支持率急落、安倍内閣はどうするか?2017年7月26日
◆安倍内閣支持率急落
「どんな英雄でも最後は鼻につく」と言ったのは19世紀のアメリカの思想家・エマソンです。2012年12月の総選挙に勝利して成立した第二次安倍晋三政権に対する国民の支持率は、高位安定という状況にありました。2012年12月から2017年夏まで、約4年半にわたって、安倍内閣の支持率は高く、下がりませんでした。
高い内閣支持率は安倍内閣に強い政治力を与え、安倍首相主導の政治を可能にしました。国内においては特定秘密保護法、安保法制、いわゆる共謀罪法などの与野党対決法案を成立させました。「一強安倍体制」といわれる強大な政権に対して、野党は手も足も出ない状況でした。
一強体制が崩れ始めたのは、小池百合子東京都知事の登場でした。東京都の自民党が分裂し、反主流系の小池氏が勝利したのです。さらに小池氏は「都民ファーストの会」を結成し、2017年夏の東京都議選で圧勝しました。自民党は惨敗し、議席率は20%を下回ることになりました。
安倍内閣の支持率は、東京都議選直前から下降し始めました。とくに投票日の直前に安倍内閣の閣僚の失言、自民党議員の秘書への暴行事件の発覚、安倍首相側近の疑惑などが重なり、国民の自民党への不信感が高まり、自民党を惨敗に追い込みました。
東京都議選以後、安倍内閣支持率の下降傾向はつづいています。一部の報道機関の世論調査では、20%台が記録されました。
自民党の低迷は、東京都議選後も止まる気配はありません。
注目された7月23日の仙台市長選において自民党が推した候補が、前民進党議員に敗れました。自民党の不信は東京都議選後全国に広がっています。このような状況下で安倍一強体制は崩れつつあります。安倍首相はこの状況にどう対応しようとするのでしょうか。
◆人事政策の見直し
安倍首相の課題の一つは人事の見直しです。人事において依怙贔屓は禁物です。特定のお気に入り閣僚をかばうようなことは改められなければなりません。
いま安倍首相が求められているのは依怙贔屓人事の克服です。人事は、適材適所と公平公正の二原則を貫かなければなりません。
安倍首相は8月3日の内閣改造において適材適所・公平公正の貫けなければ、安倍一強体制の崩壊が急激に起こるでしょう。
内閣改造は党内の不満の解消に役立つことは希です。多くの場合党内の不満は増大します。首相の国民的人気が落下しているときには、不満は倒閣運動に向かう場合も少なくありません。8月3日の内閣改造の成否に安倍内閣の命運がかかっているのです。安倍首相は世論対策は二の次にして党の団結に重点をおくべきです。
◆衆院解散・総選挙近し
マスコミは「支持率低下のいま安倍首相は衆議院解散を断行することはない」との見方を示していますが、私は、マスコミは無意味な固定観念の虜になっていると思います。内閣支持率急落下での衆院解散・総選挙を仕掛けることが政治上の大冒険であることは明らかです。しかしこの大冒険を乗り切れば、安倍内閣の支持率は再浮上できるのです。
安倍内閣支持率がさらに低落すれば、野党の攻撃は強まります。マスコミの政権への攻撃も厳しくなります。自民党内からの批判の声も強まるでしょう。
このような安倍内閣にとっての最悪の流れを断ち切る唯一の手段は、衆院解散、総選挙の実行だと私は思っています。
総選挙は大きな賭けですが、私は安倍首相が、今秋、賭けに打って出る可能性があると予想しています。
8月3日の内閣改造がどのような顔ぶれになるかは、解散戦略と無関係ではないと思います。
◆民進党再来か新党結成か
当面の政局のもう一つの目玉は、野党第一党の民進党の行く方です。
民進党内からは「解党論」が公然と叫ばれるようになっています。この延長線上に「民進・自由・社民の合流」による新党結成、さらに共産党との共同戦線結成の計画があります。
これに対し民進党自身による野党第一党の再建という路線があります。私は、民進党は自力更生の努力を行うべきだと思います。民進党にとって必要なのは、新鮮な国民を結集できる若いリーダーを選ぶことです。玉木雄一郎衆議院議員ならやれると私は思います。
小池氏をリーダーとする「国民ファースト」の結成には時間が必要です。私は今秋に行われる可能性がある衆院選には間に合わないとみています。
(前々回 強安倍政権が直面する三つの難題)
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