JAの活動:農協時論
【農協時論】感性豊かに―知識プラス知恵 農的生活復権を 大日本報徳社社長 鷲山恭彦氏2025年12月19日
「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならいのか」を、生産現場で働く方々や農協のトップの皆様などに胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回は大日本報徳社社長の鷲山恭彦氏に寄稿してもらった。
大日本報徳社社長 鷲山恭彦氏
令和の時代に何と米騒動が起こるとは。これまでの政治の大きなゆがみが根本原因ですが、工業化社会の到来で、日本人の基盤にあった農的生活から遠ざかってしまったのも一因でしょう。
まず子どもたちに土に親しんでもらおう。土はあらゆるものを受け入れてくれる。土が汚いなどという若い母親がいるが、とんでもない、土はあらゆるものを育ててくれる。土ほど素晴らしいものは無いではないか。子ども達が野菜作りに取り組む掛川の「報徳いもこじ農楽塾・やさいクラブ」はこうして生まれました。
学校の近くに畑を借りて小学生が集い、保護者も参加し、地域の有志も協力した、子どもたち主体の野菜作りです。ジャガイモ一個を土の中に植えると、何と15個にも20個にもなる。人間がいくら頑張っても、このようなことはできない。土のすごさ、ジャガイモの神秘、自然の不思議さを子どもたちは実感します。
枯れたり、虫にやられたり、思いがけない事態が起こります。芽欠きをしないと良いトマトは出来ません。スーパーに並ぶきれいな野菜になるのは大変なことだと悟ります。水やり当番になり、見たこともなかったテレビの天気予報を見るようになります。育てる苦労と楽しさ、収穫の喜び、自ら育てたジャガイモ、インゲンを食べる喜び、そして販売。体験は知識を生き生きとした知恵に変えます。
教科書の勉強も大切ですが、体験で学ぶことはもっと大切です。体と心を全開して、土に親しみ、肌身で自然のすごさを感じます。
驚き、感動、喜びは教育の原点でしょう。大自然との格闘は教室で学ぶのとは全く違った体験獲得です。
教室での学びは、どうしても知識の伝授が主になります。新しい知識は大きな喜びでしょう。Aの話がBにつながりCになる。A=B=C=Dというつながりは、新しい世界を開きます。
しかし、最初のAが現実を正確に豊かに映していなければ、後に続くBもCもDも、不十分だったり、間違いになってしまいます。
昭和世代の私たちは、水道も無く、井戸から水を運ぶなど、生活体験がたくさんありました。そこから生まれた経験則は知恵の塊です。等身大の思考と実践ですから、まろやかで自然です。全体を含んだ目配りがあります。
学校はどうしても論理中心主義の世界になります。最近つくづく思ったのは、農水省の優秀な皆さんが書いたであろう「農業基本法」やその関連文書を読んだ時です。大農経営が良いとか、輸出農産物を奨励するとか、まったくその通りで、数値やデータからはそうなるのでしょう。しかし、実際に農業経営に苦しみ、後継者探しに心をくだく農家の胸に響くところはありません。よくできた文章ですから反論しにくいのですが、農業に連なる経験があれば、あの様な書き方にはならないだろうと思いました。
私自身、そういう落とし穴に落ちていると感ずる時が多々あります。知識中心、論理中心の学びは、知性に大きな問題を生じさせます。知識や情報、AIの判断も含め、これら知識は大変重要ですが、それは私たちにとって必要条件ではあっても、十分条件ではありません。
現実の矛盾や問題を生き生きと受容する感性無くしては、そして等身大で受け止める経験無くしては、人間の知性、知的判断にどこかゆがみが生まれるのではないでしょうか。頭でよく考えられても、人間や社会の本質に触れたものにならないならば、意味はありません。
大地の上に立ち、土の素晴らしさを知ろう
畑を耕し、額に汗して働く喜びを体験しよう
育つ野菜をよく観察し、自然の豊かさ、奥深さを極めよう
「野菜クラブ」の旗印です。都市生活者にも半農半Xの生活が可能な時代です。農的生活を復権しましょう。知性と感性を豊かに生き生きと発露させましょう。
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