驕れる者久しからず 安倍内閣支持率急落の衝撃2017年7月2日
6月19日の各紙朝刊で報道された世論調査の結果は、政界の空気を変えました。多くの国民は「安倍一強体制の崩壊が始まった」と感じたようです。政界でも安倍総理への見方が変わりました。安倍内閣にとっての試練の時代が始まったとみてよいでしょう。
いま私のデスクの上に朝日、毎日、読売、日経、東京の5紙があります。各紙が報道した安倍内閣支持率の下落は次の通りです。
(1)朝日:支持率41%(▲6%)、不支持率37%(+6%)。
(2)毎日:支持率36%(▲10%)、不支持率44%(+9%)。
(3)読売:支持率49%(▲10%)、不支持率41%(+13%)。
(4)日経:支持率49%(▲7%)、不支持率42%(+6%)。
(5)東京(共同):支持率44.9%(▲10.3%)、不支持率43.1%(+8.8%)。
安倍総理は6月19日18時に記者会見し「反省」を表明しましたが、これで国民の安倍離れが止まるとはとうてい考えられません。7月2日投開票の東京都議会議員選挙の結果次第で安倍内閣は苦境におちいるおそれ大です。
◆7月東京都議選の意味
来る7月2日投開票の東京都議会議員選挙(都議選)は、単なる地方選挙ではありません。国政に大きな影響をもたらす可能性があります。
2017年7月の都議選の特徴の第一は、東京都の自民党が分裂したことです。小池百合子東京都知事は自民党を離党し、「小池新党」とも呼ばれる「都民ファーストの会」の代表に就任しました。これにより自民党東京都連と都民ファーストの会との対立は決定的になりました。
第二は、これまで東京都政において長い間自民党と連立してきた公明党が、自民党と訣別し、小池都知事と協力する道を選んだことです。自民党都連は有力な友党を失い、小池都知事は有力な友を得ました。選挙結果において「公明党プラス都民ファースト」が都議会の過半数を得る可能性はきわめて高いとみられています。
第三は、民進党(東京)が潰滅状況におちいったことです。民進党の有力候補の多くは民進党を離党し「都民ファースト」に協力を求めました。「東京民進」の崩壊です。
小池新党が大勝利すれば、この三つの政治変化の特徴は全国に広がると考えられます。すなわち、保守(自民党)の分裂、保守の新党と公明党との協力関係の確立、民進党の壊滅という政治現象が全国化する可能性が高まります。
「何時までもあると思うな親と金」という言葉があります。驕れる安倍政権は「親」すなわち国民の支持を失いつつあります。公明党の自民党離れの傾向は徐々に全国に広がる可能性は否定できません。この新たな政治の流れが全国化するかそれとも止まるかは、7月2日の東京都議選の結果で決まるのです。私は東京都で始まった新たな政治の流れは止まらなくなっている、と思っています。
◆「李下に」を忘れた総理
政治権力者の立場にいる政治指導者は、国民が疑いを抱くような事は、してはならないのです。このことを、古人は「李下に冠を正さず」と言ったのです。すももの木の下で冠を正せば、外からはすももを取っているようにみえるから、こんなことはしてはならないという意味です。安倍晋三総理以前の政治指導者のほとんどは、この言葉を守ろうとしてきました。
ところが、安倍総理は、自らが「腹心の友」と呼び、日頃ゴルフや食事を共にする親友の願いを達成させたのです。安倍総理自身は「自分は関係していない」「法的には何ら問題はない」と繰り返し強調していますが、最高権力者として守るべき政治道義を、安倍総理は守る意思がないことが明らかになりました。
最高権力者が、法的に問題なければたとえ政治道義に反することをしてもかまわない、という態度をとった時、その政治権力者は国民の信頼を失います。日本国民はいま、このことに気づいたのです。しかし、安倍総理は、いまだ気づいていないように見えます。
加計学園問題の本質はここにあります。大切なのは政治道義なのです。安倍晋三氏と加計学園理事長が真の友人であれば、少なくとも安倍晋三氏が総理大臣の間は、新学部の新設問題は凍結しなければならないのです。政治権力者とその権力に従っている政治家たちが、「李下に冠を正さず」という政治道義を知らずに、親しい友に利益をもたらすような不純な関係を平然とつづけるならば、政治は乱れます。国民の「安倍離れ」は、政治道義に反する行為をつづける安倍総理への警告なのです。もしも安倍総理がこのことに気付かずに暴走をつづけるならば、安倍総理の落日は早まるでしょう。
政権の大転落の胎動が日本においても始まりました。
(前回 強安倍政権が直面する三つの難題)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日