【TPP】米国に「柔軟性」求める 自民党2013年12月16日
参加国首脳が年内妥結をめざしていたTPP交渉は年を越すことになった。12月13日には自民党の外交・経済連携本部とTPP対策委員会の合同会議が開かれ、政府がシンガポール閣僚会合の結果を報告。意見交換のあと政府・与党一体となって日本の国益を最大化するよう交渉体制を築くことを確認した。1月にも閣僚会合が再度開かれる予定だ。
シンガポール会合は12月7日から10日まで開催された。
前半は二国間交渉や少数国による分科会が開かれた。日本は、米国、シンガポール、豪州、ニュージーランド、マレーシア、メキシコと二国間会談を持った。
後半2日間は、12カ国の閣僚が一堂に会し10以上の分野について協定文書を見ながら細かい詰めの作業を行ったという。
扱った分野は知的財産権、紛争処理、電子商取引、環境、国有企業、投資、SPS、金融サービス、法的・制度的事項、原産地規則。また政府調達や越境サービスなどを広義の市場アクセスといいう位置づけで議論した。
日本からは西村康稔TPP担当副大臣が参加。閣僚による交渉の場には、昼食も夕食も運び込まれて終日議論したという。
(写真)
13日の自民党TPP対策委員会であいさつする西川委員長(中央)
◆対立点まだ多く
ただ、知的財産、国有企業、環境、投資、原産地規則、金融サービスには「まだまだ論点が残っている」という。たとえば、知的財産では著作権の問題で50年とする国と70年とする国が半々だ。さらにメキシコは100年を主張している。
国有企業については、これを取り上げることそのものに反対する参加国はなくなったものの、その定義や規律についてかなり意見の隔たりがあるという。
投資分野で注目されるISD条項は、協定に盛り込むことに強硬に反対を主張していた国が、今回は中身の議論に参加するという言及があったという。しかし、具体的な協定文書の書き方にはまだ意見の隔たりがある。また、原産地規則は何千もの品目を対象にルールを決めるため時間がかかる。
焦点の市場アクセスについては、米国との二国間協議を西村副大臣とフロマンUSTR(米国通商代表部)代表との間で2回行ったが、結果的にはわが国として譲れないところがあることを繰り返し強調、議論は平行線のまま終わった。
◆関税問題は平行
今回の会合では妥結には至らなかったが、代表声明では、ルールの分野で一定の幅のある「着地点」を特定することができ、実質的な進展が見られたことを強調している。ただし、これは市場アクセス分野の交渉成果のことではなく、市場アクセス分野は日米間で平行線に終始したように、今後も2国間協議をふまえて全体で協議することが課題となる。米国はすべての農産物の関税撤廃という原則論を主張している。
その際、各国が「柔軟性」を持って作業を継続することが代表声明に盛り込まれたが、西川公也TPP対策委員長はこの柔軟性という文言は「米国の譲歩を引き出すため。日本の主張で柔軟性が入った」と強調し、日本としては国会や衆参農林水産委員会の決議を守ることが「決して揺るがないことは(政府とも)確認している。(次回会合は)1月開催といわれているが、このときに本当に妥結できるかどうかはこれからの交渉次第。日本の国益を最大化していくように政府・与党一体となって努力していきたい」などと述べた。
◆譲れない農産物
また、西村副大臣は今後の交渉見通しについて「なかなか先は見えにくいところがある。ただ、米国は中間選挙を控えており、オバマ政権にとっては一定の成果を上げずに中間選挙に臨むということは避けたいところでないかと思う。そう考えると来年の春ぐらいまでのタイミングで方向性を出さないと、後はずるずるといってしまう可能性もある」と述べたうえで、安倍総理も早期妥結をめざしているとして「さまざまなルールは日本経済にとって必ずプラスになる。そのことを実現するためにできるだけ早くまとめたいという気持ちはある。ただ、一方で譲れないものは譲れない。パッケージで合意をするということだと思う」と述べた。
このように、西村副大臣はTPP交渉が妥結すれば企業活動にメリットがあると強調したが、これに対して齋籐健農林部会長は「ルールができることによって日本が得る利益とは、企業が追加的に利益を得ること。ところが米や牛肉など失うものは大量出血し生命にかかわることだ。ルールと農産品の重要5品目を並べて議論することはおかしいというぐらいの違うフェーズの問題であることををよく理解して交渉していただきたい」と釘を刺した。
出席した石破茂幹事長は「とにかく譲れないものは譲れないということ。
政府・与党一体となって国益の実現、公約の順守、そのために全力でやっている。わが党として国民を裏切るようなことはしない」と強調した。
【シンガポール閣僚会合の代表声明(要旨)】
○環太平洋パートナーシップ協定の完了に向けた実質的な進展が見られた。
○われわれはテキストの残された課題の大部分について潜在的な「着地点」を特定。これらのテキストの課題と市場アクセスの課題を仕上げるために、柔軟性を持って作業を続ける。
○すべての参加国にとって野心的で包括的な高い水準の協定は、雇用を創出し成長を促進し地域統合と多角的貿易体制の強化に貢献するために必要不可欠。
○われわれは今後数週間、そのような協定に向けた集中的な作業を継続することを決めた。
○交渉官による追加的な作業に続いて来月に再度会合を開催する予定。
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