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【ゲノム編集技術を知る】新しい育種技術? そもそも育種って?2021年1月29日

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農林水産省が作成したゲノム編集技術についてのリーフレットのタイトルは「ゲノム編集~新しい育種技術~」(画像はここから引用)となっている。つまり、ゲノム編集は育種、すなわち品種改良の新しい手法だということになる。では育種とは何か。昨年12月に農水省が開いた「ゲノム編集技術を用いた農林水産物を考えるシンポジウム」では日本育種学会会長の大澤良筑波大教授が植物育種の歴史とゲノム編集技術の位置づけなどを解説した。大澤教授は「消費者は誰が育種をしているのか知らない」とこれまで専門家からの社会への発信不足を「大いに反省する」と述べ、今後は「顔が見える育種を世の中に問うていかなければならない」と強調する。

【ゲノム編集技術を知る】新しい育種技術? そもそも育種って?

品種改良の原点

1859年に発表されたダーウィンの「種の起源」。そのなかに次のような記述がある。

「すべての品種が今みられるような完全な、また有用なものとして、突然に生じたとは想像できない。...その鍵は選択を積み重ねていくことができる人間の能力にある。

自然は継起する変異を与え人間はそれを自分に有用な一定の方向に合算していく。この意味で人間は自分自身に役立つ品種を作りだしていくのである」

大澤教授はここに品種改良の原点があるとして、「人間は自然突然変異を利用して人間に有益な作物や家畜を作ってきた」と強調する。

農耕は1万2000年前から始まったといわれているが、農作物の祖先である野生の植物は実が小さかったり、毒があったりして栽培して食べるには適さないものがほとんど。それでも栽培を続けると性質が変化したものが出現することがあり、ダーウィンが言うようそのなかから人間が利用しやすいものを選んできた。その変化が起きるのは遺伝子の突然変異によるものであり、大澤教授は人間が必要な農産物を栽培できるようになったのは「人類に有用な遺伝変異の集積作業をしてきたため」と言う。

たとえば前回も触れたようにイネや小麦の祖先は籾が落ちやすいという性質があったが、長く栽培を続けるなかで籾が落ちにくくなる突然変異が出現して、それを選んで栽培してきた。逆に言えば籾が落ちやすい性質は野生種として次世代を残すためには必要だが、人間はその性質を「削ぎ落としてきた」(大澤教授)ともいえる。

ただ、突然変異が起きるのを待つだけでは、病気に強くておいしいといった性質は得られないため、100年ほど前から、おいしい品種と病気に強い品種を掛け合わせるといった交配育種が行われるようになり、さらに1920年代から放射線を当てたり化学物質を使って突然変異を起こさせる育種も始まった。放射線を当てるというのも、DNAを切る、ということであり、それによって性質が変わった有用な農産物を栽培するということになる。つまり、人為的にゲノムの遺伝情報を変えるというのは近代になってから行ってきたことだということになる。

交配育種

100万個体に1つ

大澤教授は育種の例として国際イネ研究所が開発したミラクルライスIR8という品種の成果を紹介した。これは収量性は低いが草丈が低く倒伏しにくい品種と、収量性はそこそこあるが草丈が高く倒伏しやすいという品種の交配から生まれた。倒伏せず高収量という品種だ。

この成果をもたらしたのはSD1というたった1つの遺伝子だという。1965年に開発された後にも品種改良が続けられ収量は1.5倍になった。しかし、それが実現できたのは40年後。目的とする性質を持つ両親を選び、交配で得られたものからさらに性質の優れた品種と交配するということを何度も繰り返す。育種には10年から15年かかり、100万個体に1つが品種として世に出るのだという。

育種とは遺伝子の変異を作り出すが、一方では「それらのほとんどを捨てる作業」(大澤教授)ということになる。しかも果樹の育種では30年から40年かかる。また、遺伝子組換え技術を使った育種でも、安全性の確認まで含めて有望な系統の育成に15年ほどはかかっている。

一方、交配育種のよう育種が長い時間をかけたいくつもの変異の集積であるなら、変異の集積を一度に起こせるなら品種改良の時間が短くなる。分子生物学の発展によって遺伝子の働きが分かるようになってきた。つまり、見た目で優良な性質の農産物を選んで育種をするのではなく、計画的に植物の設計図を書き換えれば短期間での育種が実現する。これがゲノム編集技術に期待されていることだ。

大澤教授が強調したのは品種改良の背景と目的だ。世界人口が2050年に98億人へと増加する見込みだが、農地は減少し気候変動で栽培環境の悪化が見込まれている。そのなかでも収量の向上と味や栄養が評価される食料を生産するには品種改良が不可欠だ。ゲノム編集はそうした課題に応える技術だとしてより良いものをより早く生産者と消費者に届けることができることや、国内に今ある品種や素材を最大限に活かすことや、気候変動など栽培環境の変化への素早い対応などのメリットに挙げる。

国民の理解不可欠

ただし、新しい技術に対する不安も国民には多い。「安全なのか?」という問いに「安全は"絶対に安全、100%安全"という意味ではなく、「多少の危険はあるが許される範囲にある場合に安全と言われている」と大澤教授は解説した。そのうえで課題は、テクノロジーの恩恵とリスクについて理解してもらえる情報発信であり「信頼を得るための専門家からの社会的発信力が弱かったと反省している」と述べている。
ゲノム編集技術は農産物だけに活用されるものではない。すでに問題になったように動物やヒトにも利用される。「新しい育種技術」として理解されるには、「育種」とは何か、改めて専門家からの発信が求められるのではないか。

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