【Tour de l'horloge】生・消連携で世論づくりを2013年5月15日
・WFOは2011年設立
・公正な利益、農業者に
・政界と一線画して主張を
・「貿易政策」の採択意義
さる4月15日~17日、世界農業者機構(WFO)の第3回総会が桜満開のもと、新潟市朱鷺メッセで開催された。主催はWFOとJA全中。非加盟国も含む47か国、72団体、250人が参加した。日本からは全国農業会議所、JA全中や新潟県のJA代表ほかが参加した。
バイエル クロップサイエンス株式会社は我が国で農薬関連事業を行う外資系企業である。オブザーバーとしての参加をローマの事務局に申し込んだところ快諾されたので出席した。ここでは、今総会で採択された「国際貿易に関するWFOの政策」(以下、「貿易政策」)について筆者の印象とともに報告する。
◆WFO第3回総会
WFOは2011年設立の新しい組織だ。60余年の活動を続けてきたIFAP(国際農業生産者連盟)が2010年に解散した後、これに代わる組織として設立されたという。家族農業を中心とした各国の農業団体がメンバーである。会長はロバート・カールソン氏(米国、ナショナルファーマーズユニオン副会長)。世界6州ごとに理事が選任され、アジアからは萬歳章JA全中会長となっている。国連やWTOなどの国際機関と連携があり、今総会ではFAO(国連食糧農業機関)、WMO(世界気象機関)から話題提供が行われた。
「貿易政策」は、まずその前文で、農業者が世界の人々に食料を供給する大切な役割を果たすとともに、世界の土地資源の大部分を管理していることを再確認する。その上で、国内経済・農村社会の成長にとって貿易の推進が重要で、WFOは意欲的な政策目標の追及と農産物貿易システムの強化に取組む、としている。
◆公正な利益、農業者に
次にWFOの政策目的として、「輸出補助金や輸出措置の規律強化」「市場アクセスの改善」「貿易歪曲的な国内支持の削減」「途上国に対する特別な待遇」「輸出制限や輸出税に対する規律強化」「地理的表示の適切な保護」等を掲げる。
さらに各国政府・国際機関・その他利害関係者に対しては、「国際基準の強化」「保護的な措置の削減」「能力開発の促進」「農産物市場の透明性と予測可能性の向上」「市場の開放による農業者への公平な利益配分」を求める。例えば「能力開発の促進」については、後発開発途上国の農業者が国際市場にアクセスできるよう先進国政府に支援を求める。また、加工業者・小売業者に対しては、「生産者にとって貿易の障壁となりつつあるプライベートブランド基準をクリアできるよう支援すべき」と求めており、品質や安全性に関する購入側の基準に対して小規模農業者が対応に苦慮している実態が推察される。
◆政界と一線画して主張を
加えてWFOは6項目の「指針となる原則」を明らかにしている。この中で「途上国の農業が貿易によって悪影響を受けないように貿易協定には経済の発展段階が異なることを考慮に入れるべき」と、途上国への配慮の必要性を指摘するとともに、「農業者は、世界および農村の農業経済において極めて重要な利害関係者」のため、政策決定者は農業に関する貿易交渉の開始にあたっては農業者団体と十分な協議を行うよう求めている。カールソン会長は多くの国際会議への出席の経験を踏まえ次のように語る。「農業者自身が政府とは一線を画して主張を明確にしないと農業者の言い分は通らない」「各国の政策決定者は農業のことを実は良く知らない」。
◆「貿易政策」の採択意義
WFOのメンバーは先進国・開発途上国、食料輸出国・輸入国、耕種・畜種農業など国・団体ごとに大きく異なる中にあって、この「貿易政策」が採択されたことは意義がある。この背景には、農産物貿易の重要性の認識はもとより、世界的な気候変動による農産物生産の不安定化や農村人口の減少と都市への流入に伴う農業の担い手不足、水資源の争奪など生産現場にいる農業者ゆえの切迫感があるものと思われる。
世界の人口は現在の70億人から2050年には90億人になると国連は予測している。その中で、飢餓人口は増加している。充分な農産物を生産し、世界の人々にそれなりに分配することが果たして可能か。食料輸入国の我が国としては、飛田稔章JA全中副会長が課題別討議「食糧安全保障」のパネリストとして発言しているとおり、まずは、自国の農業振興と食料自給率の向上、そのための一般消費者と農業者との連携による世論づくりが最も重要であろう。
【著者略歴】
巻渕 進(まきぶち・すすむ)
バイエル クロップサイエンス株式会社マーケティング本部マーケティグエクセレンスグループリーダー
1954年10月生まれ。北海道大学農学部農芸化学科卒。1979年:JA全農農業技術センターに入会。1997年:総合営農対策部営農企画室。2003年:札幌支所資材部長。2004年:TJCケミカル(株)(タイ国の農薬会社)副社長。2007年:肥料農薬部農薬原体・開発課長。2009年:バイエル クロップサイエンス(株)出向、2010年:同社に転籍、現在に至る。広告宣伝・市場調査・新規事業を担当。
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