ハスモンヨトウのオスの発生を止める 新規共生ウイルスを発見 農研機構2023年11月27日
南九州大学と農研機構などの研究グループは、農業害虫であるガの1種「ハスモンヨトウ」に共生し、オスの卵発生を止めることでこのガをメスのみにするウイルスを発見。同研究により、同様の宿主オスの発生を止めるという形質は系統的に遠く離れたウイルスに共通して見られることが明らかになり、それぞれのウイルスが独自に獲得した形質である可能性が示された。今後、ウイルスによる生殖操作を利用した害虫防除法への応用が期待される。
ハスモンヨトウの成虫と蛹
昆虫には、多岐にわたる分類群のウイルスや細菌が共生しており、宿主オスの発生を止めて死に至らしめたり、性転換を引き起こすなど様々な方法で生殖操作をしていることが知られている。南九州大学と農研機構の研究グループは、岩手大学、摂南大学と共同で、オスの発生を止めて宿主昆虫をメスのみにする形質(オス致死形質)を持つ昆虫共生ウイルスを、農業害虫であるハスモンヨトウというガの1種から発見し、Spodoptera litura malekilling virus(SlMKV)と名付けた。SlMKVは母から子へ垂直伝播するため、SlMKVを持つメスがSIMKVを持たないオスと交配することで、ハスモンヨトウの集団内で維持されていると考えられる。
全メス形質のメス親から子への垂直伝播と磨砕液を介した水平伝播
今回、SlMKVの全ゲノムの配列を明らかにし、その遺伝子配列を基に、これまでにオス致死形質を持つことが確認されているチャハマキ(ガ類)とショウジョウバエ(ハエ類の共生ウイルスとの系統関係を比較したところ、SlMKVは他の致死ウイルスとは系統的に遠く離れたウイルスであることが明らかになった。
また、ゲノム解析の結果からは7つの遺伝子が見つかっていたが、ショウジョウバエの共生ウイルスから特定されたオス致死の原因遺伝子と似た遺伝子は含まれていなかった。このことから、SlMKVは他の共生ウイルスとは異なる経緯でオス致死形質を獲得したと考えられる。
今回の研究結果は、より多様なウイルスがオス致死形質を引き起こす様々な手段(様々な遺伝子)を独自に獲得している可能性を示す。今後、他のウイルスからもオス致死形質が見つかることが予想され、思いもよらぬウイルスが、実はオス致死形質を持っていた、という発見の可能性もある。
また、ハスモンヨトウは主要な農業害虫であることから、今後、SlMKVによる昆虫の生殖操作やその仕組みを利用した害虫防除法の開発が期待される。
同研究の内容は、論文名「Malekilling virus in a noctuid moth Spodoptera litura」として、米国科学アカデミー紀要『Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)』の11月6日付で公開された。
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