ムーンショット型研究開発でプログラムディレクター公募 生研支援センター2020年2月26日
生物系特定産業技術支援センター(生研支援センター)は、1月23日の内閣府「総合科学技術・イノベーション会議」で決定したムーンショット目標5「2050年までに、未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出」の実現に向けて、研究開発全体を統括するプログラムディレクター候補者の募集を開始した。
ムーンショット型研究開発制度の概要及び目標案について(内閣府資料)(クリックで拡大)
農林水産省は、内閣府の主導の下、ムーンショット型研究開発制度に基づき、"困難だが実現すれば大きなインパクトが期待される挑戦的な研究開発"を推進するため、生研支援センターに基金を設置し、ムーンショット型農林水産研究開発事業を実施する。
同センターは、この事業実施のために必要となるプログラムディレクターの候補者の募集を開始した。概要は次のとおり。
▽公募期間 2月21日から3月13日まで
▽公募の詳細 生研支援センターのホームページ参照
総合科学技術・イノベーション会議で決定したムーンショット目標5は、「2050年までに、未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料産業を創出」である。同会議は、次の3つをターゲットに挙げている。
▽2050年までに、微生物や昆虫などの生物機能をフル活用し、完全資源循環型の食料生産システムを開発する。
▽2050年までに、食料のムダを無くし、健康・環境に配慮した合理的な食料消費を促す解決法を開発する。
▽2030年までに、上記システムのプロトタイプを開発・実証するとともに、倫理的・法的・社会的(ELSI)な議論を並行的に進めることにより、2050年までにグローバルに普及させる。
こうしたムーンショットが目指す社会について同会議は次の3つの社会像を描いている。
▽地球規模でムリのない食料生産システムを構築し、有限な地球資源の循環利用や自然循環的な炭素隔離・貯留を図ることにより、世界的な人口増加に対応するとともに地球環境の保全に貢献する。
▽食品ロスをなくし、ムダのない食料消費社会を実現する。
▽人工的物質に依存しない、地球本来の生物・自然循環が円滑に機能する社会を実現する。
また、同会議は、こうした社会の実現を目指すために高い目標(ムーンショット)を設定した背景として次の6つの問題意識を掲げている。
▽世界的な人口増加により、2050年には穀物需要量が現行の1.7倍にも達すると予想され、食料需給のひっ迫が必至の状況にある。
▽温暖化に伴う異常気象の頻発や、肥料や灌漑用地下水の枯渇等も進行する。
▽食料の元となる有機物は、農作物、食品、排出物、土壌物質等として循環しているが、その循環の破綻が、気候変動、食料供給の持続性への傷害等、地球環境に悪影響を及ぼす。
▽有限な鉱物資源を原料とした化学肥料や農薬等の多投は、自然循環に悪影響を及ぼす。
▽今後は、本来の自然や生物機能を最大限に活用した、ムリ・ムダのない社会経済活動を生み出すことが益々重要になる。
▽昆虫、土壌微生物、人体内微生物等にあっては、未利用な機能が多数存在しているものと推測され、これらの機能を活用した新たな社会経済活動のシステム化を図ることが必要である。
なお、同会議が1月23日に決定した「ムーンショット目標」は次の6つである。
▽目標1 2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現
▽目標2 2050年までに、超早期に疾病の予測・予防をすることができる社会を実現
▽目標3 2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現
▽目標4 2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現
▽目標5 2050年までに、未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出
▽目標6 2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現
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