産直を中心に地域再生 協同組合の役割で討議2017年3月15日
生消研がシンポ
協同の組織は地域再生にどのように関わるかー。食糧の生産と消費を結ぶ研究会(松本和広会長=和歌山県紀ノ川農協専務理事)は、3月11日東京都内で「地域再生と協同組合」のテーマでシンポジウムを開いた。組織の形態にこだわらず、地域における「協同」あるいは「共同」の組織が担うべき役割について、特に産直販売の取り組みをもとに意見交換した。生協やJA関係者など80人が参加した。
シンポでは愛媛県西予市でミカン経営を営む株式会社 地域法人 無茶々園の大津清次代表取締役が同園の40年の歴史、事業・活動を報告。同園は、直売や6次産業化、漁業者と連携した環境維持活動、介護や配食サービス、段々畑を活用した観光事業など、幅広い事業を展開。農業をめざす若者や、1万人以上におよぶ消費者会員の共感を呼んでいる。こうした活動が評価され、平成28年度農林水産祭のむらづくり部門で天皇杯を受賞した。
もともとは1982年、農薬・化学肥料漬けの農業に疑問を持った若者が有機農業でミカン栽培に取り組んだことからスタート。有機農業のなかから、モノの売り買いだけでなく、産直による消費者との相互理解の必要性を学んだ。現在、ミカン園148haで、加工品を含む売上高は9億円に達し、直販を支援する消費者会員は全国9500人に達する。
大津代表取締役は無茶々園の40年の成果について、「農家組織が地域組織になった」ことを挙げる。これは最近の介護事業や、キヌサヤエンドウの栽培など地域での仕事おこし、そして海外実習生を含めた就農のための研修事業などの取り組みが地域で評価されてきた。「まちづくりを、大手を振って言えるようになった」と同氏。
そしてめざすは、「自立した百姓を育て、自立した地域をつくることだ」という。そのためには「10年、20年先を見据えた事業・運動を。そのためにはいま種まきして、10年後に刈り取ろう」と、教育による人材の育成に力を入れている。
協同組織とは異なるが、道の駅を拠点とした地域デザインづくりで、群馬県川場町の(株)田園ブラザ川場の松井清一常務が、第3セクターによる村づくりで報告。道の駅を同村の村づくりの基本路線である「農業+観光」の集大成事業として位置づけ、地場食品の振興、新規開発を担う。併せて川場村の商業、情報、ふれあいの場としてタウンサイト(中心街区)の形成をめざしている。
同村には東京都世田谷区との交流があり、来村・滞在型の交流が定着。人の交流とともに、道の駅のファーマーズマーケット等を通じて、農産物やその加工品の産直も実現している。とかく都市消費者との交流は都市側の一方的な取り組みになりやすいが、松井常務は「区民、村民のレベルで、ソフト面での交流が可能になり、閉鎖的な村の文化を変えた。さらにレベルアップしたい」という。いまでは、世田谷区の小学生は全員、一度は村を訪れるまでになった。
生活協同組合連合会コープネット事業連合の赤松光理事長は、生産者と生産者の産直による地域づくりの取り組みを紹介。同事業連合は、2008年にJAも含めた460余りの産地とコープネットエリア産地協議会を設けており、品目ごとの部会をエリアごとに立ち上げている。特に生産者の高齢化による供給不足を危惧しており、若手の生産者を応援する取り組みに力を入れている。
また、産直の歴史や意義について知らない生協の職員や組合員が増えているが、赤松理事長は「第1世代がつくった産直は、生産と消費をつなぐという生産から流通の新しい仕組みづくりで、世の中にないものをつくるというイノベーションだった。しかし、いまは世の中が追いついてきた」と、職員や組合員への教育の必要性を指摘した。また産直は新しい段階に入ったとの認識を示し、課題として(1)国内のパイ(市場)を掘り起こす、(2)地域同士の交流で生産を支える、などを挙げた。
(写真)産直の意義でシンポジウム
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