ゲノム編集トマト 家庭菜園向けに苗を提供-筑波大・サナテックシード2020年12月14日
わが国初のゲノム編集食品としてGABA含有量を高めたトマトの届出が12月11日に厚生労働省、農林水産省への届出が受理された筑波大学とサナテックシード(株)は同日記者会見を開き、開発の経過と今後の販売予定などについて明らかにした。
記者会見する江面教授(左)と竹下会長
開発した筑波大学つくば機能植物イノベーションセンター研究センター長の江面浩教授は、2005年からトマトにストレスを加えることで高GABAになることに着目して研究を始め、15年から今年のノーベル化学賞を受賞したゲノム編集技術、クリスパー・キャスナイン(CRISPR/Cas9)を利用して高GABA(ギャバ)トマトを開発した。
ギャバはガンマ-アミノ酪酸の略称でストレス緩和効果や血圧上昇抑制効果が期待されている。
このトマトを商業化するために18年に筑波大学発ベンチャーとしてサナテックシード(株)を設立した。同社はパイオニアエコサイエンスが95%出資し同社社長の竹下達夫氏が会長に就任した。
トマトはもともとギャバを合成する酵素を持っているが、その生成を自己抑制する機構もあり、江面教授は抑制に働く塩基配列をゲノム編集で切断したところ、トマト果実のギャバの蓄積が高まった。
この成果をもとにサナテックシード社は「シシリアンルージュ」でギャバの含有量を高めた系統(♯87-17)を開発した。同社によるとゲノム編集前の個体とくらべてギャバの含有量は5~6倍だという。今後はこの株を親として別の系統と掛け合わせてF1として種子を販売する予定。
江面教授は高血圧症に効果が期待できるなど「食生活を通じて健康になることに貢献できる」と話す。
届出にあたっては事前に厚労省や農水省と相談し安全性に問題がないかデータを提出してきた。厚労省には食品として、農水省には規格外トマトが飼料として利用される可能性もあるため飼料としての安全性の確認もした。また、環境省などは生物多様性への影響がないことも確認したうえで届出を受理した。
同社は今後、家庭菜園で野菜などをつくっている消費者向けに苗を無償で提供する。年末から種子を生産し5月から6月に応募者のもとに届ける。募集はすでにパイオニアエコサイエンス社のホームページで受け付けている。竹下会長は「栽培状況やこのトマトへの評価などを情報収集し、ゲノム編集農産物をきちんと認知してもらいたい」と話す。また、今回販売する苗やと今後、市場に流通する果実には専用の袋などを用意しゲノム編集食品であることと国に届出済みであることを表示する。種子を購入する生産者には出荷の際にはこれを利用することを条件とする方針だ。来年の秋には生産者向けの種子販売も始める見込みで2022年の春にはゲノム編集よる高ギャバトマトが市販されることもある。
江面教授は今後について、シシリアンルージュ以外の品種での高ギャバトマトの開発や、高栄養価とともに、受粉作業が不要となる単為結実遺伝子に着目した品種など、複数の特性を持つゲノム編集なども検討していきたいと話した。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(174)食料・農業・農村基本計画(16)食料自給率その他の食料安全保障の確保に関する目標2025年12月27日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(91)ビスグアニジン【防除学習帖】第330回2025年12月27日 -
農薬の正しい使い方(64)生化学的選択性【今さら聞けない営農情報】第330回2025年12月27日 -
世界が認めたイタリア料理【イタリア通信】2025年12月27日 -
【特殊報】キュウリ黒点根腐病 県内で初めて確認 高知県2025年12月26日 -
【特殊報】ウメ、モモ、スモモにモモヒメヨコバイ 県内で初めて確認 高知県2025年12月26日 -
【注意報】トマト黄化葉巻病 冬春トマト栽培地域で多発のおそれ 熊本県2025年12月26日 -
【注意報】イチゴにハダニ類 県内全域で多発のおそれ 熊本県2025年12月26日 -
バイオマス発電使った大型植物工場行き詰まり 株式会社サラが民事再生 膨れるコスト、資金調達に課題2025年12月26日 -
農業予算250億円増 2兆2956億円 構造転換予算は倍増2025年12月26日 -
米政策の温故知新 価格や流通秩序化 確固たる仕組みを JA全中元専務 冨士重夫氏(1)2025年12月26日 -
米政策の温故知新 価格や流通秩序化 確固たる仕組みを JA全中元専務 冨士重夫氏(2)2025年12月26日 -
米卸「鳥取県食」に特別清算命令 競争激化に米価が追い打ち 負債6.5億円2025年12月26日 -
(467)戦略:テロワール化が全てではない...【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月26日 -
【スマート農業の風】(21)スマート農業を家族経営に生かす2025年12月26日 -
JAなめがたしおさい・バイウィルと連携協定を締結 JA三井リース2025年12月26日 -
「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業」採択 高野冷凍・工場の省エネ対策を支援 JA三井リース2025年12月26日 -
日本の農畜水産物を世界へ 投資先の輸出企業を紹介 アグリビジネス投資育成2025年12月26日 -
石垣島で「生産」と「消費」から窒素負荷を見える化 国際農研×農研機構2025年12月26日 -
【幹部人事および関係会社人事】井関農機(1月1日付)2025年12月26日


































