農福連携 3000の主体を目標-政府2019年6月19日
農林水産省は6月7日に開いた政府の農林水産業・地域の活力創造本部で新たな政策課題について吉川農相が説明し、そのなかで、政府一体の会合で決めた農業と福祉の連携を進める推進ビジョンを説明し、新たに3000の取り組みを創出する目標に掲げた。吉川農相は「農業と福祉の双方にウィン・ウィンの取り組みとなる農福連携を全国に展開していく」などと話した。
農福連携等推進ビジョンは6月4日に菅官房長官が議長の農福連携等推進会議で取りまとめた。
農業と福祉が連携し、障害者が農業現場で働くことを通じて農業経営の発展とともに、障害者の自信や生きがいを創出し社会参画を実現しようという取り組みだ。人手不足の農業にとって貴重な働き手になることと同時に障害者の生活の質の向上が期待される。
平成30年度の調査(日本基金「農福連携の効果と課題に関する調査結果」)によると、農福連携に取り組む農業経営体の約8割が「受け入れた障害者が貴重な人材となった」、「5年前と比較して年間売り上げが増加した」と回答し、約6割が「労働力確保で営業等の時間が増加した」と回答している。
また、障害者就労施設からは約8割が「利用者に体力がついて長い時間働けるようになった」や、約7割が「過去5年間の賃金・工賃が増加した」と回答している。
ビジョンのなかで政府は「農福連携は地域において農業と福祉の双方がウィン・ウィンの関係を構築する取り組み。全国的に広く展開し各地域で農福連携が当たり前のものとして定着するようにしていくことが重要」と強調している。
ただ、まだこうした取り組みが知られておらずまず認知度の向上に官民挙げて取り組みを進める。
アンケート調査など定量的なデータを収集・解析し農福連携のメリット客観的に提示したり、優良事例を取りまとめ、各地の取り組みを分かりやすく情報発信する。農福連携で生産された商品のキャンペーンなどPR活動や、農福連携マルシェなど東京オリ・パラに合わせた戦略プロモーションも実施する。
また、農福連携をどうやって始めていいか分からないというケースも多いと考えられることから、ワンストップで相談できる窓口体制の整備や、スタートアップマニュアルの作成、試験的に農作業受託等を短期間行う「お試しノウフク」の仕組みの構築や、特別支援学校における農業実習の充実なども進める。
農業経営を発展させるために農福連携の特色を生かした6次産業化の推進、GAPの実施などにも取り組む。
さらに「農」と「福」それぞれの広がりを推進し地域共生社会の実現をめざす。農業以外にも林業、水産業でも障害特性に応じたマッチング、研修の促進などを進め、障害者就労モデル事業の創設もめざす。
福祉の側は高齢者、生活困窮者、ひきこもりの状態にある人など働きづらさや行きづらさを感じている人の就労、社会参画の機会の確保としても農福連携を促進していく方針だ。
政府の農福連携等推進会議にはJA全中の中家徹会長も委員として出席。障害者、農家の双方がメリットを感じるかたちが必要であることを指摘した。また、全国で50JAほどで取り組んでおり、これから増やしていくには障害者と農家を結びつけるコーディネーター育成が重要でJAグループも力を入れていく考えを示した。
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