【森島 賢・正義派の農政論】安倍内閣の奇妙に高い支持率2018年7月30日
安倍晋三内閣の支持率が奇妙に高い。一時は危機的な水準にまで落ち、その後も落ち続けるのではないか、と予想されていた。しかし、最近はやや取り戻し、奇妙に高い水準を保っている。何故か。
これまでの強引な政治運営を反省して、穏当な運営になったのか。そうとも思えない。
首相は、国会は終盤になっても、あいかわらず強引な国会運営をしていた。
批判すべき強引さの第1は、労働法制の改悪である。タダ働き、という昔からある、しかし近代社会になってからは、珍しい悪辣な搾取の方法を復活して法認した。
第2は、カジノというバクチ場の法認である。オリンピックを控えて、国際化のためだという。しかし、日本には、バクチは悪だ、という麗しい文化がある。来日した外国人がそれを知れば、あらためて日本文化を称賛し、日本の国際的な評価を高めるだろう。しかし、その機会を捨てた。
第3は、参議院の選挙制度の改悪である。民主主義の土台である選挙制度を、党利党略で改悪してしまった。これは民主主義の破壊である。
このような乱暴な政治に国民は憤激している。
◇
さて、下の図は、第2次安倍内閣が発足した以後の時期について、内閣支持率と自民党の支持率を重ねてみたものである。
上の図を見てみよう。
内閣支持率は、発足した初めの半年ほどの間は60%を超えていた。しかし、一時は半分に近い30%台にまで落ち込んだ。このまま落ち続けると思われたが、奇妙なことに、今月は少し回復して40%前半になっている。
いっぽう、自民党の支持率をみると、初めのうちは、ときどき40%を超えていた。しかし、一時は30%すれすれにまで落ちた。そして今月は30%台の後半になっている。
このように、自民党支持率は、それほど下がっていないが、内閣支持率は急速に下がった。
これは何を意味するか。
◇
第2次安倍内閣が発足した当初は、自民党支持者はもちろん、それ以外の、たぶん無党派の人たちの、内閣支持者が多かったことが推測できる。そして今は、無党派の人たちの内閣支持は、僅かなものに減っている。
この点について、内閣の不支持の理由の1つに、「首相の人柄が信頼できない」を挙げる人が多くなったことが注目される。国会審議での首相の答弁の不誠実さが原因だろう。
いったん失った信頼を回復するのは容易でない。
それに加えて、自民党支持者も減っている。まさに安倍内閣はジリ貧の状態にある。
◇
こうした状況の中で、なぜ安倍首相は、あいかわらず強引な政治を続けられるのか。
その根本的な原因は、小選挙区制である。それが基礎になって強引な政治が続いている。現状では、小選挙区制なら民意から遠く離れても、政権は安泰でいられる。
また、強引な政治を続けても、それを咎める人がいない。いても、小選挙区制のもとでは淘汰される。そうしてイエスマンだけが生き残る。
さらに、咎める政党があっても非力である。
◇
以前は、小選挙区制になれば、弱小な政党が淘汰されて、政権交代が可能な二大政党制になり、緊張した政治を取り戻せると考えていた。
しかし、20年以上も経ったいまでも二大政党制になっていない。自民党の一強体制が続いている。そうしてイエスマンたちによる独裁的で強引な官邸主導の政治が横行している。つまり、下のようになっている。
小選挙区制 ⇒ 自民一強 ⇒ 独裁的な官邸政治
この連鎖から最も強い悪影響を受けているものの1つが農業である。小選挙区制は早急に改めねばならない。それが農村の悲痛な声である。
(2018.07.30)
(前回 日欧EPAは世界の潮流に逆行する)
(前々回 公明党の大選挙区制が政治を刷新する)
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