アジサイのゲノム解読に成功、八重咲き性遺伝子特定ーかずさDNA研など2020年6月23日
かずさDNA研究所と日本大学、福岡県農林業総合試験場、宇都宮大学、滋賀県立大学、栃木県農業試験場は、伊豆諸島の青ヶ島に由来するガクアジサイのゲノム解析を共同で行った。
青ヶ島に自生する解析用のアジサイ
アジサイは、ハナミズキなどと同じミズキ目に含まれる被子植物で、ミズキ目のなかで初めてゲノムが解読された植物となる。アジサイ品種「城ヶ崎」と「隅田の花火」に八重咲き性をもたらす遺伝子を特定した。
「隅田の花火」の八重咲き性は、花器官の形成に関わる遺伝子の変異によるものであると推定。梅雨時期に映えるアジサイは母の日のギフトとしての需要もあり、この解析により魅力的な八重咲き品種の開発が容易になる。
【背景】
一般的なアジサイは一重咲きで、装飾花の花びら状のがく片は約4枚。一方、八重咲き品種は約14枚の花びら状のがく片をもつ装飾花が付く。八重咲きは観賞価値が高いため、アジサイの重要な育種ターゲットの一つ。しかし、八重咲きの花には雄しべがないため花粉ができない。
新しい八重咲き品種を作る場合、母親に八重咲きの品種、父親には花粉ができる一重咲きの品種を用いる必要がある。通常は子世代の全ての株が一重咲き、孫世代で1/4が八重咲きとなる。さらに、アジサイは交配してから花を確認するまで3年かかる。
八重咲き品種を効率的に作出するには、幼植物でも八重咲き性を選抜できるDNAマーカーの開発が必要。そのためにアジサイのゲノム情報が必須となるため、ガクアジサイのゲノムを解読することにした。一般的にアジサイは容易に異種と交雑し栄養繁殖もするため雑種性が強いが、八丈島の南70㎞にある青ヶ島に自生するガクアジサイは、ほかの系統との交雑が少なく遺伝的な純度が高いと考えられたため、滋賀県立大学が2012年に枝を採取し挿し木で系統を維持していた個体「青ヶ島ー1」を解析した。
これまでアジサイを含むミズキ目の植物が研究対象になることは少なく、ミズキ目自体のゲノム解析はこれまでほとんど行われなかった。これまでの研究により、アジサイの八重咲きの形質は単一遺伝子座による潜性遺伝であることが分かっていたが、八重咲き品種の「城ヶ崎」と「隅田の花火」に八重咲き性をもたらす遺伝子が同一の遺伝子座にあるのか否か不明だった。
そこで、解読したガクアジサイ「青ヶ島ー1」のゲノム情報を基盤として「城ヶ崎」と「隅田の花火」に八重咲き性をもたらす遺伝子のゲノム上の位置を解明し、八重咲き性を選抜できるDNAマーカーを開発した。
【研究成果の概要と意義】
連続した 1万塩基以上の長いDNA配列を一分子レベルで解析できるPacBioロングリード技術を主に利用し、青ヶ島由来のガクアジサイ「青ヶ島ー1」のゲノム解読を行った。
また、染色体が核内でどのように折りたたまれているかをDNA配列解析により明らかにするHi-C法、および品種間のDNA配列の違いを基にした連鎖地図の作成によって、染色体レベルのDNA配列を構築。ミズキ目の目(もく)レベルとして初のゲノム解読となった。
遺伝解析の結果、「城ヶ崎」および「隅田の花火」に八重咲き性をもたらす遺伝子は、異なる染色体に座乗することが分かった。それぞれの八重咲き性を選抜することができるDNAマーカーを開発した。
「隅田の花火」に八重咲き性をもたらす遺伝子は、シロイヌナズナの花器官形成に関わるLEAFY遺伝子に類似しており、フレームシフト変異により「隅田の花火」は八重咲きになったと推定された。
【将来の波及効果】
アジサイには、八重咲き性のほかにも手まり咲き・がく咲きという花序形態の違いや、覆輪という花弁の縁が白くなる性質など、花きとして魅力的な遺伝的性質がある。研究で解読したアジサイのゲノム配列を基盤として、これらの遺伝子を解明するための研究が加速する。アジサイのゲノム研究が進展することで、今後さらに魅力的なアジサイ品種の開発が期待できる。
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