農政:どうするのか?この国の進路 高市政権を考える
消費税減税は「永田町用語」 総選挙後の路線変更あるやなし 「月刊日本」編集長・中村友哉氏【高市政権を考える】2026年1月27日
就任から間もない高市早苗政権が、いきなり衆院解散という大きな賭けに出た。支持率を追い風にした短期決戦は、国民に何を問い、どこへ向かおうとしているのか。内外に不安と緊張が広がるなか、この国の進路はどこに定めるべきか。高市政権と日本の現在地を読み解く連載「どうするのか?この国の進路 高市政権を考える」というテーマで「月刊日本」編集長の中村友哉氏に寄稿してもらう。(月1回連載)
衆院解散について会見に臨む高市早苗首相、2026年1月23日(首相官邸ホームページより)
通常国会冒頭解散を受け、異例の真冬の選挙戦が始まった。高市早苗首相がこのタイミングで解散を決断した大きな理由は、経済財政問題と安全保障問題だろう。高市首相はかねてから消費税減税を唱えていたが、自民党内の反対もあり、首相になると持論を封印した。また、自身の台湾有事をめぐる不用意な国会答弁に中国が反発し、日中関係は袋小路に陥ってしまった。これらを打開するために、解散総選挙で勝利し、自らの権力基盤を強化しようとしているのだろう。
現時点では選挙結果がどうなるかはわからない。高市内閣は高い支持率を維持してきたので、常識的に考えれば自民党は議席を伸ばすだろう。しかし、公明党が連立を離脱したことで、自民党は公明党票を失った。これらの票は基本的に公明党と立憲民主党の新党「中道改革連合」に投じられる。この影響は決して小さくない。また、最新の世論調査では高市内閣の支持率は大きく下がっている。それでもまだ高支持率を保ってはいるが、新政権発足後のハネムーン期間が終わったとするなら、今後も支持率下落が続く可能性がある。
しかし、最大の問題は、自民党が選挙に勝ったとしても、高市首相の懸案事項である消費税減税も中国問題の解決も困難だということだ。
現在、高市首相が積極財政を掲げていることで、財政悪化への懸念が広がり、長期金利が上昇している。この状況で消費税に手をつければ、金利はさらに上昇するだろう。
これは選挙で自民党がどれだけ議席を得ようが関係ない。仮に自民党が単独で過半数の議席を占めたとしても、消費税を下げれば財政悪化への懸念から金利は上昇する。日本の民意が高市政権を支持したところで、金利の上昇は抑えられない。マーケットからすれば、そんなものは日本の財政状況を判断する材料にならない。
そのため、選挙後も高市首相が消費税減税に踏み切ることは難しいだろう。おそらく自民党内でもこうした認識はある程度共有されていると思う。それが端的にあらわれているのが、自民党の衆院選の公約に、消費税減税について「検討を加速」としか書かれなかったことだ。これは典型的な永田町用語であり、要するに「やらない」ということである。また、片山さつき財務相も1月23日の会見で、消費税減税について「まだ何も決まっていない」と述べている。
中国問題に関しても、自民党が議席を増やしたところで事態は改善しない。自民党が単独過半数を占めたとしても、中国の習近平国家主席が対日圧力を和らげるとは思えない。むしろ高市政権の政権基盤が強固になり、中国に強く出てくることを警戒し、ますます態度を硬化させるかもしれない。
高市首相は中国の圧力を跳ね返すために米国のトランプ大統領に頼ろうとしているが、トランプ大統領には中国と対立する気はまったくない。1月23日に米国防総省が国防の方向性を示す文書「国家防衛戦略」を公表したが、そこには台湾への言及はなかった。今年、トランプ氏と習近平氏はワシントンと北京を相互訪問する予定であり、アジア太平洋経済協力会議(APEC)やG20でも首脳会談が行われる可能性がある。年に4度も対面で会談しようというのに、事を荒立てるはずがない。少なくともトランプ政権の間は、日中対立をめぐり米国が日本の肩を持つことはない。
そういう意味では、選挙結果がどうなろうとも、高市首相の狙いは実現できず、真冬の選挙は大いなる茶番に終わるだろう。
最後に、これまで論じてきた見方とはまったく違う仮説について触れておきたい。高市首相がむしろ消費税減税を封印し、中国との関係改善を図るために選挙に打って出た可能性だ。
今回の解散戦略には、内閣官房参与の今井尚哉氏が関わっていたと言われている。今井氏は安倍晋三内閣で首相秘書官を務め、安倍氏から全幅の信頼を寄せられ、強大な影響力を持っていた。安倍政権は事実上、今井政権だったと言っても過言ではない。
今井氏は経産省出身だが、安倍政権時代、反財務省の人たちと戦ってきたと明かしており、積極財政に批判的である。また、外交や安全保障に関しては現実主義的な姿勢を重視し、中国との対立は避けるべきとの立場である。安倍政権当時、二階俊博自民党幹事長が中国を訪問し、習近平氏に安倍首相の親書を手渡したことがあった。この親書を手掛けたのは国家安全保障局長の谷内正太郎氏で、原案には中国の進める一帯一路に慎重に対応していく旨が記されていた。ところが、今井氏はこれを大幅に書き換え、一帯一路を評価する内容に変更してしまったという。
選挙で自民党が議席を伸ばせば、当然解散を強く勧めた今井氏の力は大きくなる。そうなれば、高市首相が君子豹変(ひょうへん)し、今井路線に転じる可能性もないわけではない。というより、現実的に考えれば、それしか高市首相の選択肢はない。もし高市首相が今井路線を拒否すれば、金利の上昇やインフレは止まらず、中国の経済圧力も強まり、政権は早晩行き詰まるだろう。そうなれば、来年の自民党総裁選までに高市氏は退陣を迫られることになるかもしれない。
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