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シリーズ:新世紀JA研究会 課題別セミナー

2018.01.29 
高まる消費者の関心 更新100%の種子供給へ【糸賀秀徳・JA茨城県中央会県域営農支援センター副センター長】一覧へ

・「種子法」の役割 改めて確認 ― 茨城県の取り組みと今後の対応 ―

 昨年3月の193回国会で主要農産物種子法の廃止が決まり、平成30年4月1日から法律が廃止されます。国会での審議は僅か5時間で、農業関係者のみならず、国民にも内容がほとんど知らされず、理解もされていません。これも農業・農協を全ての競争条件の下にさらす安倍政権の政策の一環です。種子、食料自給・安全性とも深く関わりのある公共財でもあり、国の関与が欠かせません。また、この問題は、JA関係者だけではなく、農業者や消費者がともに自分の課題として一緒に考えて行く必要があります。茨城県の原種苗センターの原種生産の取り組みを紹介します。

◆1.背景・経過

麦の異株除去作業 私は茨城県職員として昭和59年に採用され、農業の専門職員として、取手農業改良普及所にて水稲、麦の生産振興、農業後継者の育成に始まり、北海道事務所において茨城県農産物の販路開拓等に携わってきた。特に平成7~8年にかけて種子の担当となり、主要農作物種子法に関する業務に直接2年間従事した。
 特に、茨城県では原原種、原種を農業研究所で生産していたが、消費者の食品に対する関心の高まりや消費者に商品選択の目安となる情報を正確に伝える必要のもと、平成11年にJAS法が改正された。同時に異品種混入によるJAS法違反等のリスクを回避するため、実需者が種子更新100%の農作物を要求するようになってきた。
 そのため、種子の更新率を向上させなければならないと、手狭な農業研究所の隣接地を確保して茨城県原種苗センターを整備した。県は当該センターの運営管理を公益社団法人茨城県農林振興公社に委託することにより原種生産を行っている。

(写真)麦の異株除去作業

 

糸賀秀徳・JA茨城県中央会県域営農支援センター副センター長 茨城県原種苗センターの概要は以下の通りである。
 ▽施設面積=23.8ha(施設用地1.8ha、水田10.5ha、畑8.1ha、道路調整池等3.4ha)
 ▽施設内容=本館(管理等)、乾燥調製施設(稲麦原種の乾燥調整2t/h)、水稲育苗ハウス(約2000枚10.5ha分)、大豆乾燥調整施設、原種保管施設(原種保管46t)、周年低温保管20t)、機械格納庫(2棟)のほか堆肥舎。以上総事業費約31億円(用地取得費含む)

(写真)糸賀秀徳・JA茨城県中央会県域営農支援センター副センター長

 

◆2.種子法による関連業務

表1 原原種生産状況(平成29年現在)

 主要農作物種子法(昭和27年法律131号)には、目的として主要農作物(稲、大麦、裸麦、小麦及び大豆)の優良な種子の生産及び普及を促進するために、原原種、原種の生産やほ場の指定、審査等の実施が規定されている。
 県の関わりとしては、指定種子生産ほ場の指定(第3条)、ほ場審査、生産物審査(第4条)、原種、原原種の生産(第7条)、奨励品種の決定調査(第8条)、優良な種子生産を行うための助言・指導(第6条)と規定されている。
 具体的には、ほ場の指定については申請に基づき、指定種子生産ほ場を茨城県農林事務所が本庁からの委任事務として行う。ほ場審査については、種子生産ほ場において、出穂、穂ぞろい、成熟期に異品種や病害の発生状況を審査する。また生産物審査は、種子生産ほ場において生産された種子の発芽の良否、不良な種子及び異物の混入状況を審査する。なお、ほ場審査及び生産物審査は生産者の請求により、種子審査員(農業改良普及員等を任命。平成29年166名)が実施する。
 原種及び原原種の生産については、県が優良な種子生産を行うために「しなければならない」と規定されており、特に農業研究所における種の根源である原原種の生産には相当の時間と労力を要している。(表1参照)

表2 奨励品種の区分と現在の採用品種 県以外のものが経営するほ場において、適正かつ確実に生産が認められる場合には、当該ほ場を指定原種ほ又は原原種ほとして指定することができると規定されており、私の担当していた時においては三井東圧化学の「みつひかり」を指定した経過がある。
 奨励品種決定調査については、県内で普及させる優良な品種を決定するための試験を行うと規定されており、農業研究所における奨励品種決定調査(基本調査、現地調査)の結果をもとに、茨城県農作物奨励品種選定審査会において選定決定等を行っており、普及上必要な区分として、準奨励品種及び認定品種を設定している。(表2参照)

 

◆3.種子場JAによる種子生産

 上述したように、農業研究所による原原種生産、原種苗センター(茨城県農林振興公社)による原種生産を経て、採種ほによる種子生産は県が指定した農家、ほ場で徹底した管理の下で生産される。
 県の採種計画に基づき種子場JAごとに採種計画を作成し、稲、麦、大豆の品種ごとに生産農家と委託契約を締結する。
 生産農家は優良な(高い純度、高い発芽率、充実した粒、病害のない健全なもの)稲、麦、大豆の種子を生産するため、土づくりや病害虫防除、倒伏防止のための肥培管理に取り組むとともに、異株抜き等を徹底することとしている。なお、本県では以下のような種子場JAを有している。
 ▽JA常陸(山方―稲、麦、大豆)〈山方種子センター〉▽同(大宮―稲)▽JA水戸(稲、麦、大豆))〈かつら種子センター〉)▽JAやさと(稲、麦、大豆)〈種子センター〉)▽JAつくば市(稲、麦)〈豊里種子センター〉▽JA北つくば(結城―稲、麦))〈結城種子センター〉▽同(真壁―大豆)▽同(明野―稲)▽JA茨城かすみ(稲、麦)

 

◆4.種子の価格

 稲、麦、大豆の種子価格については、(公社)茨城県農林振興公社が全農茨城県本部、茨集、茨食、県を構成員とする種子流通会議で、一般の生産農家の生産費等を基準に、増加労働経費、流通経費、事故共済費、残量処理費などを加算して設定する。
 なお、原種価格(県から全農茨城県本部への売渡価格)については、県が一般の生産農家の生産費を基準に、増加労働費等を加算して設定する。
(参考)
平成29年産用原種価格 コシヒカリ=467円/kg(県→全農)
平成29年産用種子価格=522円/kg(JA→一般農家)

※このページ「紙上セミナー」は新世紀JA研究会の責任で編集しています。

 

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