ハス田の泥中のレンコンを食べる「カモ被害」実態を初めて確認 農研機構2022年11月30日
農研機構は、野生のカモ等が、水が張られたハス田の泥中にあるレンコンを食べる様子を初めて確認。ハス田に試験的にレンコンを埋め、夜間のカモ等の行動を動画撮影した結果、一部のマガモ、オオバンが、水面下約40センチの深さまで採食することがわかった。この成果は、鳥類による全国の農作物被害額の約1割を占める霞ケ浦周辺でのレンコン被害に対し、効果的な被害対策を講じるために欠かせない知見となる。
1回の試験で設置・回収したレンコンの様子
全国一のレンコン産地である茨城県霞ケ浦周辺では、カモ等によるレンコン被害が報告されている。その被害額は、鳥類による全国の農作物被害額の約1割を占める年間約3億円(2020年度)にのぼる。
レンコンはハス田の泥中にあり、食害は夜間に生じるため、その様子を直接確かめることが極めて難しい。秋〜冬の収穫の際、泥中から掘り上げたレンコンにえぐられた傷があって出荷できなくなる場合があり、夜間のハス田でカモ等の群れが見られることなどから「カモ被害」と認識されてきたが、実際にどの種が、どのようにレンコンを食害しているかは不明だった。対策として多くのハス田に防鳥網が設置されているが、カモ等の侵入を完全に防ぐことは難しく、野鳥の羅網死が相次いでいるため環境保全上の問題にもなっている。
レンコンを食害する種や採食行動を明らかにすることは、被害の実態を把握し、効果的な対策を計画・実行していく上で不可欠。そこで農研機構は、収穫後のハス田に試験的にレンコンを設置して夜間のカモ等の採食行動を動画で撮影し、マガモとオオバンが繰り返し倒立しながら水面下約20〜40センチの泥中でレンコンを食べる様子を確認。その際、マガモは脚で泥を掘る動作も行っていた。
翌朝、レンコンが食べられた範囲の泥面はすり鉢状に掘られており、その底(水面下約40cm)よりも深くにはレンコンが残っていた。他の種では今回は撮影個体数が少なかったため、さらに調査が望まれるが、泥中のレンコンを食べないカモも見られた。
これらの結果から、ハス田の泥中にある収穫前の商品価値のあるレンコンが少なくともマガモとオオバンによる食害を受けること、浅く位置するレンコンほど食害を受けやすいことが示された。同時に、霞ケ浦で越冬する多数のカモ等にとって、周辺のハス田が好適な生息場所となっていることが示唆された。
同成果は、夜間に生じる「カモ被害」の実態の理解に役立つとともに、今後の対策手法を検討していくために重要な知見となる。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(146)-改正食料・農業・農村基本法(32)-2025年6月14日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(63)【防除学習帖】第302回2025年6月14日
-
農薬の正しい使い方(36)【今さら聞けない営農情報】第302回2025年6月14日
-
群馬県の嬬恋村との国際交流(姉妹)都市ポンペイ市【イタリア通信】2025年6月14日
-
【特殊報】水稲に特定外来生物のナガエツルノゲイトウ 尾張地域のほ場で確認 愛知県2025年6月13日
-
【注意報】りんごに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 岩手県2025年6月13日
-
SBS輸入 3万t 6月27日に前倒し入札2025年6月13日
-
米の転売 備蓄米以外もすべて規制 小泉農相 23日から2025年6月13日
-
46都道府県で販売 随意契約の備蓄米2025年6月13日
-
価格釣り上げや売り惜しみ、一切ない 木徳神糧が声明 小泉農相「利益500%」発言や米流通めぐる議論受け2025年6月13日
-
担い手への農地集積 61.5% 1.1ポイント増2025年6月13日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】生産者米価2万円との差額補填制度を急ぐべき2025年6月13日
-
井関農機 国内草刈り機市場を本格拡大、電動化も推進 農機は「密播」仕様追加の乗用田植え機「RPQ5」投入2025年6月13日
-
【JA人事】JA高岡(富山県)松田博成組合長を新任(5月24日)2025年6月13日
-
【JA人事】JAけねべつ(北海道)北村篤組合長を再任(6月1日)2025年6月13日
-
(439)国家と個人の『食』の決定権【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年6月13日
-
「麦とろの日」でプレゼント 東京のららぽーと豊洲でイベントも実施 JA全農あおもり2025年6月13日
-
大学でサツイマイモ 創生大学と畑プロジェクト始動 JA全農福島2025年6月13日
-
JA農機の成約でプレゼントキャペーン JA全農長野2025年6月13日
-
第1回JA生活指導員研修会を開催 JA熊本中央会2025年6月13日