TPP、生産調整...協同組合に何が問われる2013年11月15日
農業・農協研究会がシンポ
農業・農協問題研究所(理事長:三国英実・広島大学名誉教授)は11月14日、東京都内で「協同組合のこれからを考える」シンポジウムを開いた。TPP(環太平洋連携協定)、規制改革のなかで、いま何が問われているのか、協同組合の視点で捉えてみようというシンポジウムで、田代洋一・大妻女子大学教授、本間照光・青山学院大学教授、大関政敏・JAゆうき青森(青森県)代表理事組合長の報告をもとに意見交換した。
◆「農協潰し」を見抜いて
田代教授は、「TPP、アベノミクス農政と農協」で報告。TPPの受け入れ、首相主導の「攻めの農業」「農業・農村所得倍増戦略」などの「アベノミクス農政」の展開を「戦後農政の総決算」と位置付ける。
特に米の生産調整は、TPP参加で調製品や加工品の関税が撤廃となり輸入が拡大すれば崩壊するものであり、「生産調整の廃止はその事前追認」と指摘する。同時に「生産調整の実施に必要だった農協の協力も必要なくなる」と言う。その上で農協陣営は「TPP、生産調整、農協潰しが一体であることを見抜き、TPPを軸に国民的課題として戦う必要がある」と指摘する。
しかしJAグループは、JA全中が経団連と連携し「農業活性化」のための研究を始めたり、JA共済連が東京海上日動火災との業務提携を追求したりしている。「農業者の協同を事業化する“農協らしさ”の追求よりも、民間大手企業との連携に活路を見出そうとしている」とこうした動きに懸念を示す。
この提携には、本間教授がその危険性を強調。これを「共済と保険の垣根を越えた提携」と捉え、「共済自ら共済でなくなる道へ踏み出すもの。影響は広く生協や労働者などの協同組合と共済に及ぶ。人間の組織でなくなり、市場原理のみが支配するようになったとき、日本の社会はどうなるのか」と警鐘を鳴らす。これに対してどこからも声があがらないことが「危機の深さを示している」と付け加える。
(写真)
TPP、生産調整廃止のなかで協同組合の役割で意見交換したシンポジウム
◆危険な保険との連携
さらに、こうした重要な問題が、組合員協議に付されていないことについて、「非公開は協同組合原則に反するものであり、秘密主義は人間と協同の組織にとってはいのちとりになる」と言う。
また共済は、賀川豊彦らによる戦前の産業組合時代からの悲願であり、この運動が1938年の国民健康保険法(旧法)、61年の国民皆保険体制につながった。「その歴史を踏まえているのか」と、歴史の学習を促す。
大関組合長は、耕畜連携による持続可能な農業・産地づくりの取り組みを報告。ナガイモやニンニクなど、県内トップクラスの野菜産地をつくり上げたが、円高による燃料、飼料の値上がりに直面しており、「農業・農村所得の倍増を掲げているが、アベノミクスは何をもたらしたのだろうか。農家からは、小規模農家の切捨てか、将来の営農が心配だ、という声が聞かれる」と報告した。
◆「耕し、繋ぐ」が役割
農協組織の役割については、「子どもや孫たち、そしてその子らも安心して暮らせる次世代、そうした社会づくりを目指している。そのために守るべきは“食”でり、それを支える農地、つまるところ農業である。“耕し、そして繋ぐ”ことが我々の役割だ」と結んだ。
(関連記事)
・【提言】七つの難局、七つの課題 規制改革会議の議論から 大妻女子大学教授・田代洋一氏(13.11.14)
・【TPP】12月3日に全国集会 決議実現訴え (13.11.13)
・【提言】地域と暮らしを守る農業協同組合の挑戦 三重大学招へい教授・石田正昭氏 (13.11.14)
・TPP対抗軸の構築を 協同組合学会がシンポ (13.10.09)
重要な記事
最新の記事
-
米の作況指数の公表廃止 実態にあった収量把握へ 小泉農相表明2025年6月16日
-
【農協時論】米騒動の始末 "瑞穂の国"守る情報発信不可欠 今尾和實・協同組合懇話会委員(前代表)2025年6月16日
-
全農 備蓄米 出荷済み16万5000t 進度率56%2025年6月16日
-
「農村破壊の政治、転換を」 新潟で「百姓一揆」デモ 雨ついて農家ら220人2025年6月16日
-
つながる!消費者と生産者 7月21日、浜松で「令和の百姓一揆」 トラクターで行進2025年6月16日
-
【人事異動】農水省(6月16日付)2025年6月16日
-
3-R循環野菜、広島県産野菜のマルシェでプレゼント 第3回ひろしまの旬を楽しむ野菜市~ベジミル測定~ JA全農ひろしま2025年6月16日
-
秋田県産青果物をPRする令和7年度「あきたフレッシュ大使」3人が決定 JA全農あきた2025年6月16日
-
JA全農ひろしまと広島大学の共同研究 田植え直後のメタンガス排出量調査を実施2025年6月16日
-
生協ひろしま×JA全農ひろしま 協働の米づくり活動、三原市高坂町で田植え2025年6月16日
-
JA職員のフードドライブ活動で(一社)フードバンクあきたに寄贈 JA全農あきた2025年6月16日
-
【地域を診る】「平成の大合併」の傷跡深く 過疎化進み自治体弱体化 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年6月16日
-
いちじく「博多とよみつひめ」特別価格で予約受付中 JAタウン2025年6月16日
-
日本生協連とコープ共済連がともに初の女性トップ、新井新会長と笹川新理事長を選任2025年6月16日
-
【役員人事】日本コープ共済生活協同組合連合会 新理事長に笹川博子氏(6月13日付)2025年6月16日
-
【役員人事】2027年国際園芸博覧会協会 新会長に筒井義信氏(6月18日付)2025年6月16日
-
農業分野で世界初のJCMクレジット発行へ前進 ヤンマー2025年6月16日
-
(一社)日本植物防疫協会 第14回総会開く2025年6月16日
-
農業にインパクト投資を アンドパブリックと実証実験で提携 AGRIST2025年6月16日
-
鳥取・道の駅ほうじょう「2025大大大スイカフェスティバル」22日まで開催中2025年6月16日