人事2024 左バナー 
左カラム_シリーズ_防除学習帖
左カラム_病害虫情報2021
新聞購読申込 230901
左カラム_コラム_正義派の農政論_pc
左カラム_コラム_米マーケット情報_pc
左カラム_コラム_地方の眼力_pc
左カラム_コラム_食料・農業問題 本質と裏側
左カラム_コラム_昔の農村・今の世の中_pc
左カラム_コラム_花づくり_pc
左カラム_コラム_グローバルとローカル_pc
左カラム_コラム_TPPから見える風景_pc
左カラム_コラム_ムラの角から_pc
左カラム:JCA160_86
ヘッダー:FMC221007SP
FMCプレバソンPC
FMCプレバソンSP

トランプの就任演説にみる危うさ2017年1月30日

一覧へ

【森島 賢】

 トランプが新大統領に就任し、次々と政策を変更している。
 TPPは永久に離脱することにした。「永久に」というところに、有無をいわせない決意の固さがみられる。安倍晋三首相などの復帰の要請は拒否する、という強い宣言だろう。それでも首相はあきらめないのだろうか。トランプは、あきれるだろう。
 TPPからの永久離脱は、評価できるが、安心してはいられない。トランプは、日本で米国製の自動車が売れないことに、苛立っている。だから、日本に対して、新しい通商交渉を要求してくるだろう。
 この要求は、トランプ政治の基本に基づくもので、だから、厳重な警戒をおこたれない。
 それは、どこからくるか。就任演説を詳しくみながら、トランプ政治をみてみよう。

トランプ大統領就任式

大統領就任演説

 上の表は、大統領就任演説のなかで、トランプ大統領とオバマ前大統領が「アメリカ」という言葉と、「自由」という言葉を何回使ったか、を示したものである。
 「アメリカ」を、トランプはオバマの2倍使った。オバマの演説時間は、トランプの1.5倍だったので、「アメリカ」を使用頻度でみると、この差はもっと大きくなる。
 一方、「自由」は、オバマは15回使ったのに、トランプは、僅か2回しか使わなかった。

 「アメリカ」が多いのは、アメリカ第1主義だからだろう。では、アメリカ第1主義とは何か。トランプはこの演説のなかで、「この瞬間からアメリカ第1主義になる。貿易、税、移民、外交についての全ての決断は、アメリカの労働者と、アメリカの家族を利するために行われる。」といっている。これがアメリカ第1主義の定義だ。
 この政治姿勢を貫くことができるか。旧来の支配層を利する政治に逆戻りしないか。他国民を犠牲にする非人道的な排他主義に陥らないか。そうした危うさがある。

 「自由」の言葉を2回しか使わなかったことは、この演説の大きな特徴である。ある時期、アメリカは自由の国だったし、アメリカ的自由は世界の憧れの的だった。世界の社会主義陣営に対する自由主義陣営の旗頭でもあった。
 だが、「自由」の言葉を僅か2回しか使わなかった。
 トランプにとって、それは息苦しいことなのだろう。「自由」を嫌悪しているとさえ思われる。何故か。

 これまでの自由貿易をみてみよう。自由貿易によって、安価なものを外国から自由に輸入することで、競争に負けた国内工場は閉鎖せざるを得なくなり、あるいは、安い労働力を求めて海外へ移転せざるを得なくなった。その結果、国内の雇用を失った。
 このことに、トランプは我慢できないでいる。だから、「自由」に対して嫌悪さえ感じている。
 それにつけ加えれば、自由に移民を受け入れることで、国内の雇用喪失が加速されていることにも強烈な危機感をもっている。だから、移民排斥の衝動にかられている。危ういことだ。

 これらは、「自由」がもたらした米国の被害だ、とトランプは考えている。
 だが正確にいえば、それは「自由」の結果ではなく、「自由貿易体制」の結果である。トランプにとって、排除すべきは「自由」ではなく、「自由貿易体制」である。
 だが、「自由貿易体制」が憎いから「自由」も憎くなる。

 トランプが考える「自由貿易体制」によるアメリカの被害として、日本が直接かかわることを端的にいえば、それは、日本の米国車の輸入量が少ないことである。
 だから、それを増やすことが、今後に予想される日米通商交渉の主要な目的になる。「自由」などどうでもいい。「自由」には関心がない。

 この目的を達成するために必要なのは、新しい自由貿易体制ではない。それを作るための多国間交渉ではない。日米の2国間交渉である。第3者を交えずに、日米両国が、膝づめで談判するほうが、辣腕な元ビジネスマンのトランプにとって、有利に交渉を進められる。
 そのようにトランプは考えている。

 もう1つ注意すべきことがある。
 それは、日米の2国間交渉といっても、農産物と自動車などを同時に交渉するという、ややこしい包括的なFTA交渉ではないだろう。ややこしい交渉ではマスコミは取り上げない。単純な交渉ならマスコミが取り上げるから有利だ、と元TVタレントのトランプは考えるに違いない。
 だから、米国製の自動車を日本へ少しでも多く輸出できればいい。米国産農産物の輸出などどうでもいい。そのように考えるだろう。
 交渉の目的を、自動車輸出の1点にしぼるほうが交渉力を集中できる。そのほうが有能な元ビジネスマンのトランプにとって強い交渉力を発揮できる。そして、元ビジネスマンらしく、実利を1つ1つ着実に積み上げることができる。そのように考えるだろう。
 そうなれば、農産物を犠牲にして、自動車交渉を有利に進めようとする日本政府の思惑は崩れる。

 こうした方法で、トランプが強い交渉力を持つために必要なのは、強いアメリカである。アメリカ第1主義というスローガンはそのためにある。
 その強さの源泉は、国民の支持の強さにある。だから、アメリカの支配層ではなく、アメリカの労働者と、アメリカの家族、つまり、国民の大多数を味方につけよう、というのだろう。だから、アメリカ第1主義は、アメリカの労働者とアメリカの家族のためだ、といっている。
 今後を注意深く監視しなければならない。
(2017.01.30)

(前回 トランプ演説にみる国民統合と分断

(前々回 トランプ現象...2つの評価

(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)

重要な記事

ヤンマーSP

最新の記事

DiSC:SP

みどり戦略

Z-GIS 右正方形2 SP 230630

注目のテーマ

注目のテーマ

JA共済連:SP

JA人事

JAバンク:SP

注目のタグ

topへ戻る