナ人を力づくで追い出しても、紛争は拡散するばかりでしょう。
谷口 きわめて不安定な事態になっていると。
東郷 ある程度パレスチナの権利も認めないと。ここでもキーは米国です。中国が総合国力で米国を抜かすまでは圧倒的な一強ですから。
谷口 その中国もけっこう覇権的な行動をしていますよね。南沙諸島とか。英国や米国の轍を踏まないようにしないのでしょうか。
東郷 二つの覇権主義国が本当にぶつかったら、東シナ海や沖縄周辺に戦争が波及しかねない。深刻な問題です。私は去る12月9日、北京に呼ばれました。「世界大動乱の中における日本と中国の国際政治における責任」というシンポジウムでした。
谷口 できるのですか、そんなシンポジウムが中国で?
東郷 中国は今、日本との対話に熱心なんです。そのシンポで私が言ったのは、日本は、同盟国である米国抜きに「日中で東アジアの問題を解決しよう」とはなかなかならないが、日本と中国だけで解決できることを見つけて解決してみようと、六つの課題を挙げました。
① 日本が中国から感じている軍事的脅威に対して日本が採った22年12月の3点セットの政策と、それによって中国が感じた軍事的脅威。ほっておくと「安全保障のジレンマ」となって、お互いに脅威と緊張が高まってしまいます。ジレンマを解くのは対話、外交しかありません。この点で日中はお互いにもっとすべきことはないか。
② 台湾問題。全体を解決するには、米国の政策は不可欠。日本が揺るがないのは、「日中共同宣言」第3項における台湾の扱いで、台湾は中国の一部であると認めている内容です。もう一つは、沖縄を絶対に巻き込まないことです。ここは限定的に日中で話し合える。
③は尖閣です。中国は尖閣周辺に入れたい時に入れたいだけの公船を送り込んできますが、日本は止められません。日本は2012年にいわゆる「国有化」しますが、その後は実効支配に穴が開いているのです。そこで尖閣諸島を非国有化し、尖閣における日中共同事業を実施してはどうか。山羊を駆除して木を植える。緑の島にできたら周りにあるエネルギー開発にも手が付くはずで、尖閣は「平和の島」に変わると思います。
④は靖国です。小泉純一郎首相(当時)は靖国訪問で日中関係をぶち壊しました。安倍晋三総理が戦略的互恵を打ち出して何とか収め、それ以来日本では「なるべくさわらないように」とされてきたんですけど、ほっておけないんです。
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