【森島 賢・正義派の農政論】弛緩した政治2019年5月13日
参院選が2か月後に迫っているのに、緊張感を欠いた政治が続いている。
野党は、改元などで大騒ぎをした10連休が明けたら、さっそく32の1人区の統一候補を決める、といっていた。しかし、まだ3人しか決まっていない。
また、国会が再開されたのに、弛緩した議論が続いている。
その間にも、弱者の苦悩が続いている。
いったい、何のための政治なのか。誰のための政治なのか。
政治家たちは、自分の政治家としての保身しか考えていないようだ。せいぜい自分の党の勢力拡大しか考えていない。国民の大多数を占める弱者のための政治を考える政治家は、極めて少なくなった。
それは、与党の政治家だけではない。野党の政治家も同じだ。
野党は、今度の参院選の1人区で、候補者を1人にしぼるというが、それだけでは勝てない。勝つには、周到な準備が必要だが、それが全く不十分である。選挙は2か月後だというのに、大部分の1人区では、1人にしぼることさえ出来ていない。
こうした状況のなかで、国会では弛緩した議論が続いている。弱者の苦悩が、全く分かっていない。
◇
弱者の苦悩は、もう30年も続いている。
バブル崩壊後から現在までの30年間の主要先進国の賃金をみてみよう。OECDの資料でみると、賃金の上昇率は、米国35%、英国42%、ドイツ29%、フランス34%、スエーデン51%、ノルウエー69%、韓国71%......である。
これに対して、日本は4%で、ほとんどゼロである。しかもこれは、政府統計を使っているから捏造したものである。あるシンクタンクの資料には、日本の賃金は、1997年から2016までの19年間に11.6%下落した、という推計がある。
この賃金下落に、いまの政治問題の根源がある。これを、せめて他国なみに上昇させるには、どうすればいいか。この点を中心にして、与野党は競いあわねばならない。
◇
ここには、市場原理主義の経済政策がある。それを安倍一強政権が推し進めている。
これに対して、野党はどのように立ち向かうのか。そうして政権を奪還するのか。
賃金が下落した30年間には、現在の野党が政権を託された時期もあった。しかし、市場原理主義を転換できなかった。今後はどうか。野党は、それを弱者たちに伝えねばならない。
それには、国会で空疎な議論を繰り返すのではなく、弱者の中に入って、弱者の苦悩の現実を見据え、そこから脱出する政策を訴えることである。そして支持を得ることである。
そうすれば、弱者たちは、こぞってその政治家を国会へ送り込みたい、と考えるだろう。
◇
農政の分野でも同様なことがある。
弱者である農業者の苦悩の根源に、市場原理主義農政がある。野党は、これに対して、どう立ち向かうのか。
この市場原理主義農政のもとで、いま行われている日米FTA交渉で、農業者はさらに苦悩を深められようとしている。野党は、これに対してどう対峙しているか。それが、全く見えてこない。何故か。
政治家が、現場で苦悩している農業者を見ていないからである。だから、農業者がどんな農政を期待しているかを、政治家が分からない。だから、農業者の心を揺るがすような議論ができない。空疎な議論しかできない。
いま政治家に求められていることは、市場原理主義から決別し、弱者の苦悩を解消することである。そうして明るい日本を目指す先頭に立つことである。それを訴える好機が、2か月後の参院選である。
(2019.05.13)
(前回 さあ、野党の正念場の参院選だ)
(前々回 政党支持率の科学)
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