【森島 賢・正義派の農政論】二大政党論の破綻と忖度政治の横行2018年8月6日
長い間、与野党の攻防の中心問題だったモリカケ問題も下火になって、つぎの関心事は来月の自民党総裁選に移ったようだ。これも安倍晋三首相の続投は間違いなし、というのが多くの評論家の観測である。安倍首相は、わが世の春を謳歌しているように見える。
だが、それは世論の支持に支えられたものではない。世論は、決して圧倒的な支持を安倍首相に与えていない。安倍首相が安泰でいられるのは、国民ではなく、国会の圧倒的な支持があるからである。つまり、国会と国民が、ねじれている。
国会での圧倒的支持は、二大政党論に惑わされた小選挙区制によるもので、世論の圧倒的な支持に基づくものではない。つまり、支持基盤は脆弱なのである。
世論を見てみよう。
上の図の上段は、第2次安倍内閣が発足した以後の、衆議院総選挙での政党支持の結果を示したものである。世論を最も忠実に表している比例区選挙での政党支持率を示した。
また、下段は欧米4か国の、最近の下院選挙の結果である。
◇
はじめに、下段をみよう。
米英をみると、二大政党の支持率を足すと、米国は97%、英国は82%である。両国とも二大政党制が定着している。
これに対して独仏は1位と2位の政党を足しても半数にさえなっていない。多党が並立して、各党が競いあっている。
つぎに、上段の日本を見よう。
日本は二大政党制の米英とは、まるで違う。多党並立の独仏に近い。
それなのに、日本は自民の一党多弱の政治が横行している。第1党の自民が、国会で圧倒的な多数を握っているからである。ここに、安倍一強政治の驕りがある。
つまり、自民は世論の圧倒的な支持がないのに、国会では圧倒的な多数を握っている。いまや、国会は民主主義の殿堂どころか、民主主義の廃虚になり果てている。
何故、こんなことになってしまったのか。それはいうまでもなく、二大政党論の破綻であり、それを目指した小選挙区制の失敗である。
◇
小選挙区制は二大政党制を目ざして発足したものである。だが、23年目に入ったいまも、二大政党制は実現していない。つまり、小選挙区制による二大政党制論は破綻したのである。
実際に実現したのは、一強多弱である。これは、合法的な、つまり、暴力的な一党独裁に近い。そして、その弊害が露呈されている。つまり、忖度政治の横行である。
小選挙区制だから、1人しか当選できない。当選するためには、党の公認が不可欠になる。その公認は、総裁でもある首相が行っている。その結果、首相の心中を忖度し、首相の気に入られる政治家しか公認されない。こうして、イエスマンしか当選できなくなる。ここに忖度政治の根源がある。
この人たちを首相官邸に集めている。官邸は、財界の代弁者たちを集めて、規制改革推進会議などの諮問機関を作り、それを使って、無責任な政策を立案させる。そうして、国会で成立させ、政府が執行する。
いや、そうではない。逆なのだ。使っているのは財界で、使われているのは官邸であり、政府なのである。
財界の意向を忖度する人たちが集まって、財界の意向に沿った答申をして、政府にその実行を迫っている。ここにも、忖度政治がある。
忖度政治だから、あからさまな議論はしない。活発な議論は封じられる。その上で、悪法が合法的に、つまり、暴力的に罷り通っている。
農業者も、こうした忖度政治の被害者になっている。
◇
忖度すべき対象は、首相の心中ではなく、また、財界の意向でもない。忖度すべきは、上の図に見られる多様な国民の意向でなければならない。
その上で、心やさしく忖度しながら、活発な議論をしなければならない。それが民主主義である。
(2018.08.06)
(前回 安倍内閣の奇妙に高い支持率)
(前々回 日欧EPAは世界の潮流に逆行する)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
【解題】基本法改正は食料安保をめぐる現場での課題にどう応えようとしているのか 谷口信和東大名誉教授2024年4月23日
-
第18回全農学生「酪農の夢」コンクール「学校賞」新設 作品募集中2024年4月23日
-
元卓球日本代表・石川佳純が全国を巡る卓球教室 大分で開催 JA全農2024年4月23日
-
運営9年目・稼働率約9割 地域に喜ばれる貸出農園事業を展開 JAマインズ2024年4月23日
-
量販店等に終売通告を行う白米卸も【熊野孝文・米マーケット情報】2024年4月23日
-
【JA人事】JAむかわ(北海道)長門宏市組合長を再任(4月10日)2024年4月23日
-
【JA人事】JAとうや湖(北海道)高井一英組合長を再任(4月12日)2024年4月23日
-
農繁期の人材確保へ「いわて農業未来プロジェクト」支援開始 タイミー2024年4月23日
-
栃木県那須塩原市 道の駅「明治の森・黒磯」リニューアルオープン2024年4月23日
-
いちご生産量日本一 栃木県真岡市のPR動画「もおかのいちご物語」公開2024年4月23日
-
「夏のさつまいも博2024」さいたまスーパーアリーナで7月4日から開催2024年4月23日
-
知財功労賞「経済産業大臣表彰」を受賞 ブランド戦略とユニークな登録商標の活用が評価 サタケ2024年4月23日
-
令和5年冷凍食品の生産・消費調査 出荷額は7799億円で過去最高 日本冷凍食品協会2024年4月23日
-
農業を志す学生450人が来場「食品・農業就活サミット」開催 シンクロ・フード2024年4月23日
-
全国道の駅公式オンラインショッピングサイト「道の駅マルシェ」オープン2024年4月23日
-
千葉県市原市「第42回 市原市園芸まつり」開催2024年4月23日
-
食や農業の未来に「あったらいいな」を募集「未来エッセイ2101」AFJ2024年4月23日
-
その場で当たりが分かる「甘果にんじん」春キャンペーン開催 ファーマインド2024年4月23日
-
シードル生産者が大阪に集結「Osaka Cider Festival大阪林檎酒祭り」開催2024年4月23日
-
サラダクラブ産地表彰式 第8回「Grower of Salad Club 2024」開催2024年4月23日