TPP交渉、「柔軟性」重視に警戒感も2013年12月12日
年内妥結をめざしたTPP交渉はシンガポールで行われた閣僚会合で大筋合意に達することができず、来年1月に再度閣僚会合を開くことになった。農業団体などは引き続き国会・与党の決議を守る交渉を行うよう働きかけを強めていく。
◆着地点、見出す
12月12日、シンガポール閣僚会合に16名の代表団を派遣した「日本の畜産ネットワーク」が報告会を開いた。
代表団によると10日夕刻に政府・自民党による結果報告会が行われたという。
甘利明TPP担当大臣に替わり交渉にあたった西村康稔副大臣は「今回はまとまらなかった。ただし、交渉してまとめようという勢いを落としたくないという問題意識で1カ月後に関係閣僚会合を開くことに一致して代表声明を発表した」などと説明した。
代表声明ではTPP協定完了に向けた「実質的な進展が見られた」ことや残された課題について「『着地点』を特定した」こと、さらに「課題を仕上げるために柔軟性を持って作業を続ける」ことが強調されている。
「実質的な進展」について鶴岡公二首席交渉官は、ルール分野のテキスト(文書)で、ある程度の幅のある「着地点」(ランディング・ゾーン)が見出され、それまで各国の立場が分かれて点で議論が一定範囲内に収れんしたこと、と説明した。
◆重要品目一歩も譲らず
また、「柔軟性」は市場アクセスの課題を仕上げるための重要な要素との位置づけだという。「かたくなな姿勢だけでは収れんすることはなく、終わらせるためには柔軟性を各国代表が獲得して交渉に臨まなければならないということ」と鶴岡首席交渉官は説明した。
その市場アクセス分野にはついては、二国間交渉を積み上げた後に全体で協議することになっている。今回の交渉では「各国は日米の動向を見守っている状況。日米間の前進がなければ全体会議にも諮れない」(渋谷内閣審議官)と状況を説明していた。
しかし、西村副大臣とフロマンUSTR代表が会談したのは2回だけ。
西村副大臣は記者団に対して「今日(7日)も立ち話でフロマン代表と話したが、われわれは国会決議があるので、いくらいわれても国会決議をふまえなければ国会で承認されないので、そのことはアメリカにぜひ理解してほしいと伝えている」と現地で話している。また、今回の交渉でその他の国との間での市場アクセス交渉も終結したものはないという。
西川公也・自民党TPP対策委員会委員長は「重要品目については一歩も譲ることはできない。相手が柔軟性を示していないのに、こちらが柔軟性を示す必要は一切ない」と結果報告会で今後の方針を強調した。
鶴岡首席交渉官は「市場アクセス分野は二国間交渉の積み上げが必要でこれからも大きな課題。政府与党一体となって会合に臨む体制を構築していく」と述べた。
閣僚会合は来月開かれる予定だが、それまでの間、事務的には首席交渉官やそれぞれの分野の担当交渉官が「詰められるところは詰めていく」(政府)ことになる。
◆「文化が違いすぎる」
今回の会合について畜産ネットワーク代表団の中央畜産会の菱沼毅副会長は「農業問題、とくに関税交渉で頓挫したなどという単純な問題ではなく、知的財産、国有企業、ISDS条項、環境などの問題で先進国と途上国の間で文化や法制度、慣習などにあまりにも違いがありすぎて溝が埋まらなかったということではなかったかと思う」と述べたうえで、「来月に閣僚会合があろうがなかろうが、1ミリ、1ミクロンたりとも譲ってもらっては困る」と強調し、「柔軟性」が前面に出てきたことについても「文書上の柔軟性はあっても、(重要5品目などの)数字についての柔軟性は認められない」とクギ刺した。
(写真)
報告会に臨む日本の畜産ネットワークの代表団
(関連記事)
・TPP閣僚会合結果に萬歳JA全中会長が談話 (2013.12.11)
・TPP即時撤退求め集会 全国156団体が賛同 (2013.12.09)
・なし崩し的譲歩許さん! TPP集会に3500人(13.12.06)
・若手農業者、TPP抗議の座り込み(13.12.02)
・TPP、生産調整...協同組合に何が問われる(2013.11.15)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日