遺伝解析が困難なサツマイモの有害線虫 抵抗性個体を高効率で選抜できるDNAマーカーを開発 岡山大学大学院など研究グループ2020年3月16日
岡山大学大学院と農研機構九州沖縄農業研究センター、かずさDNA研究所の共同研究グループは、遺伝解析が難しいサツマイモで、有害線虫への抵抗性個体を高い効率で選抜できるDNAマーカーの開発に成功した。今後、抵抗性品種の効率的な育成が可能になると期待される。
サツマイモの収量や品質に甚大な被害をもたらす土壌性有害線虫として知られるサツマイモネコブセンチュウ。生産現場では、農薬を用いた土壌消毒などによる防除が行われているが、コストがかかり、消毒作業により刺激臭が発生するなど、さまざまな問題点が指摘されている。そのため、土壌消毒の使用量を減らす、または、まったく使わずに栽培可能な抵抗性品種の育成が求められているが、サツマイモは遺伝様式が複雑で、遺伝情報を利用した品種育成は困難だった。
こうした状況を受け、同研究グループは、サツマイモを対象に次世代シーケンサーを利用した大規模な遺伝解析を行い、サツマイモゲノムにおける数千のDNA多型情報を解析。ゲノムワイド関連解析や高密度な連鎖地図の作成、QTL解析などを実施した結果、抵抗性を制御すると想定される遺伝子領域が明らかになった。
さらに、見つかった遺伝子領域のDNA配列情報から、実際の育種現場で使える選抜DNAマーカーの開発にも成功。これを使えば、複数のレース(種類)に対して、サツマイモ植物体が抵抗性か感受性かを高い確率で見分けることができるという。
同研究に参画した岡山大学大学院環境生命科学研究科の門田有希准教授は「プロジェクトを始めてから良好な結果が出るまで5年もかかった。紆余曲折あったが、結果的に良いDNAマーカーを開発することができた。これからもサツマイモの遺伝育種に関わる研究を活発に進めていきたい」と話している。
同研究は、多くの作物種が抱える倍数性という遺伝解析における障壁を克服し、実学的な技術を開発した点において学術的意義が高い。研究成果は、2019年8月3日に英国のオンライン科学雑誌「DNA research」に掲載された。
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