農林水産・食品 現場作業の安全対策 取り組み強化-農水省2020年4月24日
農林水産省は、農林水産業・食品産業の作業安全対策を分野を横断して一層推進する対策を強化する。安心して働ける環境にしなければ農業などに若者が未来を託せないとして、3月17日には安全対策の取り組み気運を醸成することを目的にシンポジウムを開催、その内容を4月23日に農水省ホームページで配信した。また、作業安全対策に役立つスマート農業技術などを集めた新技術カタログも作成した。
農林水産業・食品産業の現場での作業安全対策は、これまでも各分野で取り組みが進められてきたが、死傷事故は多発している。
農業では平成29年に304人が死亡した。このうち80歳以上が42.1%を占め、60歳以上では84.2%となる。
高齢者の死傷事故が多数を占め、林業では32.0%(平成30年)、木材・木製品製造業では25.0%(同)、漁業では26.4%(平成29年)、食品製造業では28.5%(平成30年)となっている。
業種別の死傷率(年間千人あたり)は、全産業で2.3%、建設業で4.5%だが、農業5.2%、食料品製造業5.8%、木材・木製品製造業10.9%、漁業11.6%、林業22.4%となっている。林業は建設業の5倍も高い。
事故原因は、農業では乗用型トラクター(30%)、歩行型トラクター(9%)、農用運搬車(8%)となっている。林業では伐採時の立木(35%)、漁業では漁労作業(52%)で見張り不十分などによる衝突も少なくない。木材・木製品製造では加工用機械(37%)、食品製造業では通路(17%)などとなっている。 農林水産省はこれまでも農業では農作業安全確認運動による啓発活動や、研修会の開催を行ってきたほか、林業では労働災害への取り組みを補助事業採択の評価に入れるなどの取り組みを進めてきた。
これらに加えて最近では新たな取り組みも促進している。農業ではGAPの取り組みで食品安全や環境安全に加えて、労働安全も求められることからGAPを作業安全対策の観点からも拡大していく。また、法人化も推進する。法人化により労災保険の適用となる。
農業の「働き方改革」も推進し、若者や女性などが働きやすい環境にするには安全対策が重要と位置づける。具体的な技術ではハウス内の暑熱軽減対策技術を開発・実用化し農作業中の熱中症対策としている。
今後はこれらに加えてスマート技術の活用も重要になる。
ロボット農機によって危険な作業を無人化・遠隔化することや、アシストスーツで負傷しやすい作業を軽減するなどだ。林業でもリモコン伐倒作業者の導入、漁業でも生簀の確認をダイバーの替わりに水中ドローンで行うなどの例もある。
公開されているシンポジウムでクボタの木股昌俊会長はラジコン草刈機やドローンなどの開発推進とあわせ、この春からトラクタの転落・転倒時にオペレータの命を守る安全フレームやシートベルトの装着を同社が相当程度負担して生産現場に広めていくと表明している。
また、鹿児島県でキャベツや枝豆など中心に37ha経営し、地域で女性が活躍する農業をめざしている大吉農園の大吉枝美さんは安全対策は「GAP取得が契機になった」と話している。従業員自らが危険箇所を洗い出し、それを共有し「作業安全規範」をつくっている。 労働安全衛生総合研究所の梅崎重夫所長は「安全と経営は車の両輪」と話し、安全対策を講じると最初は生産性が落ちるが、ある時点から生産性が上がり始めると強調している。
農林水産省は今後、基本的な安全対策の実施の徹底、スマート技術の活用、安全対策と補助事業のさらなる連携強化などを重視していく。
末松広行農水事務次官は「若者が未来を託せる安全な農林水産業になって初めて成長産業化できる。安全対策は経営改善につながると考えてほしい」と話す。
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