生態系を利用した防災・減災へ 特定立地の水田が洪水被害を緩和2021年6月30日
東京都立大学大学院 都市環境科学研究科の大澤剛士准教授、京都産業大学 生命科学部の西田貴明准教授、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの遠香尚史主任研究員の研究チームは、凹地や谷地形のような場所に水田が多く存在する特定立地の水田が、市街地への洪水被害を緩和することを明らかにした。
本研究における水田による災害被害緩和の考え方
急増する自然災害に対応する手段の一つとして、生態系を利用した防災・減災(Ecosystem Based Disaster Risk Reduction:Eco-DRR)という考え方が広がっている。Eco-DRRは、自立して維持できるシステムである生態系を防災インフラとして利用することで、定期的なメンテナンスが必要な人工工作物に比べて維持管理コストを大幅に低減。さらに生態系がもたらす様々な利益を享受することも期待でき、持続可能な防災インフラの新しい考え方となっている。
研究チームは、全国に広く存在する生態系である水田に注目し、統計情報から得られた洪水の被害面積と、水田の立地条件の関係を検討したところ、地表面を流れる水を貯めやすい地形条件下、すなわち凹地や谷地形のような場所に水田が多く存在する地域では、市街地への被害が相対的に低くなることを明らかにした。このことは、特定立地の水田は氾濫水を受け止め、市街地への被害を緩和する機能が高いことを示唆。これらの立地に存在する水田は、平時は食料生産を行い、水害時にはEco-DRRを実現する防災インフラ、すなわちグリーンインフラとして利用できる可能性がある。
同研究成果は、6月23日付け(日本時間)で、ELSEVIERが発行する英文誌International Journal of Disaster Risk Reductionで発表された。
特定立地の水田が多い市町村で発生した水害は、市街地への浸水比率が低い傾向が検出された
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