要侵入警戒ウイルス「ToBRFV」トマトやピーマンにおける種子伝染の仕組みを解明 農研機構2024年5月15日
農研機構は、トマトに大きな被害をもたらすtomato brown rugose fruit virus (ToBRFV)が、ピーマンでも種子伝染すると世界で初めて明らかにした。また、トマトやピーマンの種皮にToBRFVが蓄積されることを示した。同成果は、ToBRFVの侵入を防止するため種子への厳密な検疫が重要であることを示し、伝染部位の特定により、検査技術の向上にもつながると期待される。
Tomato brown rugose fruit virus(ToBRFV)は、トマトに生育不良や果実異常を引き起こし大きな被害をもたらすウイルスで、2014年にイスラエルで発生が初めて確認された。 ToBRFVは、ほ場内で急速にまん延し、感染したトマトは生育不良による収量の低下につながる。
ToBRFVは、農林水産省の植物防疫法施行規則において、検疫有害植物として規定されているウイルス。2024年1月現在、日本国内では未発生だが、2024年1月時点で30か国以上に発生が急拡大しており、世界中で生産現場や種子業界がその侵入・感染拡大を警戒している。このウイルスの急速かつ世界的な感染拡大は、主にToBRFVに汚染された種子の流通によるものと推察されている。
一方、ToBRFVはトマト以外にピーマン・トウガラシ類にも感染し、葉のモザイク症状や果実の奇形などが生じることで収量を低下させる(図1)。トマトにおいては、このウイルスが種子伝染することが報告されているが、ピーマンでは種子における伝染形態については明らかになっていなかった。
このほど農研機構は、トマトだけでなくピーマンにおいてもToBRFVが種子伝染することを明らかにし、感染種子の国際的な流通がToBRFVを世界的にまん延させている可能性を示した。
種子伝染のメカニズムの解明のため、まずトマトを用いた試験で、ToBRFVは受粉後、胚珠が種子へと発達する段階で胚珠の珠皮(種子の種皮となる組織)に侵入し、これが種皮の感染を引き起こす可能性が示された。さらに、トマトやピーマンおいて、種皮内部に蓄積されたToBRFVが発芽時に種皮から幼苗に侵入するという種子伝染のメカニズムの一部を初めて明らかにした。
同成果は、種子への厳密な検疫がToBRFVの日本国内への侵入と世界的な感染拡大の阻止に重要であることを示す。国内未発生のウイルスが侵入するリスクを下げること、ひいては世界的な健全種子流通に貢献するものと期待される。また、種子における感染部位が明らかになったことで、今後の種子検査技術向上につながる。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(140)-改正食料・農業・農村基本法(26)-2025年5月3日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(57)【防除学習帖】第296回2025年5月3日
-
農薬の正しい使い方(30)【今さら聞けない営農情報】第296回2025年5月3日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】「盗人に追い銭」「鴨葱」外交の生贄にしてはならぬ農産物2025年5月2日
-
【2025国際協同組合年】情報を共有 協同の力で国際協力 連続シンポスタート2025年5月2日
-
イネカメムシが越冬 埼玉、群馬、栃木で確認 被害多発の恐れ2025年5月2日
-
九州和牛をシンガポール人に人気のお土産に 福岡空港で検疫代行サービスを開始 福岡ソノリク2025年5月2日
-
就労継続支援B型事業所を開設し農福連携に挑戦 有機農家とも業務提携 ハピネス2025年5月2日
-
宮崎ガス「カーボン・オフセット都市ガス」 を県庁などに供給開始 農林中金が媒介2025年5月2日
-
5月29日から「丸の内 日本ワインWeeks2025」開催 "日本ワイン"を学び、楽しむ3週間 三菱地所2025年5月2日
-
協同心の泉 大切に 創立記念式典 家の光協会2025年5月2日
-
【スマート農業の風】(14)スマート農業のハードルを下げる2025年5月2日
-
(433)「エルダースピーク」実体験【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年5月2日
-
約1cm程度の害虫を強力捕獲「吊るしてGET虫ミニ強力タイプ」新発売 平城商事2025年5月2日
-
農中情報システム 自社の導入・活用のノウハウを活かし「Box」通じたDX支援開始2025年5月2日
-
洗車を楽しく「CRUZARD」洗車仕様ホースリールとノズルを発売 コメリ2025年5月2日
-
戦後80年の国際協同組合年 世代超え「戦争と平和」考える パルシステム神奈川2025年5月2日
-
生協の「地域見守り協定」締結数 全市区町村数の75%超の1308市区町村に到達2025年5月2日
-
ムコ多糖症ニホンザルの臨床徴候改善に成功 組換えカイコと糖鎖改変技術による新型酵素2025年5月2日
-
エフピコ×Aコープ「エコトレー」など積極使用で「ストアtoストア」協働を拡大2025年5月2日