農政:TPP阻止へ! 現場から怒りの声
【緊急インタビュー・山田正彦元農相(上)】コメも関税撤廃 この国から水田が消える TPP 何としても葬り去ろう2016年11月4日
TPP承認案・関連法案について11月4日には衆院TPP特別委員会で与党は強行採決する可能性もある。緊迫する情勢のなか、TPP批准阻止運動の取り組みの先頭に立ってきた山田正彦元農相に緊急インタビューした。
農業者もこのTPP協定についてはよく知らないと思います。
政府はいわゆる重要5品目は守ったと説明しています。協定では7年後には関税撤廃に向けて再協議することになっているのに、政府は関税撤廃には応じない、だから大丈夫だ、一部関税が下がっていく品目については十分な対策をとるから大丈夫だと言っています。 ところが、全然そうじゃない。
TPP協定の第2章4条では、関税についてelimination、つまり「撤廃」と書いてあるのに農水省は関税の措置だといって国民に嘘をついて説明してきました。
日本がこれまで締結してきた通商協定では関税撤廃については、全部、除外です。米韓FTA(自由貿易協定)でも韓国のコメは除外です。
それが今回のTPP協定ではコメも関税撤廃されるということです。これは協定に「除外」という文言がないことからも明らかですし、ニュージーランド政府のウェブサイトでは米韓FTAでは韓国はコメを除外例に入っているが、TPPで日本は除外例に入っていないということが書かれています。日本も外務省、経産省はそれを認めていますが、農水省は未だに例外があるといって国民、農民に嘘を言っています。
◆ ◆
いつコメも関税が撤廃されてしまうのか。私が以前、USTR(米通商代表部)の当時の次席代表代行のマランティス氏に会ったときに、コメに関税の例外はあるのかと聞いたら、「ない」と答えました。では、アメリカは何年で関税撤廃を考えているのかと聞くと、7年でということでした。
その後、1年半ほど前にワシントンで当時のカトラー次席代表代行と話したときに、コメだけでも例外になるかと同じ質問をしたら、コメも関税撤廃だと答えた。では、何年でと聞いたら、そのときには何年とは言わず、長期ステージで、とだけ答えました。
コメが関税撤廃されたらどうなるか。今、ベトナムで日本のコシヒカリが10万t以上生産されていますが、それが5kg50円でネット販売されています。ベトナムは3毛作ができるし人件費が日本の50分の1。関税撤廃されたらこのベトナムのコメが日本に入ってくることになる。
私が農相のとき、コメ60Kgの生産コストを調べたら、米価が60Kg1万5000円を割ったら農家が赤字なることが分かった。そのときに岩盤部分を1万5000円とし、それよりも下がったら価格補償をしようと、農家1人1人に10aあたり1万5000円の直接支払いを行って所得補償をする戸別所得補償政策を実施しました。 60kg1万5000円を5kgに換算すると1250円になる。つまり、5kgあたり1250円以下で売ったら農家はみな赤字になるわけですが、それが関税撤廃でベトナムから5kg50円、100円のコメが入ってきたらどうなるか。コメ農家もベトナム産のコシヒカリを買って食べるようになって日本から水田が消えてしまう。そういうことになっていくのではないか。
だから、このTPP協定を批准させたら米農家は日本から消えていくことになる。伝統文化、祭りも消えていく。
地方も消えていく。地方の公共事業もTPP協定の第15章では米国やベトナムなど加盟国の建設業者などに対して日本語だけではなく英文で入札を行わなければならなくなる。3年後の再交渉で小さな自治体までそうなる。そうなったときに地方は本当に消えていくのではないか。
(写真)山田正彦氏
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(146)-改正食料・農業・農村基本法(32)-2025年6月14日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(63)【防除学習帖】第302回2025年6月14日
-
農薬の正しい使い方(36)【今さら聞けない営農情報】第302回2025年6月14日
-
群馬県の嬬恋村との国際交流(姉妹)都市ポンペイ市【イタリア通信】2025年6月14日
-
【特殊報】水稲に特定外来生物のナガエツルノゲイトウ 尾張地域のほ場で確認 愛知県2025年6月13日
-
【注意報】りんごに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 岩手県2025年6月13日
-
SBS輸入 3万t 6月27日に前倒し入札2025年6月13日
-
米の転売 備蓄米以外もすべて規制 小泉農相 23日から2025年6月13日
-
46都道府県で販売 随意契約の備蓄米2025年6月13日
-
価格釣り上げや売り惜しみ、一切ない 木徳神糧が声明 小泉農相「利益500%」発言や米流通めぐる議論受け2025年6月13日
-
担い手への農地集積 61.5% 1.1ポイント増2025年6月13日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】生産者米価2万円との差額補填制度を急ぐべき2025年6月13日
-
井関農機 国内草刈り機市場を本格拡大、電動化も推進 農機は「密播」仕様追加の乗用田植え機「RPQ5」投入2025年6月13日
-
【JA人事】JA高岡(富山県)松田博成組合長を新任(5月24日)2025年6月13日
-
【JA人事】JAけねべつ(北海道)北村篤組合長を再任(6月1日)2025年6月13日
-
(439)国家と個人の『食』の決定権【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年6月13日
-
「麦とろの日」でプレゼント 東京のららぽーと豊洲でイベントも実施 JA全農あおもり2025年6月13日
-
大学でサツイマイモ 創生大学と畑プロジェクト始動 JA全農福島2025年6月13日
-
JA農機の成約でプレゼントキャペーン JA全農長野2025年6月13日
-
第1回JA生活指導員研修会を開催 JA熊本中央会2025年6月13日